「曠原(こうげん)淑女」
宮沢賢治
日ざしがほのかに降ってくれば
またうらぶれの風も吹く
にはとこやぶのうしろから
二人のおんながのぼって来る
けらを着 粗い縄をまとひ
萱草(かんぞう)の花のやうにわらひながら
ゆっくりふたりがすすんでくる
その蓋(ふた)のついた小さな手桶は
今日ははたけへのみ水を入れて来たのだ
日でない日は青いつるつるの蓴菜(じゅんさい)を入れ
欠けた朱塗りの椀(わん)をうかべて
朝の爽(さわ)やかなうちに町へ売りにも来たりする
鍬(くわ)を二挺ただしくけらにしばりつけているので
曠原の淑女よ
あなたがたはウクライナの
舞手(まいて)のやうに見える
……風よたのしいおまえのことばを
もっとはっきり
この人たちにきこえるやうに云ってくれ……
※曠原~広原
※にはとこ~ニワトコ科の木
※萱草~ワスレナグサ属の植物
…………………………………
童話作家・詩人の宮沢賢治は「農業」の人でもあった。
農学校で教師として農業を教え、
農家の相談を受ければ肥料などの農業指導をおこない、
労働と文化は一体であるべき、と考え、農村での文化活動もおこなった。
『曠原淑女』は情景が浮かんで来る詩である。
労働詩でもある。
労働に勤しむ少女たちを賢治は賞賛し、光輝く存在として見ている。
ラストの言葉
『……風よたのしいおまえのことばを
もっとはっきり
この人たちにきこえるやうに云ってくれ……』
は実にやさしい。
賢治にとって、風は生き物であり、畑も水を飲む生き物である。
この詩人は、世界をどんなふうに見ていたのだろう?
『あなたがたはウクライナの
舞手(まいて)のやうに見える』
ウクライナが登場した。
農業国ウクライナを賢治は知っていたのかな?
現在のウクライナがこの詩のような世界に戻ることを願ってやまない。
宮沢賢治
日ざしがほのかに降ってくれば
またうらぶれの風も吹く
にはとこやぶのうしろから
二人のおんながのぼって来る
けらを着 粗い縄をまとひ
萱草(かんぞう)の花のやうにわらひながら
ゆっくりふたりがすすんでくる
その蓋(ふた)のついた小さな手桶は
今日ははたけへのみ水を入れて来たのだ
日でない日は青いつるつるの蓴菜(じゅんさい)を入れ
欠けた朱塗りの椀(わん)をうかべて
朝の爽(さわ)やかなうちに町へ売りにも来たりする
鍬(くわ)を二挺ただしくけらにしばりつけているので
曠原の淑女よ
あなたがたはウクライナの
舞手(まいて)のやうに見える
……風よたのしいおまえのことばを
もっとはっきり
この人たちにきこえるやうに云ってくれ……
※曠原~広原
※にはとこ~ニワトコ科の木
※萱草~ワスレナグサ属の植物
…………………………………
童話作家・詩人の宮沢賢治は「農業」の人でもあった。
農学校で教師として農業を教え、
農家の相談を受ければ肥料などの農業指導をおこない、
労働と文化は一体であるべき、と考え、農村での文化活動もおこなった。
『曠原淑女』は情景が浮かんで来る詩である。
労働詩でもある。
労働に勤しむ少女たちを賢治は賞賛し、光輝く存在として見ている。
ラストの言葉
『……風よたのしいおまえのことばを
もっとはっきり
この人たちにきこえるやうに云ってくれ……』
は実にやさしい。
賢治にとって、風は生き物であり、畑も水を飲む生き物である。
この詩人は、世界をどんなふうに見ていたのだろう?
『あなたがたはウクライナの
舞手(まいて)のやうに見える』
ウクライナが登場した。
農業国ウクライナを賢治は知っていたのかな?
現在のウクライナがこの詩のような世界に戻ることを願ってやまない。
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