日本酒のつまみにカニカマを重宝している。ラップを外してそのまま箸でつまんで食べる。なんとなくカニの風味のあの味は酒の旨みをじゃましない。最近はスパークリングワインや白ワインのグラスの傍らにも置いている。
この商品が世に出回ったころは高校時代だった。金沢で下宿をしていて、近くの食料品店で買って、おやつ代わりに食べていたことを思い出す。もう50年前のことだ。なぜそのようなことを覚えているのかと言うと、生まれ育った能登の水産加工会社「スギヨ」(七尾市)で開発された商品ということで印象深かった。
ただ、正直言うと当時の若者言葉で「だっさい」、あかぬけしない商品だった。というのも、当時は「かにあし」という商品名で、細かく身をほぐしたような中身だった。いま販売されているようなカニの脚を模した標品ではなかった。風味はカニだが、商品イメージはカニとは異なった。当時のテレビCMも「カニようでカニでない・・」というちょっと言い訳がましいCMだったが、そのキャッチフレ-ズが話題を呼んだ。おそらく当時は「カニまがい商品」「インチキ」などとクレームが来て、スギヨはそれを逆手に取ってCMに仕立てたのではないだろうか。
あれから半世紀、金沢のスーパーでは本物の香箱ガニの脚を再現したスギヨの『香り箱』という商品は練り物コーナーではなく、鮮魚コーナーに陳列されている。消費者は本物のカニではないと知りながらこの商品に手を伸ばす。不思議な食材ではある。
さらに、肉もカニカマ化しているのかもしれない。「大豆ミート」「ソイミート」という商品がスーパーやコンビニ、ドラッグストアの棚に並んでいる。大豆を原材料とした肉のような加工食品だ。この商品も以前から商品として開発されていた。その後、発芽させた大豆を原料にすると、アミノ酸やビタミン、糖類などの栄養素が増えて肉の成分と似てくることから商品開発が進んだ。健康志向や環境問題への関心の高まりもあって、いまでは棚の一角を占めるようになっている。唐揚げ、炒め物、ハンバーガー、肉まんなど種類も豊富だ。
カニや肉だけではない。「マツタケの味」の吸い物も商品化されている。日本人はこうした代替食品に違和感を持たない、考えてみればこれも不思議だ。
⇒9日(水)午後・金沢の天気 はれ
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