Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

山田和樹/日本フィル

2019年09月07日 | 音楽
 山田和樹と日本フィルの「フランスもの+和もの」プログラム。1曲目はサン=サーンスの「サムソンとデリラ」から「バッカナール」。前プロとか前座とか、そんなノリを超えたパワー炸裂の演奏だった。最後のダイナミックな展開には、今の山田和樹がさらにスケールアップしていることが感じられた。

 2曲目は間宮芳生(1929‐)の「ヴァイオリン協奏曲第1番」(1959年)。本作は日本フィル・シリーズの第2作として作曲された(第1作は矢代秋雄の「交響曲」)。作曲当時、間宮芳生は30歳。今回の演奏会には90歳になった本人も姿を見せた。ステージに立ったその姿に、会場からは大きな拍手が贈られた。

 本作は全4楽章、演奏時間約35分の大作だが、今聴いても密度が濃い。バルトークの影響はあるかもしれないが、それを咀嚼して、作曲者自身の音になっている。第3楽章には日本の音楽が浸透してくる。

 ヴァイオリン独奏は今年9月から日本フィルのコンサートマスターに就任した田野倉雅秋。何度か客演コンサートマスターとして出演しているので、すでにお馴染みだ。頼もしい存在になりそう。

 3曲目は大島ミチルの「Beyond the point of no return」。日本フィル・シリーズの最新作(第42作)。今回が世界初演。演奏時間は「10分予定」とプログラムに表記されていたが、実際にはどうだったか。ゆったりした導入部(弦の音がきれいだ)の後、8分の5拍子(山田和樹のプレトークによる)の切迫した音楽になる。それが収まると、チェロのソロにハープが絡む静かな音楽になる。再度切迫した音楽と静かな音楽が繰り返され、導入部が回想された後、終結部を迎える。

 リズムが明確で、あいまいな部分がなく、驚くほど鮮明な音楽だ。わたしは大島ミチルという人を知らなかったが、映画やテレビドラマなどの映像音楽では著名な人らしい。純音楽も数多く手がけている。本作を他の作曲家になぞらえるなら、ショスタコーヴィチの弟子で管弦楽曲「吹雪」で知られるゲオルギー・スヴィリードフ(1915‐1998)あたりはどうだろう。スヴィリードフと同質の鮮明さを感じたが。

 4曲目はルーセルのバレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」の第1組曲と第2組曲。1曲目の「バッカナール」を彷彿とさせるダイナミックな演奏が、これでもかといわんばかりに続いた。情けないことに、わたしの耳は飽和状態になったが、壮年期に入った山田和樹の勢いは、今やだれにも止められない。
(2019.9.6.サントリーホール)

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