八月の路上に捨てる (文春文庫) | |
伊藤 たかみ | |
文藝春秋 |
伊藤たかみ 著 : 八月の路上に捨てる
を、読みました。
八月のねばりつくような猛暑の日々、主人公の“僕”は
生活の糧であるアルバイトに精を出している。
東京の新宿周辺の自販機に、ひたすら飲料を補充する仕事。
大学時代から付き合っていた彼女と、卒業後結婚した“僕”だが、
仕事に悩み精神的に傷ついてゆく彼女を支えようにも、
脚本家を目指し、一方でもうその夢は叶わないと確信し始めている僕は、
彼女を経済的に支えることも、精神的に守ることもできず、
4年間の結婚生活は破たんし、9月1日に、離婚届を提出することにする。
離婚届を出す前日、社員で女トラックドライバーでバツイチ子持ちの
水城さんに、自分の結婚の破たんに至るまでの経緯を話す。
八月になったら読もうと、先月から本棚に飾っていた本を
ようやく読みました。
一日の過酷な肉体労働の合間に、先輩の水城さんに話す僕の打ち明け話は
どちらも悪くなく、どちらにも非があるような、よくある恋の結末です。
いつも一生懸命に取り組んできたはずなのに、
いつもまじめに頑張ってるのに、
しかし結果は正反対の方向へ転がって行く。
そんな、どうにもならない現実を描いたお話は
切実ではあるのですが、夏の終わりと若さの終焉がダブって
感じるものは悲壮感ではなく、不思議と安堵と希望でした。