EQペディア/エラリイ・クイーン事典

エラリイ・クイーンの作品(長編・短編)に登場する人物その他の項目を検索する目的で作られたブログです。

シャム双子の謎

2007年06月20日 | 長編ミステリ

シャム双子の謎

☆事件

思いもかけない山火事に追われたクイーン父子は、山頂の一軒家に辿りつき、そこで不気味な一夜を過ごした。その翌日、火事の恐怖に輪をかけるように、邸の主人が何者かの銃弾に倒れる、という惨劇が起きる。死者の手に握られていたのは、ちぎれたトランプのカード。殺人の容疑は、邸の裏手に人目を避けて匿われた異形の少年たちにふりかかった……陸の孤島を舞台にクイーンが必死の推理を展開する国名シリーズ中の異色作。(ハヤカワ文庫『シャム双生児の秘密』カバー紹介文より)


☆登場人物リスト
(*ハヤカワ文庫での表記)

ジョン・ゼーヴィア(ジョン・ザヴィヤー)博士・・・その神は科学である
サラ・イゼール・ゼーヴィア(セーラ・ザヴィヤー)・・・ジョンの令夫人
マーク・ゼーヴィア・・・(マーク・ザヴィヤー)ジョンの弟
ホィハリー(ホイーリー)夫人・・・家政婦
パーシヴァル・ホームズ・・・博士の助手
《骸骨》(ボーンズ)・・・下僕
マリー・カロー(マリイ・キャロー)夫人・・・貴婦人
フランシス・・・マリーの息子
ジュリアン・・・マリーの息子
アン・フォレスト・・・カロー夫人の秘書
フランク・スミス・・・よそもの。謎の男
エラリイ・クイーン……犯罪研究家
リチャード・クイーン……警視。エラリイの父


☆コメント

この作品は、国名シリーズ中の異色作、いやエラリイ・クイーンのシリーズ中でも異色の作品と思います。まず、ホラー小説を思わせる導入部の怪奇的雰囲気がなにやら期待をそそりますね。山火事に取り巻かれたクローズド・サークルでの殺人という設定も従来のクイーンには見られなかったものです。唯一クイーンらしさを感じさせるのは「ダイイング・メッセージ」でしょうか。クイーンといえばダイイング・メッセージは十八番のような気がしますが、この作品以前にダイイング・メッセージが使われているのはロス名義で発表された『Xの悲劇』だけですから、リアルタイムの読者にどう受け取られたかはわかりません。かえって、クイーンといえばダイイング・メッセージというような刷り込みができていると、そのこと自体がこの作品を読むときの構えに干渉し、発表時の作者が思いもしなかったような読者の反応を引き起こすかもしれません。
私自身は、ダイイング・メッセージの不自然さには抵抗を感じる方なので、謎解きとしての興味という点では今ひとつ面白みにかけているなと思いながら読みました。『Xの悲劇』の時のように前もってダイイング・メッセージについての話題を登場人物に語らせるなどして、ダイイング・メッセージが用いられる伏線が出来ていれば、さほど不自然にも感じないのでしょうが、唐突に出されてくるとちょっとひいてしまいますね。そもそもエラリイが登場しなかったら、このダイイング・メッセージの細工は効果があったのでしょうか?

山火事はクローズド・サークルを作るという目的以上に、サスペンスを盛り上げる効果があると思います。しかし残念ながらサスペンスという点でも、この作品の場合いまひとつです。それは、この作品がクイーン父子の物語の一つとして書かれているからでしょう。エラリイもクイーン警視も最後には助かるに決まっていると考えてしまうと、サスペンスも半減といったところでしょうか。
(yosshy)

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