Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

ルルー/日本フィル

2024年11月03日 | 音楽
 フランソワ・ルルーが日本フィルを振るのは2度目だ。初めて振ったのは2022年。ラザレフの代役だった。ルルーはいうまでもなく世界的なオーボエ奏者だが、当時、指揮者としてはどうなのかと、期待と不安が入り混じった。だがすばらしい出来だった。メインの曲はビゼーの交響曲第1番だった。ルルーのオーボエ演奏さながらに、ニュアンスに富み、音楽的な大きさのある演奏だった。

 今回は1曲目がラフ(1822‐1882)の「シンフォニエッタ」。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン各2人の管楽アンサンブルのための曲だ。ラフという作曲家は知らなかった。ロマン派の真っただ中の作曲家だ。「シンフォニエッタ」もまさにそう。全4楽章からなる。わたしは第2楽章のスケルツォがおもしろかった。

 演奏は気合の入った濃密なアンサンブルだった。もちろんルルーが主導したが、日本フィルのメンバーも積極的に演奏して、ルルーひとりが目立つことはなかった。想像だが、リハーサルはかなり綿密にやったのではなかろうか。そうでなければ、あれほど自発的なアンサンブルは形成されないと思う。

 2曲目はメンデルスゾーンの「無言歌集」から5曲。「無言歌集」はピアノ曲だが、それをタルクマン(1956‐)という人がオーボエと弦楽合奏用に編曲した。ルルーのオーボエはもちろんだが、弦楽合奏もきれいだった。とくに「無言歌集」第1巻第6曲の「ヴェニスの舟歌」の暗く(弱音器を付けていたのかもしれない)繊細な弦楽器の音が印象的だった。

 ルルーはアンコールに「無言歌集」第6巻第6曲の「子守歌」を吹いた。これも弦楽合奏を伴うものでタルクマン編曲。タルクマン編曲は他にもあるのだろうか。

 以上がプログラム前半だ。1曲目は日本フィルの管楽器奏者たちがルルーと共演し、2曲目は弦楽器奏者たちがルルーと共演したわけだ。それぞれ得るものがあったろう。歌い方の大きさ、音の熱量など、ルルーは超一流のオーボエ奏者(=音楽家)だ。その破格の実力は、わたしのような素人よりも、プロ同士のほうがよくわかるだろう。

 プログラム後半はメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。前述したビゼーの交響曲第1番がすばらしかったので、今回も期待したが、わたしは十分には満足できなかった。緩急の差を大きくとり、緩の部分はゆったりと広がるように、急の部分は激しく燃え上がるように演奏された。ルルーのやりたいことはよくわかり、それはいかにもルルーらしいのだが、オーケストラのアンサンブルがいまひとつ練れていなかった。とくに第1楽章では弦楽器の音の薄さが気になった。
(2024.11.2.サントリーホール)

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