月1回だと思いますが、朝日新聞にグローブという小さな新聞が付いてきます。メインの特集記事の後、「Bestsellers 世界の書店から」という定例ページがあります。例えば、イギリスと韓国では今どのような本が読まれているか、確かベスト10くらいの本がそれぞれ紹介されているのです。取り上げられる国は、欧米とアジアそれぞれ1カ国ということが多いようです。各国の世論を知る手がかりになるこのコーナーが私のお気に入りで必ず目を通します。
ある号で、イギリスのベストセラーが取り上げられました。そこには「イギリス人はなぜドイツが好きなのか EU離脱しても変わらぬ愛情」とあるではないですか。実に意外な感じがしました。ロバート・ウェストールの物語には度々イギリス本土を襲うドイツ爆撃機のことが登場してきます。イギリス人のドイツに対する嫌悪感は推して知るべしです。にもかかわらず、本当にイギリス人はドイツが好きなのでしょうか。
そんな素朴な疑問でこの本を読んでみたくなりましたが、現在翻訳はされていません。しかし原本を読者にプレゼントしてくれるというのではがきで感想を書いて応募したところ、なんと当選したのです。昨夜届いてびっくりしました。315頁の英語本を睡眠薬代わりにでも読むことにしましょうか。
グローブHPにあった記事を掲載させていただきます。
●グローブHPより
■イギリス人はなぜドイツが好きなのか EU離脱しても変わらぬ愛情
Bestsellers 世界の書店から
2021.08.01
英国人のドイツ愛は昔から根強い。言語が縁戚関係にあるほかエリザベス女王のウィンザー家がドイツ中部にルーツを持つことも理由の一つかもしれない。英国支配階級は二つの大戦で味方だったフランスよりも2回も敵に回したドイツに親近感を寄せ、第2次世界大戦勃発ぎりぎりまで彼らが娘たちを「花嫁修業」としてドイツに留学させていた事実もある。彼らの心のうちでは、どこの馬の骨とも知れないヒトラーを胡散臭く思う度合いよりも、ドイツ文化を敬愛する度合いがまさっていたのだ。
という昔話はさておき、本書『Why the Germans Do it Better』(なぜドイツ人はうまくやれるのか)はタイトルからしてやけに低姿勢だが、副題の『大人の国からの報告書』にいたっては感無量である。われわれ日本人は英国こそが大人の国だと思っていたが、彼ら自身はドイツをそう見なすにいたったのか。ここ数年ロンドンの書店ではドイツの再認識を促す本が目立つ。その背後にはブレグジット(EU離脱)を悔やむ心情、新自由主義経済に対する忌避感、落ち着いた政治家へのあこがれ、そしてコロナ禍への対処の相違(ドイツの方が科学的だった)がある。
現代ドイツの諸側面を七つの章に分けた本書の著者はもともとデイリーテレグラフ紙の最後の東ドイツ特派員ということもあり、東西ドイツの統合前後の経緯(東ドイツからやってきたメルケルの横顔も特に)は読み応えがある。そのきっかけとなった1989年ベルリンの壁の崩壊と、シリア人流入で目立った2015年の難民危機などを著者は戦後ドイツの重要な通過点と位置づける。これらに勇猛果敢に着手し着実に乗り切ってきたドイツのやり方を、著者はlangsam aber sicher(ゆっくりと、しかし確実に)と形容する。それがドイツの美点であり強みであると。確かにそうした特質は現在の英国に欠落している。著者の結論を抄訳で紹介しておこう。
「ドイツはナショナリズム、反啓蒙、恐怖が跋扈(ばっこ)する時代のヨーロッパにおける最善の希望である。(中略)誰がヨーロッパ的価値を代表し得るだろう? 誰が権威主義的体制に立ち向かうことができるだろう? 誰が自由民主主義の旗手たりえるだろうか? ドイツにはできる。なぜなら彼らは歴史の教訓を忘れたときに何が起きるか熟知しているからである」
ある号で、イギリスのベストセラーが取り上げられました。そこには「イギリス人はなぜドイツが好きなのか EU離脱しても変わらぬ愛情」とあるではないですか。実に意外な感じがしました。ロバート・ウェストールの物語には度々イギリス本土を襲うドイツ爆撃機のことが登場してきます。イギリス人のドイツに対する嫌悪感は推して知るべしです。にもかかわらず、本当にイギリス人はドイツが好きなのでしょうか。
そんな素朴な疑問でこの本を読んでみたくなりましたが、現在翻訳はされていません。しかし原本を読者にプレゼントしてくれるというのではがきで感想を書いて応募したところ、なんと当選したのです。昨夜届いてびっくりしました。315頁の英語本を睡眠薬代わりにでも読むことにしましょうか。
グローブHPにあった記事を掲載させていただきます。
●グローブHPより
■イギリス人はなぜドイツが好きなのか EU離脱しても変わらぬ愛情
Bestsellers 世界の書店から
2021.08.01
英国人のドイツ愛は昔から根強い。言語が縁戚関係にあるほかエリザベス女王のウィンザー家がドイツ中部にルーツを持つことも理由の一つかもしれない。英国支配階級は二つの大戦で味方だったフランスよりも2回も敵に回したドイツに親近感を寄せ、第2次世界大戦勃発ぎりぎりまで彼らが娘たちを「花嫁修業」としてドイツに留学させていた事実もある。彼らの心のうちでは、どこの馬の骨とも知れないヒトラーを胡散臭く思う度合いよりも、ドイツ文化を敬愛する度合いがまさっていたのだ。
という昔話はさておき、本書『Why the Germans Do it Better』(なぜドイツ人はうまくやれるのか)はタイトルからしてやけに低姿勢だが、副題の『大人の国からの報告書』にいたっては感無量である。われわれ日本人は英国こそが大人の国だと思っていたが、彼ら自身はドイツをそう見なすにいたったのか。ここ数年ロンドンの書店ではドイツの再認識を促す本が目立つ。その背後にはブレグジット(EU離脱)を悔やむ心情、新自由主義経済に対する忌避感、落ち着いた政治家へのあこがれ、そしてコロナ禍への対処の相違(ドイツの方が科学的だった)がある。
現代ドイツの諸側面を七つの章に分けた本書の著者はもともとデイリーテレグラフ紙の最後の東ドイツ特派員ということもあり、東西ドイツの統合前後の経緯(東ドイツからやってきたメルケルの横顔も特に)は読み応えがある。そのきっかけとなった1989年ベルリンの壁の崩壊と、シリア人流入で目立った2015年の難民危機などを著者は戦後ドイツの重要な通過点と位置づける。これらに勇猛果敢に着手し着実に乗り切ってきたドイツのやり方を、著者はlangsam aber sicher(ゆっくりと、しかし確実に)と形容する。それがドイツの美点であり強みであると。確かにそうした特質は現在の英国に欠落している。著者の結論を抄訳で紹介しておこう。
「ドイツはナショナリズム、反啓蒙、恐怖が跋扈(ばっこ)する時代のヨーロッパにおける最善の希望である。(中略)誰がヨーロッパ的価値を代表し得るだろう? 誰が権威主義的体制に立ち向かうことができるだろう? 誰が自由民主主義の旗手たりえるだろうか? ドイツにはできる。なぜなら彼らは歴史の教訓を忘れたときに何が起きるか熟知しているからである」