百姓一揆(新潟版)

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「出版禁止 いやしの村滞在記」 長江俊和  ※ネタバレ

2022-07-02 14:13:06 | 日記

出版禁止シリーズの最新刊「いやしの村滞在記」を読んだ。

長江氏の小説は、一応の謎解きは明かされるのだが、なにか中途半端で終わる。

それを、読者があーだこーだと勝手に考察するらしい。

作者が答え合わせも行わないから、正解も不正解もない。

前回も「死刑囚の歌」の考察を書かせてもらったが、妄想も多分に含まれるが今回も考察したい。

※以下ネタバレ

あらすじは、あるところに大切な人や信頼していた人に裏切られ、絶望を味わった人々が再起するため、集団生活を営む「いやしの村」があった。「いやしの村」は「呪いで人を殺すカルト集団」と言う噂がささやかれる村だった。

噂の真偽と同級生の死の謎を解明すべく、ルポライターが潜入取材を試みる。

取材を進めていくうち呪いを行う「酒内村」と呼ばれる部落があることを知り、

その部落では、生贄を使い呪いをかける百年に一度の百年祭と呼ばれる行事があった。

 

と、ざっくりこんな感じ。

小説の最後に「逆打ち」の種明かしがあり、物語の時系列が逆になっていることがわかる。

以下年表にまとめると

「いやしの村」年表

1993年

高校3年時、都築亨と藤村朔が出会う。

都築亨、茶髪男を殺害

殺害間際に朔にやめてと止められたのは、本心では、贄になってほしくなかったため

2003年

東京で藤村朔に呼び止められ、再会する。

藤村朔から数年後に行われるビッグプロジェクト(百年祭)に携わっていると聞く

2004年

いやしの村設立

主宰者キノミヤマモル(70代男、藤村朔の父)

2005年

青木伊知郎と藤村朔結婚

伊知郎新興宗教にはまる

アガツマ=山下(60歳女、亡夫の財産を親戚にだまし取られる)入村

2006年

ミナミヤマ=野瀧(50代男、娘を交通事故で失う、床屋)入村

2007年

ユウナギ(29歳女、貢ぎ女、パティシエ)入村

2008年1月

都築亨、青木伊知郎と出会い朔の死を知る。

2008年5月

ニシキオリ(40代男、偽装パワハラで会社を退職、趣味釣り)

2008年9月5日 都築亨(30代男、ルポライター) 入村

9月15日 キノミヤ不在

9月18日 アガツマ=山下退村

11月28日 百年祭が行わる 都築亨、死亡

12月2日 都築亨、死体発見(身元不明)

12月 シンギョウジ(60代男、経営していた食品会社を乗っ取られる)入村

2009年1月 キノミヤ マモル死去

主催者キノミヤマサル=青木伊知郎(40代男 藤村朔の夫)に世襲

5月5日 サクラヅカ(40代女、夫を会社の部下に寝取られ、捨てられる長男8歳、長女4歳)入村

5月15日 佐竹綾子 入村 キノミヤ不在

5月18日 ミナミヤマ=野瀧 退村

6月3日 小野田家取材 キノミヤ不在

6月6日 ニシキオリ 退村

佐竹、知人の死を知る。

2010年3月10日 取材を終えて執筆  いやしの村に赤ちゃんがいる。

 

都築 亨(つづき とおる)

どうしてこの男が贄に選ばれたのか?

名前の漢字からだと思われる。

亨【解字】※漢字の成り立ちを解釈すること。字形を分析すること

象形、南北に桜門があり通り抜けられる城を描いたもので、城郭の郭の字の左の部分と同じ。

通り抜けるの意を含み、また、供え物のかおりや祈りの心が神に通じるの意を派生する。

また、転じて、神や客をもてなすの意となる。

このことから、贄に選ばれたのではないか?(仕立て上げられた)

呪術について

呪術とは、呪いで人を殺すことなど出来ず、以下の方法で交換殺人が行われていた。

「酒内村は呪詛の村なり。恨み抱きしもの多く来りて、呪いまじない乞うなり。呪文、エンミ、蟲毒、あまたの呪法を用いて命取る。」酒内村村史より

交換殺人は蟲毒を用い、蛇の毒を使い心不全で殺人が行われた。(パラドクスの話題の中にも蛇毒の詳しい記述あり)

詩のなぞ

詩の作者は朔

愛する人=都築亨への詩(死)

佐竹の知人について

知人の死を知るということは、すでに亡くなっていた。

研究者小野田家に伺った際に先行者がいたが、その時点では誰かわからなかった。後日、小野田から連絡が来た際にキノミヤに問いただしたのだろう。そこで知人=都築亨の死を知ったのではないか?

「世界の真理を解き明かすことがあの人の供養になるのならば」ということから、親しい間柄だったのだろう。連絡の取れなくなった知人の失踪を調べるため、いやしの村を探して取材を申し込んだのではないか。

また、親しい知人から死を喜ぶほどに憎まれる人物になることは、よくある話。(日本の殺人事件の半数以上は親族間)

いやし村の赤ちゃんについて

百年祭の儀式時、都築が薬により意識が混濁していく中、青木伊知郎、朔に会う描写がある。

これは夢ではなく、薄れゆく意識の中で起きたこと。神と交わり祭祀を司る巫女「朔」は、贄の「都築」と交わる。代々続く巫女はその家系の血筋の者でなければならない。

生贄となり神へと昇華する都築の子供を身ごもり次代の巫女を生まねばならない。一部始終を見守る伊知郎は、都築に嫉妬を覚えるが、ここまでが百年祭の儀式。新月についての話題に潮の満ち引き、女性の生理についても触れていたのは、この伏線。赤ん坊は神に近い贄(都築)の子なので村人全員で祝福したのもそのため。新たな巫女の誕生を祝ってのこと。

 

この物語のメインテーマは逆打ち

裏表紙にも題名が書いてあり、そちらから読み進めると最後の長江俊和氏の「おことわり」なる項まである。

あーなるほど

「おことわり」おわりなのね

感服いたしました。

 


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