みよしのの やまのしらゆき つもるらし ふるさとさむく なりまさるなり
み吉野の 山の白雪 積もるらし ふるさと寒く なりまさるなり
坂上是則
吉野の山には白雪が積もっているらしい。旧都の奈良では一層寒さがつのっていることだ。
詞書には「奈良の京(みやこ)にまかれるける時に、宿れりける所にてよめる」とありますので、歌中の「ふるさと」はここでは、「かつて都のあった奈良」の意となります。
何かどこかで聞いたことがある歌のように思われる方も多いでしょうか。それはこの歌が、百人一首(第94番)にも採られた藤原雅経の名歌の本歌であり、共通の語句が多く使われているからでしょう。
みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり
み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣うつなり
そしてまた、百人一首と言えば、坂上是則自身も次の歌が第31番として採録されており、古今集ではこのあと間もなく、0332 に登場します。
あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき
朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪