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オランダ靴の謎

2007年06月20日 | 長編ミステリ

オランダ靴の謎

☆原題
The Dutch Shoe Mystery
1931年刊行

☆邦訳
『オランダ靴の謎』井上勇訳(創元推理文庫)、『オランダ靴の秘密』宇野利泰訳(ハヤカワ文庫)他

☆事件

19XX年1月の薄ら寒い月曜の朝、オランダ記念病院では、緊急手術が行われることになっていた。その日の朝、病院を訪れた設立者のエービゲール・ドールン夫人が糖尿病によるめまいのため、階段から転落し、胆嚢が破裂するという事故が起きたためだ。
夫人は七十歳を越える老体で、糖尿病の状態での手術はかなり危険であった。執刀は、夫人から最大限の友情と信頼を寄せられていた、辣腕の外科主任ジャニー博士の手によってなされる手はずになっていた。

たまたま、専門的知識を得るために友人のミンチェン博士を訪ねてきていたエラリイは、ことのついでにドールン夫人の手術を見学することになった。オランダ記念病院の大手術室は、実習生や看護婦たちが見学できるように、立会人用の桟敷席が階段状に設けられており、しら木の高い仕切りで遮断された平土間の手術室を見下ろせるように作られている。

死体はやまほど見てきたエラリイだが、生きた組織を切り刻む手術の現場に立ち会うのは嫌なものだった。エラリイは恐怖と興奮が混じりあったような気持ちで劇場の桟敷席に腰を下ろし、手術台を見つめていた。やがて手術室と控え室の間のドアから、患者運搬車に乗せられたドールン夫人が運び込まれ、手術台の上に横たえられた。

しかし、なんだか様子が変だった。エラリイはジャニー博士の背中が、ショックでこわばるのを見た。手術台の上のドールン夫人は、すでに絞殺され、死体となっていたのだ。



☆登場人物リスト

アビゲール・ドールン・・・百万長者の女
ハルダ・ドールン・・・跡とりの娘
ヘンドリック・ドールン・・・黒い羊
サラ・フラー・・・お友だち
フランシス・ジャニー博士・・・外科主任
ルシアス・ダニング博士・・・診察専門医
エディス・ダニング・・・社会学者
フローレンス・ベンソニー博士・・・産科医
ジョン・ミンチェン博士・・・医務監督
アーサー・レスリー博士・・・外科医
ロバート・ゴールド医師・・・実習生
エドワード・バイヤース医師・・・麻酔係
ルシール・プライス・・・正規看護婦
グレース・オバーマン・・・正規看護婦
クレイトン・・・看護婦
ジョナス・・・外科医
アイザック・カップ・・・病院の玄関番
モリッツ・ニーゼル・・・《天才》
ジェームス・パラダイス・・・庶務主任
フィリップ・モアハウス・・・弁護士
マイケル・カダーイ・・・町のだに
トマス・スワンソン・・・謎の男
ちびのウィリー・・・用心棒
ジョー・ゲッコ・・・用心棒
スナッパー・・・用心棒
ブリストル・・・執事
ピート・ハーパー・・・新聞記者
ヘンリ・サンプスン・・・地方検事
チモシー・クローニン・・・地方検事補
サムエル・プラウティー・・・医務検査官補
リッチー・警部補・・・地区刑事
フリント・・・刑事
リッター・・・刑事
ピゴット・・・刑事
ジョンスン・・・刑事
ヘッス・・・刑事
トマス・ヴェリー・・・部長刑事
リチャード・クイーン・・・ニューヨーク市警察本部警視
エラリイ・クイーン・・・分析家
ジューナ・・・クイーン家のなんでも屋


☆コメント

『オランダ靴の謎』はいかにも初期クイーンらしいフェアプレイ精神にもとづく本格パズラーの名作である。読者は充分な手がかりを与えられ、しかも探偵エラリイはその手がかりの重要性を強調してさえいるのである。『ローマ帽子の謎』『フランス白粉の謎』の路線を継承した、都市型探偵小説として、現在でもクイーンの代表作の一つとしてこの作品を挙げる人は少なくないだろう。パズラーとして、とてもバランスがとれた作品でクイーン入門書としてもふさわしい。いわゆる国名シリーズのお奨めNo.1といえる作品。
(eirakuin_rika)



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