自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「平和的な圧力」の裏読み

2017年08月15日 | ⇒メディア時評
   アメリカのトランプ大統領の気持ちは北朝鮮から国内問題にシフトしたようだ。ホワイトハウスのHPに大統領の激しい口調の演説文が紹介されている。
   Racism is evil. And those who cause violence in its name are criminals and thugs, including the KKK, neo-Nazis, white supremacists, and other hate groups that are repugnant to everything we hold dear as Americans. 人種差別は邪悪だ。それを掲げて暴力を振るう者、KKK、ネオナチ、白人優位主義者、他の嫌悪者グループは凶悪犯であり、我々アメリカ人として大切に思うもの全てに矛盾する。

   アメリカの現地時間12日に、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義者たちのデモに参加していた男が反対派グループの列に車で突っ込み、女性1人が死亡し多数が重軽傷を負う事件があった。アメリカの関心事は北朝鮮のICBMから一気にこの事件に耳目が集まった。ところが、トランプ大統領は当初、白人至上主義者たちを明確に非難しなかったことから逆にトランプ批判がわき起こり、14日の演説となった。

   きょう15日の東京株式市場は、アメリカと北朝鮮それぞれの威嚇発言が一服したのを受けて、日経平均株価が5営業日ぶりに値上がり、終値は216円高い1万9753円。逆に、機雷の製造でも知られる防衛関連銘柄、石川製作所(石川県白山市・東証一部)は前日比330円安の1395円、19%も下落した。この株価の背景は、おそらくウオール・ストリート・ジャーナルで掲載された、アメリカのティラーソン国務長官とマティス国防長官による連名の寄稿だろう(現地時間13日)。

   We’re Holding Pyongyang to Account(私たちは、ピョンヤンにアカウントを保持している)の見出しで始まるこの記事では、アメリカの目標は朝鮮半島の非核化であり、北朝鮮の体制転換やアメリカ軍による北朝鮮侵攻を目指していないと訴え、北朝鮮に対する経済制裁や外交による「平和的な圧力」で臨む考えを示した。

なぜ、ウオール・ストリート・ジャーナルに寄稿したのか、すぐに理解できた。それ以前はダウが急激に下がり続けていた。そこで、ホワイトハウスではあえて経済専門紙に国務長官と国防長官が連名で「平和的な圧力」を訴えることで経済に及ぼす影響を和らげたかったのだろう。ダウ工業株平均は上昇し、終値は前週末より135㌦高い2万1993㌦だった。それに連動して前述のように日経平均株価も戻した。

   安倍総理とトランプ大統領は15日午前、電話で30分間会談したと報じられた。北朝鮮が日本上空を越えてグアム周辺海域に弾道ミサイル発射を計画していることを踏まえ、北朝鮮に弾道ミサイル発射を強行させないために、中国やロシアに働きかけを強める方針を確認したという。

   ふと裏読みがしたくなる。この一連の動きが株価を安定させるのが目的だとすると、今度は相手(北朝鮮)に逆手に取られる可能性があるのではないだろうか。激しく威嚇、揺さぶりをかけて、アメリカや中国、韓国、日本の株価をとことん下げて混乱させる戦術に出てくるのではないか。北朝鮮は自国にアメリカの目を向けさせたいのではないだろうか。

⇒15日(火)夜・金沢の天気   くもり

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