Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

下野竜也/東京シティ・フィル

2019年02月17日 | 音楽
 下野竜也指揮東京シティ・フィルの注目すべきプログラム。オッフェンバックとスッペの生誕200年を記念した序曲集をシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲と組み合わせたもの。ワーグナーとブルックナーとリヒャルト・シュトラウスの自称“オタク”の友人も姿を見せた。

 会場に着くと、ホワイエでプレ・コンサートをやっていた。クライスラーの弦楽四重奏曲から第4楽章とのこと。数あるヴァイオリンの小品からは想像もできない、本格的な、彫りの深い曲だ。珍しい曲を経験できた。

 演奏会が始まって、1曲目はオッフェンバックの「天国と地獄」序曲。その音のゴージャスなこと。オペレッタ劇場ならもっと貧相だ。弦は14型だが、オペレッタ劇場はその半分くらいだろう。立派な音から、オッフェンバックのシニカルな微笑みが伝わる。というよりも、シニカルで馬鹿々々しいその音楽を聴いていると、極端な話、ワーグナーなんてどうでもよくなる。

 2曲目はシェーンベルクのヴァイオリン協奏曲。ヴァイオリン独奏は南紫音。1月にコパチンスカヤの独奏で聴いたばかりなので(大野和士指揮都響の定期)、どうしてもそれと比べてしまうが、比べるのが野暮というほど、コパチンスカヤは独特だった。わたしはそのおもしろさに舌を巻いたが、一方、南紫音の演奏は、骨格がしっかりした演奏だが、終始真面目だった。

 プログラム後半はスッペの序曲集。先に曲名をあげると、「ウィーンの朝、昼、晩」、「怪盗団」、「美しいガラティア」、「軽騎兵」の4曲。冒頭の「天国と地獄」と同様、立派な音が鳴っていた。演奏は「軽騎兵」がもっともしっかり作り込まれていた。

 スッペを何曲も聴くと、オッフェンバックとの個性の違いが明らかになる。オッフェンバックのシニカルさ、あるいは馬鹿ふざけは、スッペにはない。スッペはもっとウエットで、常識的だ。だが、誤解のないようにいうと、「軽騎兵」序曲などは、ほんとうに洗練された名曲だと思った。

 このプログラムならアンコールがあるかな、と思った。アンコールは「詩人と農夫」か、と踏んでいたら、「天国と地獄」の最後の部分が始まった。快調だ、と見るや、下野竜也が舞台の袖に引っ込んだ。オーケストラだけで快調に飛ばす。なるほど、そういう趣向か、と思ったら、下野竜也が金色のポンポンを持って現れ、コンサートマスターとセカンド・ヴァイオリンの首席奏者を巻き込んで、カンカン踊りを始めた。場内大爆笑。
(2019.2.16.東京オペラシティ)

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