あの空の下で 吉田 修一 木楽舎 このアイテムの詳細を見る |
吉田修一 著 : あの空の下で
を、読みました。
全日空の機内誌“翼の王国”に連載された、
短編小説とエッセイを、書籍化した一冊。
シートに座って、シートベルトを締めて、
座席の前のポケットにある、“翼の王国”を読みながらも、
心はすでに、目的地に飛んでいるような、
そんな旅の初めの興奮が、味わえる本。
国内旅行、海外旅行、旅にまつわる思い出、など
飛行機の機内誌に、ぴったりの旅にまつわるお話が多い中、
“自転車泥棒”という作品は、旅とは対極の日常を描いた作品。
何をやっても、上手くいかず、踏んだり蹴ったり。
あげく、高熱の中、自転車で解熱剤を買いに行った帰りに
自転車を盗まれてしまった主人公。
人生に疲れを感じていましたが、ポストに誤配された
他人あての手紙を、読んだことで人生が変わり
がむしゃらに這い上がることができました。
何気ない、ひとつの出来事、あやまち。
そういうことで、人生は大きく進路を変えることってあります。
手紙の中味は、九州を思わせる口調の文で、
私も、主人公のように、自分宛の手紙と勘違いしてしまいそうでした。
その他、初めて読んだ著者のエッセイ。
やっぱりエッセイも、独特の観察と感性で
心のあらゆる部分を、ピリピリと刺激されました。