小泉牧夫著『世にもおもしろい英語』(IBC)に引き込まれた。還暦を機に英語を学び直ししている訳ではないのだが、友人から薦められて手に取った。英語習得のノウハウ本とはまったく違う、ある意味でマニアックな本だ。いくつか著書を引用して考察を交える。
言葉は人間が使うものだから少々の感性のズレはあっても、似たような表現になる、それも英語も日本語でもある。日本語で「鼻差で」「間一髪で」という表現がある。鼻差で、あるいは髪の毛1本の差は、わずかの差でという意味だ。この表現は英語表現でも使われるという。たとえば、win by the nose あるいは win by a hair である。日本語を英訳したのではなく、もともとイギリスやアメリカでも使っている。
そこで言葉というものを考えると、英語にしても日本語にしても、ルーツというか所詮は、口でしゃべり、耳で聞き、鼻で感じるといった人間の五感を他の人と共有したものだ。多少の違いがあっても、その五感が世界でほぼ共有されていれば、言葉の表現も自ずと似通ってくる。著書によると、たとえばアメリカの俗語で eye-opener という表現がある。「(目覚ましの)酒」「シャワー」という意味だが、ある事実を知って「目を見張る」「目が覚める」思いを表現で使われる。まさに日本語でも使う「開眼」「目が開かれる」である。
色彩感覚にしてもそうだ。日本人は「けじめをつける」「単純化する」という意味を「白黒をはっきりさせる」という表現を用いる。小泉氏によれば、英語だと、a black and white issue は白黒がはっきりとした単純な問題となる。また、赤は「危険」「興奮」「怒り」「損失」など多様な表現をともなうと例が紹介されている。「red light」は信号の「止まれ」、「see red」は「怒り出す」など。もちろん、英語ならでは言い回しもある。「red herring」は直訳すれば「赤ニシン」だが、「偽の情報」といった意味がある。魚のニシンは酢やスパイスを混ぜて燻製にすると赤くなるそうだ。ただ強烈なにおいがする。イギリスではキツネ狩りに反対する住民らが動物虐待への抗議の意味で狩りの予定地にこの赤いニシンをまいた。すると、猟犬の嗅覚がおかしくなって寄り付かなかったというのだ。それがいまでは「ガセネタ」という風な表現として現代社会で生きている。
著者はこうした事例を中心に「人生編」「仕事編」「洒落た表現編」「恐怖表現編」「動物編」というように生活感覚で解説、紹介している。英語習得のノウハウ本はこれまで何度も途中で放棄したが、これは一気に読んだ。歴史や風土は違うものの人としての五感や感覚はそんなに違わない。人体が同じだから。言葉表現の文法などは異にしても、根っこにある言葉の感性は同じだ、そう考えると英語に親しみがわいてくる。
最後に、これまで日本人は自らの逆境を正直に「難しい」と表現してきた。しかし、アメリカ人は「difficult」と表現するより、「challenging」という表現を好むという。逆境は「姿を変えた幸福」だとの表現だ。今の日本の若い世代は後者の表現に共感するのではないか。人生を前向きに考えるヒントも与えてくれる。
⇒4日(水)朝・金沢の天気 あめ
言葉は人間が使うものだから少々の感性のズレはあっても、似たような表現になる、それも英語も日本語でもある。日本語で「鼻差で」「間一髪で」という表現がある。鼻差で、あるいは髪の毛1本の差は、わずかの差でという意味だ。この表現は英語表現でも使われるという。たとえば、win by the nose あるいは win by a hair である。日本語を英訳したのではなく、もともとイギリスやアメリカでも使っている。
そこで言葉というものを考えると、英語にしても日本語にしても、ルーツというか所詮は、口でしゃべり、耳で聞き、鼻で感じるといった人間の五感を他の人と共有したものだ。多少の違いがあっても、その五感が世界でほぼ共有されていれば、言葉の表現も自ずと似通ってくる。著書によると、たとえばアメリカの俗語で eye-opener という表現がある。「(目覚ましの)酒」「シャワー」という意味だが、ある事実を知って「目を見張る」「目が覚める」思いを表現で使われる。まさに日本語でも使う「開眼」「目が開かれる」である。
色彩感覚にしてもそうだ。日本人は「けじめをつける」「単純化する」という意味を「白黒をはっきりさせる」という表現を用いる。小泉氏によれば、英語だと、a black and white issue は白黒がはっきりとした単純な問題となる。また、赤は「危険」「興奮」「怒り」「損失」など多様な表現をともなうと例が紹介されている。「red light」は信号の「止まれ」、「see red」は「怒り出す」など。もちろん、英語ならでは言い回しもある。「red herring」は直訳すれば「赤ニシン」だが、「偽の情報」といった意味がある。魚のニシンは酢やスパイスを混ぜて燻製にすると赤くなるそうだ。ただ強烈なにおいがする。イギリスではキツネ狩りに反対する住民らが動物虐待への抗議の意味で狩りの予定地にこの赤いニシンをまいた。すると、猟犬の嗅覚がおかしくなって寄り付かなかったというのだ。それがいまでは「ガセネタ」という風な表現として現代社会で生きている。
著者はこうした事例を中心に「人生編」「仕事編」「洒落た表現編」「恐怖表現編」「動物編」というように生活感覚で解説、紹介している。英語習得のノウハウ本はこれまで何度も途中で放棄したが、これは一気に読んだ。歴史や風土は違うものの人としての五感や感覚はそんなに違わない。人体が同じだから。言葉表現の文法などは異にしても、根っこにある言葉の感性は同じだ、そう考えると英語に親しみがわいてくる。
最後に、これまで日本人は自らの逆境を正直に「難しい」と表現してきた。しかし、アメリカ人は「difficult」と表現するより、「challenging」という表現を好むという。逆境は「姿を変えた幸福」だとの表現だ。今の日本の若い世代は後者の表現に共感するのではないか。人生を前向きに考えるヒントも与えてくれる。
⇒4日(水)朝・金沢の天気 あめ
拝読しながら、いろいろなアイディアが浮かびました。「あなたを励ます英語の言葉」という本を書いてみようかと思います。
今第2弾を書いていますので、その次になりますが・・・。
宇野先生のますますのご活躍をお祈りいたします。
柳田が懐かしいです。
小泉牧夫