
ジューナ
クイーン家の給仕兼料理人として家政を担当するジューナは、時にはエラリイの相談相手にもなった。小さくて、陽気で、快活なジューナは、エラリイが大学に行っていて、クイーン警視が寂しい生活をしていた頃、警視が養子にした孤児だった。(『フランス白粉の謎』より)
<ジューナはクイーン家の従僕で、なんでもやで、料理人で、部屋女中で、非公式に刑事課のマスコットだった>
<ジューナの世界は、その愛する保護者と、クイーン一家の共同の住まいに局限されていた>(井上勇訳『フランス白粉の謎』)
従僕扱いであるが、身分はクイーン警視の養子であるから、エラリイの義弟ということになる。普段は家に引きこもっているようだが、学校へは行かなくてよかったのだろうか?長編では『中途の家』を最後に姿を消すが、大学へでも行くようになったのだろうか?
処女作『ローマ帽子の謎』では、ジューナは次のように紹介されている。
<ジューナは、エラリーがまだ大学で勉強をしていて、リチャードクイーンがひどく孤独をかこっていたころ、老人が拾ってきた若者だった。この快活な青年は十九歳で、記憶するかぎりでは孤児であり、天真爛漫で、姓の必要をいささかも感じていなかった。---ほっそりとして、小柄で、神経質で愉快で、元気いっぱいにはしゃぎまわっているかと思うと、必要な場合は、小鼠のように静かにしていた>(井上勇訳)
『ローマ帽子の謎』の記述では、養子ということには触れておらず、完全な従僕扱いである。また、十九歳という年齢にも疑問がある。『ギリシャ棺の謎』『オランダ靴の謎』などと異なり、明らかに時系列的には『ローマ帽子の謎』よりも後の事件である『アメリカ銃の謎』ではジューナは十六歳とされており、初めてのロデオ見物にはしゃぐ姿もその年齢に相応のものである。
『オランダ靴の謎』で、エラリイに助言をして、お礼に安っぽい変装道具をプレゼントされるジューナ。将来は探偵になりたいという夢を持つジューナは大喜びで、変装してエラリイの前に現れる。
<ジューナは胸をおどらせて、テーブルのそばに立って、なんとかしてエラリーの注意をひこうとしていた。
エラリーは、いかにもびっくりぎょうてんしたような表情をして、ぴたと立ちとまった。その驚きが消え去ると、真剣な、不安そうに見えるまでの表情をうかべた。
すこしばかり震え声を出してたずねた。「どなたでしょう。どうして、ここへはいってきましたか」
ジューナは目をぱちくりとさせた。「だって---エラリイさま---私ですよ」>(井上勇訳)
どうみても子どもである。『アメリカ銃の謎』の十六歳が本当なら、十二、三歳といったところだろう。
☆ジューナが登場する作品は以下のとおり。
長編
『ローマ帽子の謎』/『ローマ帽子の秘密』
『フランス白粉の謎』/『フランス白粉の秘密』
『オランダ靴の謎』/『オランダ靴の秘密』
『ギリシャ棺の謎』/『ギリシャ棺の秘密』
『アメリカ銃の謎』/『アメリカ銃の秘密』
『チャイナ橙の謎』/『チャイナ・オレンジの秘密』
『中途の家』/『途中の家』
『ニッポン樫鳥の謎』/『日本庭園の秘密』
短編
『暗黒の家の冒険』(『エラリー・クイーンの新冒険』に収録)
『七匹の黒猫の冒険』(『エラリー・クイーンの冒険』)には直接登場はしないが、エラリイが事件に関わるきっかけとなったのは、ジューナにせがまれてペットショップへアイリッシュ・テリアを買いにきたことだった。
なお、ジューナを主人公にしたジュブナイルのシリーズがエラリイ・クイーンJr名義で刊行されている。
(Eirakuin_Rika)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます