自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★イフガオへ-中

2014年03月25日 | ⇒トピック往来
 25日午前、イフガオ州立大学でプロジェクトを推進する現地の組織「イフガオGIAHS持続発展協議会(IGDC=Ifugao GIAHS Sustainable Development Committee)が設立され、受講生20人を迎えての開講式とワークショプが開催された。目を引いたのが、「イフガオ・ダンス」。男女の男女円を描き、男は前かがみの姿勢でステップを踏み、女は腕を羽根のように伸ばし小刻みに進む。まるで、鳥の「求愛ダンス」のようなイメージの民族舞踊だ。赤と青をベースとした民族衣装がなんとも、その踊りの雰囲気にマッチしている。

     伝統の上に21世紀の農業をどう創り上げていくか     

 イフガオGIAHS持続発展協議会の設立総会には、プロジェクト代表の中村浩二金沢大学特任教授、イフオガ州のアティ・デニス・ハバウェル知事、イフガオ州立大学のセラフィン・L・ゴハヨン学長、フィリピン大学オープン・ユニバーシティーのメリンダ・ルマンタ副学長、バナウエ町のホン・ジェリー・ダリボグ町長らが出席した。持続発展協議会の設立目的は、能登半島と同様に、大学と行政が同じテーブルに就き、地域の人づくりについて手を尽くすということだ。中村教授は「希望あふれるGIAHSの仲間として、持続可能な地域づくりをともに学んで行きましょう」と挨拶。また、協議会の会長に就任したハバウェル知事は「金沢大学の人材養成の取り組みは先進的で、国連大学などからも高く評価されている。イフガオだけでなく、フィリピン全土でこのノウハウを共有したい」と述べた。

 午後からは、イフガオ里山マイスター養成プログラムの開講式が、第1期生20人を迎えて執り行われた。受講生は、棚田が広がるバナウエ、ホンデュワン、マユヤオの3つの町の20代から40代の社会人。職業は、農業を中心に環境ボランティア、大学教員、家事手伝いなど。20人のうち、15人が女性となっている。応募者は59人で書類選考と面接で選ばれた。

 受講した動機について何人かにインタビューした。ジェニファ・ランナオさん(38)=女性・農業=は、「最近は若い人たちだけでなく、中高年の人も棚田から離れていっています。そのため田んぼの水の分配も難しくなっています。どうしたら村のみんなが少しでも豊かになれるか学びたいと思って受講を希望しました」と話す。インフマン・レイノス・ジョシュスさん(24)=男性・環境ボランティア=は、「これから学ぶことをバナウエの棚田の保全に役立てたいと思います。そして、1年後に学んだことを周囲に広めたいと思います」と期待を込めた。ビッキー・マダギムさん(40)=女性・大学教員=は、「イフガオの伝統文化にとても興味があります。それは農業の歴史そのものでもあります。そして、イフガオに残るスキル(農業技術)を紹介していきたいと考えています」と意欲を見せた。

 ユネスコの世界文化遺産でもあるこの棚田でも農業離れが進み、耕作放棄地が目立つ。若者の農業離れは、日本だけでなく、東アジア、さらにアメリカやヨーロッパでも起きていることだ。一方で、農業に目を向ける都会の若者たちもいる。パーマネント・アグリカルチャー(パーマカルチャー=持続型農業)を学びたいと農村へ移住してくる若者たち。ただ農業の伝統を守るだけではなく、伝統の上に21世紀の農業をどう創り上げていくか、その取り組みがイフガでも始まったのである。

⇒25日(火)夜・イフガオの天気  あめ

  

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