ゆきかへり そらにのみして ふることは わがゐるやまの かぜはやみなり
行きかへり そらにのみして ふることは わがゐる山の 風早みなり
在原業平
行ったり来たりしてうわの空で時を過ごしているのは、雲である私が留まるはずのあなたという山の風が強いからなのですよ。
「そら」はうわの空の意と、雲だと言われた自分がいる空の両義。「ふる」は「経る」で、時間を過ごす意ですね。自分から離れていくのですねという紀有常娘の歌(0784)に対して、「留まろうにも貴女は私に冷たいではないですか」と返したというところでしょうか。