さほやまの ははそのいろは うすけれど あきはふかくも なりにけるかな
佐保山の ははその色は うすけれど 秋は深くも なりにけるかな
坂上是則
佐保山の柞(ははそ)の色は薄いけれども、秋は深くなったことだ。
0266 にも記載しました通り、柞は美しく黄葉しますが、「紅葉」と表現するほどには色が濃くはなりません。ですので、この歌の「うすけれど」は、まだ時期が早くて薄いという意味ではないことになります。多くの人々が真っ赤に染まった紅葉に秋の深まりを感じるところですが、作者は佐保山の黄色に染まった柞に秋を感じて詠んでいるのですね。
作者の坂上是則(さかのうえのこれのり)は平安時代前期から中期の貴族にして歌人。三十六歌仙の一人に数えられ、古今和歌集には八首が入集しています。