昭和38年3月に東北大学法学部を卒業後、三菱樹脂株式会社に就職したXは、入社試験時に学生運動歴を秘して虚偽の報告を行ったとして、3ヶ月の使用期間後の本採用を拒否された。原告Xは、雇用契約上の地位確認と賃金支払いを求めて出訴した事件。
1審では、解雇権濫用として被告側敗訴の判決。
被告側が控訴したが、控訴棄却判決を受けたため、被告側が上告する。
争点としては、
①基本権保障と私的自治の関係はどうあるべきか。
②憲法の私人間での適用はあるのか。
③雇用の自由は思想調査を許容するものか。
④本件契約の性質は。
判旨
①憲法19条、14条の各規定は、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。これらの規定の定める個人の自由や平等は、国や公共団体の統治行動に対する関係においてこそ、侵されることのない権利として保障されるべき性質のものであり、憲法上の基本権保障規定をそのまま私人相互間の関係についても適用ないしは類推適用すべきものではない。
②私的自治に対する一般的制限である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定等の適切な運用によって、一面で私的自治の原則を尊重しながら、他面で社会的許容性の限度を超える侵害に対し、基本的な自由や平等の利益を保護しその適切な調整を図る方途を示した。
③企業者が、労働者の採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項について申告を求めることも、これを法律上禁止された違法行為とすべき理由はない。法律に別段の定めがない限り、企業者の法的に許された行為と示した。
④企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用期間中の勤務状況や不採用該当事実を知るに至った場合、留保解約権の行使ができる。
判決
破棄差戻(最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)
昭和51年3月11日和解する。
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