真鍮の家/THE HOUSE OF BRASS (1968)
☆事件
ハネムーンから帰ってきたクイーン警視夫妻を待っていたのは、何とも奇妙な招待状だった。ブラスという老人が、警視の妻ジェシイを含む、互いに何の面識もない六人の男女に莫大な遺産を遺したいと提案したのだ。興味を惹かれた夫妻が訪れた老人の邸は、建物も住人も想像以上に異様なものだった。奇妙な提案の裏にはいかなる謎が残されているのか?
果たして起こった第一の殺人の犯人は? クイーン警視が必死の推理で挑む!
(ハヤカワ文庫カバー紹介文より)
☆登場人物リスト
ヘンドリック・ブラス・・・老富豪
ヒューゴー・ザーバス・・・ブラス家の召使
デウィット・アリステア・・・詐欺師
エリザベス・・・デウィットの妻
ヒューバート・ソーントン・・・医師
コーネリア・オープンショー・・・オールド・ミス
キース・パーマー・・・くず鉄商
ビル・パールバーグ・・・くず鉄商
リン・オニール・・・西部の女
ヴォーン・・・私立探偵
ウェス・ポロンスキー・・・退職警官
ピート・アンジェロ・・・退職警官
アル・マーフィー・・・退職警官
ヒュー・ギフィン・・・退職警官
ジョニー・クリップス・・・退職警官
ヴィクター・フレック・・・警察署長
リチャード・クイーン・・・警視
ジェシイ・シャーウッド・・・リチャードの妻
エラリイ・クイーン…犯罪研究家
☆コメント
『真鍮の家』は、『クイーン警視自身の事件』の続編という形になっていて、定年退職後のクイーン警視が『クイーン警視自身の事件』で知り合ったジェシーと再婚してからの冒険譚です。退職警官の探偵団が脇役を固めているのも、この二作に共通しているところです。実際には二つの作品の発表年代には十二年の開きがあり、その間に発表された作品では警視とジェシーの結婚には一切触れていないという矛盾もあるのですが。
それはさておき、『真鍮の家』は『クイーン警視自身の事件』の続編としての性格を持ちながらも、作品の雰囲気は大きく違っていると言えます。『クイーン警視自身の事件』がどちらかというと行動中心のストリー展開で、警視と仲間たちはエラリイの助けを一切借りずに事件を解決しているのに対し、今回は最終的にエラリイが推理によって真相を解明するところが大きな違いでしょう。登場人物や舞台の設定も夢幻的で、作り物めいた印象が強いです。いかにも本格的な謎解きで勝負という作風なのですが、そのわりには仕掛がしょぼいというか、最終的には短編ネタで終わっているような感じです。エラリイが登場するまでのクイーン警視の活躍は何だったのかという、徒労感もあります。最後の解決篇までは、「宝探し」で引っぱっているだけみたいですね。「宝探し」そのものはクイーンの好みのテーマではあります。
クイーンの作品が読めればとりあえず満足という読者にはお奨めと言えるんだけど……
(Eirakuin_Rika)
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