野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

希少になった日本古来の撫子カワラナデシコ

2019年08月14日 07時21分01秒 | 

栽培種が多くなったので、日本古来の撫子であるカワラナデシコは少なくなった。撫でるほどにかわいい花という意味の名前だが、大和なでしことかサッカーのナデシコ・リーグとか、含意は複雑になっている。神代植物公園の植物多様性センターの「礫地エリア」で大切にされていた。秋の七草の一つでもあり、俳句では秋の季語だが、名前と風姿に誘われて、例句は多い。「撫子や若き女の世すて人 正岡子規 撫子」は分かりやすい。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

カワラナデシコ(河原撫子、Dianthus superbus L. var. longicalycinus (Maxim.) F.N.Williams)とは、ナデシコ科ナデシコ属の多年草。秋の七草の1つであるナデシコ(撫子)は本(変)種のことを指す。別名(異名)はナデシコ、ヤマトナデシコ

概要
日本では本州以西四国、九州に広く分布するほか、沖縄諸島(久米島・渡名喜島)に少数が自生する。日本国外では朝鮮、中国、台湾に分布する。主に日当たりの良い草原や河原に生育するが、路傍や山地の斜面、海岸の砂浜等でも生育する。

多年草で、高さ30~50cm。茎は根から叢生し、節が膨らむ。葉は対生、線形~線状披針形で長さ4~7cm、先端は鋭く尖り、基部は茎を抱きこみ(抱茎)、無毛で、粉白色を呈す。葉柄は無い。花期は6~9月。花は茎の頂端に付き、直径4~5cm、がく片は3~4cm、苞(ほう)は3~4対ある。花弁は5枚で、先が糸状に細裂している。雄蕊は10本、雌蕊は花柱2本。色は、淡紅色が一般的だが、白色も多い。また、淡紅色と白色が混ざっている個体もある。栽培していると白色のものが淡紅色に変化したりもする。

日本では、自生地の開発や園芸用の採集、動物による食害、外来種の影響等で減少している地域もある。また、カワラナデシコは草原等の開けた環境を好む種であり、そのような環境が遷移の進行に伴い、日当たりの悪い陰的な環境に変化すると生育に適さなくなる。これは自然現象ではあるが、昔は、草原や山地、河原等の環境は人の手により草刈や枝打ち等され、里山的な利用が行われてきた。これで、日当たりの良い開けた環境が継続してきたという背景がある。近年の人間の生活習慣の変化で、このような「人為的なかく乱」が行われなくなると、カワラナデシコに代表される人間と密接な関係のある普通種が、その自生地や個体数を減少させてしまう結果となりうる。

利用
秋の七草の1つであることから分かるように観賞価値を認められた。栽培も行われ、特に江戸時代には変わり花の栽培が盛んで、古典園芸植物の一つともなっていたが、現在ではほとんど見られなくなり、わずかに伊勢ナデシコと呼ばれる一群などが維持されている。また、他のダイアンサス(ナデシコ)類の交配材料にも用いられる 。

薬用としても利用されており、開花期の全草を瞿麦(くばく)、種子を乾燥したものを瞿麦子(くばくし)と言い、利尿作用や通経作用がある。


 

撫子 の例句
あけぼのの舟をたゝくや白撫子 飯島晴子
かたまつて撫子とんで野萱草 森澄雄
かんずめのかんに撫子さして当分ご滞在ですか 荻原井泉水
この石割らば白き撫子あらはれでん 平井照敏 猫町
これがまあ一茶の詠みし撫子か 鷹羽狩行
なてしこの小石ましりに咲にけり 正岡子規 撫子
なてしこは妹がかへ名かありかたや 正岡子規 撫子
なてし子のこけて其まゝ咲にけり 正岡子規 撫子
なてし子や皆のらはべのいくゝねり 正岡子規 撫子
なてし子をつかんて眠る小ども哉 正岡子規 撫子
なでしこにざうとこけたり竹釣瓶 正岡子規 撫子
なでしこにぶらさがりたるこてふ哉 正岡子規 撫子
なでしこに蝶ぶらさがるたわみ哉 正岡子規 撫子
なでしこや歌神に侍すさとめぐり 角川源義
なでしこや賤の女になき忌み言葉 鷹羽狩行
ほそ道の川原撫子男の子めく 佐藤鬼房
サロマ湖の撫子の咲き乱れたる 高野素十
一束の盆花桔梗なでしこと 細見綾子
井戸はたにいもの撫子あれにけり 正岡子規 撫子
井戸端に妹が撫し子あれにけり 正岡子規 撫子
今日不滅撫子を突き出して居る 永田耕衣
児も居らず愛子の村の野撫子 正岡子規 撫子
八輪その中、日本の撫子田中急流に乗る 荻原井泉水
咲てから又撫し子のやせにけり 正岡子規 撫子
喘ぎ喘ぎ撫し子の上に倒れけり 正岡子規 撫子
四五本の撫子うゑてながめかな 原石鼎 花影
土堤に撫子摘むは天下に我一人 永田耕衣
夕焼け河原の撫子に花火筒を据う 尾崎放哉 大正時代
大阿蘇や撫子なべて傾ぎ咲く 岡井省二 前後
夫あらず花撫子と苔の墓 角川源義
小屏風の撫子見ても子を思ふ 正岡子規 撫子
思ひあまり撫子痩せぬ小石原 正岡子規 撫子
我が摘みて撫子既に無き堤 永田耕衣
投げ挿せる撫子や石のすずしさに 荻原井泉水
摺えゐる撫子に水太く打つ 日野草城
撫し子に馬けつまづく河原かな 正岡子規 撫子
撫し子のはかなや石に根を持て 正岡子規 撫子
撫し子の我から伏して咲にけり 正岡子規 撫子
撫し子の河原も広し大井河 正岡子規 撫子
撫し子やものなつかしき昔ぶり 正岡子規 撫子
撫し子や人には見えぬ笠のうら 正岡子規 撫子
撫し子や壁落ちかゝる牛の小屋 正岡子規 撫子
撫し子を横にくはへし野馬哉 正岡子規 撫子
撫子が崖に冬咲き蜑 山口青邨
撫子にはじまる句碑の秋の草 深見けん二
撫子に帽子をとりて荒筵 古舘曹人 砂の音
撫子に白布晒す河原哉 正岡子規 撫子
撫子に草丈のみなすぐれけり 石田勝彦 秋興
撫子に蝶々白し誰の魂 正岡子規 撫子
撫子に褌乾く夕日哉 正岡子規 撫子
撫子に踏みそこねるな右の足 正岡子規 撫子
撫子に迎火映る小庭哉 正岡子規 迎火
撫子に遊び友達もなかりけり 尾崎放哉 大学時代
撫子に雷ふるふ小庭かな 正岡子規 撫子
撫子の句碑になでしこ早や咲きて(秩父長瀞に欣一句碑成る) 細見綾子
撫子の挿芽つきしははつきりと 右城暮石 句集外 昭和十三年
撫子の種つるしたり花もある 正岡子規 草の実
撫子の紅もかなしき捨扇 山口青邨
撫子の老撫子を撫でながら(献亡妻ユキヱ*七句・昭和六十一年九月三日・八十四歳) 人生 永田耕衣
撫子の脇を思えば河ばかり 正岡子規 人生
撫子の花にあはれや蛇の衣 正岡子規 蛇の衣
撫子は昼顔恨む姿あり 正岡子規 撫子
撫子は月にも日にも細りけり 正岡子規 撫子
撫子も挿し十分に意を得たり 中村汀女
撫子も木賊の丈も秋に入る 中村汀女
撫子も白芙蓉も白秋暑し 山口青邨
撫子やただ滾々と川流る 山口青邨
撫子やぬれて小さき墓の膝 中村草田男
撫子や上野の夕日照り返す 正岡子規 撫子
撫子や出水にさわぐ土手の人 正岡子規 撫子
撫子や吾に昔の心あり 正岡子規 撫子
撫子や少年の脛濡れやすく 星野麥丘人
撫子や我が跡空の動くらん 正岡子規 葱室
撫子や死なで空しき人のむれ 永田耕衣
撫子や母とも過ぎにし伊吹山 中村草田男
撫子や海の夜明の草の原 河東碧梧桐
撫子や腹をいためて胤(たね)をつぎ 平畑静塔
撫子や若き女の世すて人 正岡子規 撫子
撫子や高野の道の地蔵堂 河東碧梧桐
撫子や麓ともなく日のさして 岡井省二 鹿野
撫子をいためて豪雨去る岬 飯島晴子
撫子を折る旅人もなかりけり 正岡子規 撫子
日やけせし顔でなでしこ匂ひすと 細見綾子 桃は八重
昔猪睾丸にヨク撫子写りぬ 永田耕衣
昭和すでに撫子はみな何処へ行きし 中村苑子
月よりも夏の灯強し撫子に 日野草城
朝見れば撫し子多し草枕 正岡子規 撫子
末枯やかはらなでしこ石にそひ 山口青邨
桔梗折れば撫子恨む女心 正岡子規 桔梗
梅干すや撫子弱る日の盛 正岡子規 梅干す
棒切れの吾身撫子摘み合はせ 永田耕衣
汐さして葛撫子の勢ひけり 前田普羅 能登蒼し
汗拭いてあたり撫子畑かな 岡井省二 鹿野
浜撫子 先行く海女に消えられて 伊丹三樹彦
浜撫子いまだ心の喪を解かず 鈴木真砂女 夕螢
海大風たえず撫子倒れ咲く 村山故郷
海量もて身心とするに撫子 永田耕衣
海霧うすれきて撫子の吹かれどほし 清崎敏郎
涼風や撫子の土手半ば刈られ 松崎鉄之介
牛の子の床なつかしや野撫子 正岡子規 撫子
秋立つかやゝ撫子のしどろなる 正岡子規 立秋
秋風に撫子白き桔梗哉 正岡子規 秋風
絵屏風の撫子赤し子を憶ふ 正岡子規 撫子
耳もとに高嶺撫子吹かれけり 古舘曹人 樹下石上
花勝に撫し子咲きし山家哉 正岡子規 撫子
花痩せぬ秋にわづらふ野撫子 正岡子規 秋
花細し秋にわづらふ野撫子 正岡子規 秋
萩桔梗撫子なんど萌えにけり 正岡子規 草萌
萩薄撫子なんど萌えにけり 正岡子規 草萌
蝶の翅焦げいろ河原撫子まで 三橋鷹女
蝶一つ撫子の花を去り得ざる 正岡子規 撫子
蟹満寺にのこるなでしこ踏むまじく 赤尾兜子 玄玄
路傍の阜(をか)旅人凭らしむ小撫子 中村草田男
野の道に撫子咲きぬ雲の峯 正岡子規 雲の峯
野仏の供華に虫取撫子も 松崎鉄之介
魂去るや唐撫子の紅の中 飯田龍太
黒揚羽虫とりなでしこにも止まり(千葉県神野寺) 細見綾子

 

 


内弁の数が多くて目立つ白のムクゲ耳原花笠(槿シリーズ06)

2019年08月13日 10時25分45秒 | 

ムクゲに内弁のある品種は多いが、内弁の数が31枚を超えると花笠と呼ばれるのだそうだ。耳原花笠は、底紅のすっきりした花笠。写真のものは、紅が放射状に広がっているので目立つ。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

 

 


五弁の花びらの形に個性があるカワラサイコ

2019年08月13日 06時56分40秒 | 

カワラサイコ(河原柴胡)はセリ科のミシマサイコの類「柴胡」に似ていて、河原に咲く花という命名らしい。神代植物公園の植物多様性センターの「礫地エリア」でたくさん咲いていた。近くにはカワラノギクの名札が立っていたが、絶滅危惧種のこちらはみかけなかった。ヘビイチゴと花は似ているが、はるかにおおきな花がさく。五弁の花びらの形に個性がある。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

 

 

カワラサイコ(河原柴胡、学名:Potentilla chinensis)は、バラ科キジムシロ属の多年草。同属のヒロハノカワラサイコに似るが、同種と比べると本種は全体に大きく、奇数羽状複葉の小葉の数が多く、裂片の裂け方が深く、裂片の幅が狭い。小葉の間に付属小葉片がある。

特徴
根は木質化して、円柱状となって直立する。茎は高さ30-70cmになり、長毛が生える。葉は奇数羽状複葉で、根出葉は束生し、茎葉は互生する。小葉は15-29個あり、上部の小葉は長さ2-5cm、幅8-15mm、倒披針形から狭長楕円形になり、下部のものは次第に小さくなり、葉脈の主脈まで羽状に切れ込む。裂片は鋭頭、表面は緑色で、有毛からほとんどが無毛、裏面は白い綿毛が密生し、乾燥すればときに縁は裏側に巻き込む。小葉と小葉の間に付属小葉片がある。茎葉の基部に托葉があり、広楕円形になり、鋸歯縁になるか深い歯牙状になる。

花期は6-8月。花序は散房状集散花序になり、頂生し、長期間にわたって次々と花を開く。花は黄色で径8-15mmになる。萼片は5個あり、三角状長楕円形から狭卵形で、長さ3-5mm、幅1.5-2mm、先は鋭頭になり、外側には長毛が密に生える。副萼片も5個あり、披針形から線状披針形で、萼片より小さく、先は鋭頭から鋭突頭になり、外側に長毛が密に生える。花弁も5個あり、倒卵状円形で先は凹頭になり、長さ5-7mm、幅4-6mmになる。雄蕊は15-20個あり、葯は長楕円形から卵形になる。心皮は多数あり、花柱はわずかに基部で肥厚し、やや頂生し、柱頭は広がる。花床は円錐形で毛が生える。果実は広卵形の痩果で多数つき、痩果は黄褐色で毛はなく、縦じわがあり、長さ約1.3mmになる。

分布と生育環境
日本では、本州、四国、九州に分布し、日当たりのよい海辺や河川敷などの砂礫地に生育する。世界では、極東ロシア、台湾、朝鮮半島、中国大陸に分布する。

名前の由来
和名カワラサイコは、「河原柴胡」の意。河原に生え、根茎が太く、根茎を薬用とするセリ科のミシマサイコの類「柴胡」に似ることによる。


シンプルな美しさをかもしだす白の大輪のラージホワイト(槿シリーズ05)

2019年08月12日 11時22分25秒 | 

ラージホワイトは名前どおり白の一重の大輪。重なり合った大きな五枚の花弁がシンプルな美しさをかもしだしている。大輪とはいっても、掌くらいの大きさだが。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

 

 


袋のように膨らんだ蕾も愛らしいキキョウ

2019年08月12日 06時23分43秒 | 

秋の七草のひとつに入っているキキョウだが、もう自生のものは少なくなっていて、絶滅危惧種だという。馴染みの花だが、今では園芸品種ばかりを目にするようになったわけだ。桔梗紋は蕾の形を取ったものだが、袋のように膨らんだ蕾も愛らしい。「紫のふつとふくらむ桔梗哉 正岡子規 桔梗」。蕾のまま開かないものもあるという。「莟より花の桔梗はさびしけれ 三橋鷹女」。白の品種もあり、盆の花に好んで使われたらしい。「盆花の白き桔梗を貰ひたる 細見綾子」。桔梗はいかにも俳句で好まれる季題だ。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

キキョウ(桔梗、Platycodon grandiflorus)はキキョウ科の多年生草本植物。山野の日当たりの良い所に育つ。日本全土、朝鮮半島、中国、東シベリアに分布する。

万葉集のなかで秋の七草と歌われている「朝貌の花」は本種であると言われている。絶滅危惧種である。

形態
根は太く、黄白色。高さは40-100cm程度。葉は互生で長卵形、ふちには鋸歯がある。下面はやや白みがかっている。

秋の花のイメージが強いが、実際の開花時期は六月中旬の梅雨頃から始まり、夏を通じて初秋の九月頃までである。つぼみの状態では花びら同士が風船のようにぴたりとつながっている。そのため "balloon flower" という英名を持つ。つぼみが徐々に緑から青紫にかわり裂けて星型の花を咲かせる。雌雄同花だが雄性先熟で、雄しべから花粉が出ているが雌しべの柱頭が閉じた雄花期、花粉が失活して柱頭が開き他の花の花粉を待ち受ける雌花期がある。花冠は広鐘形で五裂、径4-5cm、雄しべ・雌しべ・花びらはそれぞれ5本である。

なお、園芸品種には白色や桃色の花をつけるものや、鉢植え向きの草丈が低いもの、二重咲きになる品種やつぼみの状態のままほとんど開かないものなどがある。


キキョウの根
キキョウの根はサポニンを多く含むことから生薬(桔梗根という)として利用されている。生薬としては、根が太く、内部が充実し、えぐ味の強いものが良品とされている。去痰、鎮咳、鎮痛、鎮静、解熱作用があるとされ、消炎排膿薬、鎮咳去痰薬などに使われる。主な産地は韓国、北朝鮮、中国である。桔梗湯(キキョウ+カンゾウ)や桔梗石膏(キキョウ+セッコウ)、銀翹散、十味敗毒湯、防風通聖散、排膿散などの漢方方剤に使われる。

 

桔梗 の例句

《無歓び》てふこと桔梗捻り花 永田耕衣
おもかげをさだかにしたり白桔梗(西垣脩氏の忌) 細見綾子
かぼそくて地に伏す桔梗あきらかに 飯田蛇笏 春蘭
けふの暑ささめ行く門に桔梗花 右城暮石 句集外 昭和八年
こち向いてぽかりぽかりと桔梗かな 山口青邨
これといふことなくて咲く白桔梗 桂信子「草影」以後
しばらくは露の桔梗に座をまかす 中村汀女
せわしなや桔梗に來り菊に去る 正岡子規 菊
つゆけしや桔梗の八重は母の紋 山田みづえ 木語
はげまし言尽き枕辺の白桔梗 能村登四郎
まだ四囲の山の名知らず萩桔梗 中村汀女
まなこより鱗落ちたる桔梗かな 橋閒石 卯
みちのくの桔梗は濃ゆし妻つれて 山口青邨
むつかしくつぼむ桔梗の力哉 正岡子規 桔梗
もう桔梗咲く山國の田植かな 及川貞 夕焼
トルコ桔梗の拗ねて優しい紫色 楠本憲吉 方壺集
ホースの水桔梗の鉢覆へす 桂信子 草影
一度死ぬ再び桔梗となるために 中村苑子
一束の盆花桔梗なでしこと 細見綾子
一籠のこき紫や桔梗賣 正岡子規 桔梗
一輪の桔梗とおく教案簿 木村蕪城 一位
二度生の低き桔梗や花多き 正岡子規 桔梗
亡き友が遺せしひとや桔梗提げ 石田波郷
今年又養ひ得たり萩桔梗 正岡子規 萩
八ケ岳雲にうかべる野の桔梗 水原秋櫻子 残鐘
六月の桔梗湖の朝の音 岡井省二 前後
前生(さきしやう)の桔梗の朝に立ち昏らむ 中村苑子
十哲の像と桔梗と薄かな 河東碧梧桐
厨通りて桔梗の浸けてある 森澄雄
古井戸や露に伏したる萩桔梗 尾崎放哉 中学時代
可も不可もなき白桔梗青桔梗 斎藤玄 雁道
君が居は鳥居をくぐり桔梗濃く 山口青邨
嘆くまじ欺むかれても桔梗は紺 楠本憲吉 方壺集
土冷えてゐたる桔梗を剪りにけり 草間時彦 櫻山
夏帽に桔梗さしたる生徒哉 正岡子規 夏帽子
夏草にまじりて早き桔梗哉 正岡子規 夏草
夕焼の一瞬さめし桔梗かな 深見けん二
夕風の萩や桔梗や心細ソ 草間時彦 櫻山
夜が来て桔梗の丈となりにけり 岡井省二 前後
大江山降り出す雨に桔梗濃し 山口青邨
女らの花のデッサン桔梗より 亭午 星野麥丘人
姥神に手向けむ山の白桔梗 雨滴集 星野麥丘人
婿は見えたり見えなかつたり桔梗畑 飯島晴子
子等貧し桔梗ばかりを沢山に採り 木村蕪城 寒泉
密封の桔梗の薄次々と 阿波野青畝
寝苦しき鬼が踏みしか折れ桔梗 中村苑子
小さき小さき心字池あり桔梗伏し 山口青邨
山荘の露の桔梗や主病む 松本たかし
岩壁の亀裂千島桔梗もて埋め 福田蓼汀 秋風挽歌
峯々に桔梗高きもののうち 古舘曹人 樹下石上
嶺青し桔梗の中の放ち駒 橋閒石 雪
弱小の桔梗城いま花見城 平畑静塔
我よりも我と思へり山桔梗 中村苑子
手触れなば裂けむ桔梗の蕾かな 阿波野青畝
指の間のきらめきを過ぎ桔梗売 斎藤玄 狩眼
挿されたる壺に桔梗の一雫 桂信子 草影
断念の力つくして桔梗枯る 平井照敏 天上大風
旅の子の第一信や花桔梗 中村汀女
旅硯庭の桔梗は咲きにけり 正岡子規 桔梗
明日よりは桔梗折るべき人もなし 正岡子規 桔梗
普羅住みし北方に咲く桔梗かな 松崎鉄之介
朝敵といふ言葉あり白桔梗 山口青邨
来年さけよと桔梗のそのいろの空がきよう 荻原井泉水
東西南北いづこも濡れる濡れ桔梗 三橋鷹女
枝ふりの折るにたやすき桔梗哉 正岡子規 桔梗
枝ぶりの手折るに安き桔梗哉 正岡子規 桔梗
桔梗いけてこころよきいちにちなれや 大野林火 海門 昭和八年
桔梗いまするどき露となりゐたり 加藤秋邨
桔梗いろ剣ヶ峯まで花野富士 百合山羽公 樂土
桔梗が咲く彼等がトロの砕けよ 中川一碧樓
桔梗さき鴬の声且つ正し 川端茅舎
桔梗と挿して長しや青芒 富安風生
桔梗にけふのひかげの来て触れぬ 日野草城
桔梗にさしそめにけり大暑の日 清崎敏郎
桔梗にわれは一期の影おとす 飴山實 句集外
桔梗に日の落ちてゆく空ありき 飴山實 少長集
桔梗に朝の山気のみなぎりぬ 稲畑汀子
桔梗に稲妻うすきほむらかな 川端茅舎
桔梗のふくれきつたる宵の雨 鷲谷七菜子 一盞
桔梗のむらさききみはいづくにや  桂信子 草影
桔梗の一茎抜きて束ゆるぶ 石田勝彦 百千
桔梗の七宝の露欠けにけり 川端茅舎
桔梗の丈に風吹く山の昼 桂信子 草樹
桔梗の咲きすがれたる墓前かな 飯田蛇笏 山廬集
桔梗の実数へし今日と記憶せん(巨口先生長逝さる) 細見綾子
桔梗の庭に浅間の近さかな 上村占魚 球磨
桔梗の朝の紫さえ~と 日野草城
桔梗の花の中よりくもの糸 高野素十
桔梗の花の折目の紺正し 野見山朱鳥 愁絶
桔梗の花の紫花氷 高野素十
桔梗の花溺れしめ水切りす 能村登四郎
桔梗の莟の蒼き忌日かな 安住敦
桔梗の露きび~とありにけり 川端茅舎
桔梗の露につまづく山の音 角川源義
桔梗は画巻の縦に画きけり 河東碧梧桐
桔梗ぱつちり子なきもろ手は何抱かむ 鷲谷七菜子 銃身
桔梗ほか剪り来し花に遠き蝉 中村汀女
桔梗も痩せて喇嘛僧影の如し 臼田亜郎 定本亜浪句集
桔梗やおのれ惜しめといふことぞ 森澄雄
桔梗やしなのの露の置きどころ 上田五千石『風景』補遺
桔梗やすこし登れば氷室みち 百合山羽公 春園
桔梗やまた雨かへす峠口 飯田蛇笏 霊芝
桔梗やむかし碪の僧が妻 岡井省二 鹿野
桔梗や一群過ぎし手長蝦 前田普羅 普羅句集
桔梗や夕づきてきし浅間山 森澄雄
桔梗や将門の地と河へだつ 角川源義
桔梗や山の方には雲の隙 上田五千石 琥珀
桔梗や日日吉日のきツちきち 永田耕衣
桔梗や昼を濡らせる山の雨 森澄雄
桔梗や水を打つたる能稽古 森澄雄
桔梗や湖上に雨は降りいでぬ 及川貞 夕焼
桔梗や男もすなり首かざり 森澄雄
桔梗や男も汚れてはならず 石田波郷
桔梗や紀の川に対く古墳の門 角川源義
桔梗や藁うかびゐる朝の水 桂信子 花影
桔梗や隠れてこそのマリア観音 平畑静塔
桔梗をこのめるわれの一生かな 飴山實 句集外
桔梗をひたしあさかげあふれたる 日野草城
桔梗を咲かしむるまで溶岩老いぬ 富安風生
桔梗を土に横たへ新帰元 富安風生
桔梗を引き寄せて体空しけれ 永田耕衣
桔梗を打つて大粒山の雨 森澄雄
桔梗を焚きけぶらしぬ九谷窯 加藤秋邨
桔梗一本ここでひきまはされしかと 飯島晴子
桔梗一輪死なばゆく手の道通る 飯田龍太
桔梗刈て菊の下葉の枯し見ゆ 正岡子規 桔梗
桔梗向ひあひ向ひあひ滅ぶ弟 飯島晴子
桔梗咲くのみにて草のみだれける 水原秋櫻子 蓬壺
桔梗咲けば牛のからだに触るゝ 中川一碧樓
桔梗山下りくるひとの手もとかな 飯島晴子
桔梗折つて婆のつれ立つ彼岸哉 正岡子規 桔梗
桔梗折りゆくに墓参の人とあふ 木村蕪城 一位
桔梗折る妹が手もとのたゆげ也 正岡子規 桔梗
桔梗折れば撫子恨む女心 正岡子規 桔梗
桔梗活けてしばらく假の書齋哉 正岡子規 桔梗
桔梗活けて屏風は狩野の繋馬 正岡子規 桔梗
桔梗活けられしか依然不安にて 下村槐太 天涯
桔梗淋し陽を受け風を得てもなお 楠本憲吉 孤客
桔梗濃しいささかは去年語らせよ 中村汀女
桔梗眼前にそのいろの故郷かな 飯田龍太
桔梗笠勘十郎の好み哉 正岡子規 桔梗
桔梗見る眼を遺さんや素晩年 永田耕衣
桶に咲きし桔梗は秋や冷奴 渡邊水巴 富士
梅干すや桔梗の花の傍に 正岡子規 桔梗
武家屋敷いまに残れり白桔梗 山口青邨
母の裾桔梗こぼす露明し 小林康治 玄霜
母の骨土耳古桔梗の中に置く 石田勝彦 雙杵
水平線撓めり桔梗つぼむと記す 橋閒石 荒栲
温泉の道や通ひなれたる萩桔梗 正岡子規 萩
湯の山や時なし酒の萩桔梗 石川桂郎 高蘆
濃りんどう桔梗花市夜更けても 及川貞 夕焼
火の山の桔梗師とゐて露けしや 角川源義
烈日の美しかりし桔梗かな 中村汀女
熱下りて桔梗まこと鮮らしき 日野草城
物の芽の中に桔梗の芽出し哉 正岡子規 芽立
甕満つるまで桔梗買ふ病廊に 石田波郷
異境かな瑠璃遍照の桔梗咲く 小林康治 四季貧窮
登山靴千島桔梗に来てとまる 飴山實 句集外
白桔梗たましひぬけといひつべし 阿波野青畝
白桔梗の根も売りゐたり泉辺に 細見綾子
白桔梗一輪凛とひらきけり 日野草城
白桔梗白木槿みな海蔵寺 森澄雄
白桔梗眼にあり炎暑極まりぬ 日野草城
白桔梗砥部焼の壺すこし濡れ 桂信子 花影
白桔梗稲妻の尾のみだれざる 川端茅舎
白桔梗誰をとがむることもなく 星野麥丘人 2001年
百本の桔梗束ねしゆめうつつ 藤田湘子
盆灯籠すすき桔梗の絵の世が透き 古沢太穂 捲かるる鴎
盆花にして真白なる桔梗かな 清崎敏郎
盆花の白き桔梗を貰ひたる 細見綾子
盜人の塚の横から桔梗かな 正岡子規 桔梗
秋もはや桔梗の名殘花一つ 正岡子規 桔梗
秋近く桔梗は咲てしまひけり 正岡子規 秋近し
秋近し桔梗を契る別れ哉 正岡子規 秋近し
秋風に撫子白き桔梗哉 正岡子規 秋風
秋風や被りてみたき桔梗笠 亭午 星野麥丘人
秋風や造花の桔梗濃むらさき 山口青邨
種に刈る桔梗長く花一つ 正岡子規 桔梗
笠にさす那須野の桔梗花小し 正岡子規 桔梗
簾の垂りてはないろ淡き桔梗さく 飯田蛇笏 雪峡
紫のふつとふくらむ桔梗哉 正岡子規 桔梗
紫を秘めに秘めつつ白桔梗 相生垣瓜人 負暄
絵短冊桔梗なりけり西鶴忌 山口青邨
色変へてわが骨の過ぐ桔梗畑 飯島晴子
芝青き中に咲き立つ桔梗かな 河東碧梧桐
花籠に莟ばかりの桔梗哉 正岡子規 桔梗
茎長き菊桔梗など父に挿す 山口誓子
草桔梗牧師の名刺貼りて住む 阿波野青畝
草負ひの桔梗を過ぐ徒はだし 森澄雄
莟より花の桔梗はさびしけれ 三橋鷹女
萩桔梗されど花野の女郎花 細見綾子
萩桔梗またまぼろしの行方かな 赤尾兜子 稚年記
萩桔梗撫子なんど萌えにけり 正岡子規 草萌
萩桔梗草山赤き陽をよべば 三橋鷹女
藤袴笠は何笠桔梗笠 正岡子規 藤袴
西瓜わらん桔梗の花のつほむ頃 正岡子規 西瓜
訪ねしが女郎花はや桔梗はや 高野素十
貞操や咲く日の近き萩桔梗 三橋鷹女
赤富士の日が照りいだす岩桔梗 百合山羽公 寒雁
身を離れ影が佇ずむ白桔梗 中村苑子
辰雄偲ぶ何に彼にすべて白桔梗 林翔 和紙
送行の雨となりたる桔梗かな 森澄雄
鉛筆の線ひきのばし桔梗描く 阿波野青畝
銀屏の前桔梗の挿されけり 河東碧梧桐
銅瓶に白き桔梗をさゝれたり 正岡子規 桔梗
陶房の細筆ばかり白桔梗 石田勝彦 百千
雨はれて荒野の桔梗夕日照る 正岡子規 桔梗
雨風の桔梗ゆかねば悔のこる 三橋鷹女
雪野の桔梗とり来たばねる荒むしろ 松崎鉄之介
霧の香に桔梗すがるる山路かな 飯田蛇笏 山廬集
露晒し日晒しの石桔梗咲く 橋本多佳子
領布振りし昔の浜の草桔梗 阿波野青畝
風吹て桔梗あぶなき細り哉 正岡子規 桔梗
馬に敷く褥草にも萩桔梗 富安風生
麺麭を焼く妻の挿頭の白桔梗 日野草城


内弁が重なって半八重咲きとなる大徳寺祇園守(槿シリーズ04)

2019年08月11日 09時52分46秒 | 

大徳寺祇園守は薄紫の大輪のムクゲ。内弁が重なって半八重咲きとなるのが特徴。もこもこと生える内弁は、最初のうちは余計な感じがするが、見慣れるとなかなかいいものだ。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

 

 


八重の花が少し暑苦しいヤブカンゾウ

2019年08月11日 05時59分51秒 | 

ヤブカンゾウは忘れ草とも呼ばれるが、それは花が一日限りで終わると考えられたためらしい。英語ではもデイリリーと呼ばれる。ただし数日もつ花も多いらしい。少し暑苦しい花で、同じ仲間で一重のノカンゾウのほうが涼し気だ。キスゲ類の全体を指すことも多い「忘れ草」は万葉の昔から歌われている。「忘れ草 我が紐に付く香具山の 古りにし里を忘れむがため」という家持の歌は、有名な「あをによし 奈良の都は咲く花の にほふがごとく今盛りなり」という小野老の歌に返したものだが、桜の花との対比ではまったく分がない。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 


ヤブカンゾウ(薮萱草)
多年草
北海道/九州の道ばたや土手、林のふちなどに多い。有史以前に中国から帰化したと考えられている。根はところどころ紡錘状にふくらむ。葉は長さ40/60cm、幅2.5/4cmの広線形。花茎は高さ0.8/1mになり、直径約8cmの橙赤色の花を数個つける。花は八重咲きで、雄しべと雌しべが弁化して八重咲きになる。完全に弁化していない雄しべもまじっている。花筒は長さ約2cm。結実しない。花期は7/8月。(野に咲く花)
学名は、Hemerocallis fulva var. kwanso
ツルボラン科ワスレグサ属
似た花にノカンゾウがある。

 

忘れ草の和歌

  忘れ草 我が紐に付く香具山の 古りにし里を忘れむがため    大伴旅人    巻3-0334
  忘れ草 我が下紐に付けたれど 醜の醜草言にしありけり      大伴家持   巻4-0727
  我が宿の 軒にしだ草生ひたれど 恋忘れ草見れどいまだ生ひず 柿本人麻呂歌集  巻11-2475
  忘れ草 我が紐に付く時となく 思ひわたれば生けりともなし    作者不詳   巻12-3060
  忘れ草 垣もしみみに植ゑたれど 醜の醜草なほ恋ひにけり    作者不詳   巻12-3062


ピンクのチダケサシで吸蜜するスジグロシロチョウ

2019年08月10日 06時12分00秒 | 

ピンクのチダケサシにスジグロシロチョウが羽根を休めていた。この時期の野草園にはチダケサシがいたるところで花を開いていて、蝶は次から次へと蜜を吸うために花を訪れていた。蝶の写真をとろうとたくさんの写真を撮ったが、これは成功した一枚。ひらひらと舞っている写真もそれなりによいのだが、やはり静止した画像がいいかな。

(2019-07 東京都 調布野草園) 

 

 


ほんのりと薄い青が涼やかにみえるブルーバード(槿シリーズ02)

2019年08月09日 11時02分10秒 | 

ブルーバードは、名前から予想されるほど青いムクゲではないようだ。ムクゲに青は難しいのだろうか。いずれ紹介する「紫盃」という品種のものが、とくに青くみえる。それでも白やピンクの品種が多い中では、ブルーバードのほんのりと薄い青が夏の日差しで涼やかにみえる。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

 



ムクゲ ブルーバード
アオイ科の落葉低木
ムクゲの原産地はインド、中国でブルーバードはアメリカで作出された園芸種
学名はHibiscus syriacus 'Blue Bird'

ごくごく薄い青紫の花が涼しげに咲いている。
強い光のもとでは薄いピンクに見えることもある。
かつてムクゲの中で一番青に近い色と言われていたそうな。
今はブルーサテンという品種が一番青に近いらしい。 

肉厚な葉がいかにも浜辺の植物らしいハマゴウ

2019年08月09日 06時22分12秒 | 

海浜植物として有名なハマゴウ。浜で生える匂いのある植物という命名。浜で這うからハマハイだという名付けもある。平地ではあまりみかけないが、植物多様性センターでは地面に這いながら、多くの花をつけていた。このように土壌の質を工夫すれば、海浜の植物も生育できるわけだ。両面に微毛が密生する肉厚な葉がいかにも浜辺の植物らしい。果実は球形の核果で、水に浮き海流に流されるというのも、浜辺の植物らしい繁殖のための工夫だろう。波媒花というわけだ。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

ハマゴウ(浜栲、Vitex rotundifolia)はハマゴウ属の常緑小低木で砂浜などに生育する海浜植物。別名ハマハイ、ハマボウ(アオイ科にもハマボウがある)。

特徴
茎は地面を這い、半ば砂に埋もれて伸びる。枝は4稜があり、直立または斜上し、高さは30-70cmになる。葉はふつう単葉で、まれに3出複葉になるものもあり、対生する。葉身は楕円形から広卵形で、長さ3-6cm、幅2-4cm、縁は全縁、裏面は白い毛で被われる。葉柄は長さ5-10mmになる。

花期は7-9月。枝先に円錐花序をつけ、芳香のある青紫色の花をつける。萼は長さ3-4mmの鐘形で5歯がある。花冠は長さ12-16mmになる漏斗状で、5裂し唇形になり、下部の裂片が他の裂片よりはるかに大きい。雄蕊は4個、花柱は1本で花冠を突き抜け、柱頭が2裂する。果実は球形の核果で、水に浮き海流に流される。 

分布と生育環境
日本では、本州、四国、九州、琉球に分布し、海岸の砂浜に群生する。内陸の淡水湖である琵琶湖沿岸にも生育する。世界では、中国、朝鮮、東南アジア、ポリネシア、オーストラリアに分布する。

砂が吹き飛ばされて何mも横に伸びた茎が露出する場合もある。砂に埋もれても負けずに伸びるのは海浜植物として重要な適応である。

利用
果実は蔓荊子(マンケイシ)と呼ばれる生薬で鎮痛、鎮静、消炎作用がある。蔓荊子散などの漢方薬に配合される。

全体にユーカリの葉に似た芳香があり、古くは香として用いられたため「浜香」と呼ばれたといい、また「浜這」の意ともいう。


細身で白一色のシンプルなデザインがすてきな玉兎(槿シリーズ01)

2019年08月08日 10時38分23秒 | 

紫陽花シリーズが終わったので、次は槿シリーズ。七月に神代植物公園のムクゲ園で開花していた玉兎。少し細身で白一色のシンプルなデザインがすてきだ。自分の家の庭でこんな花が毎日咲いたら、楽しいだろうなぁ。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

 

 

ムクゲ‘玉兎’
あまり通販で植物を買ったことはないんですが、昨年の趣味の園芸8月号のムクゲの回のトビラにもなっており、欲しくてたまらなかった玉兎を通販で購入。赤い芯が入らない白花で細弁なので、ある種のクレマチスのような繊細な雰囲気があります。茶花にも使われるといいます。蕾も多く、早速鉢まししましたが、環境の変化もなんのそので、次々に開花。


もこもこと互生する肉厚の葉がかわいいタイトゴメ

2019年08月08日 06時02分19秒 | 

タイトゴメはマンネングサの仲間のうちでも、海岸に自生する植物。もこもこと互生する肉厚の葉がかわいい。大唐米の名は、この葉が米の形に似ていることによるのだという。写真は神代植物公園の植物多様性センターで写したもの。海岸岩地エリアで咲いていた。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

 

 

タイトゴメ

タイトゴメ(大唐米)は、海岸の岩場に群生して自生するバラ目ベンケイソウ科マンネングサ属の多年草です。 初夏~夏、小さな黄色い五弁花を咲かせます。葉は、多肉質で緑色をしており、互生して付きます。 タマツヅリ(学名:Sedum morganianum)と同じセダム属の仲間なので、姿形がセダム(Sedum)と似ています。 同科同属で白花を咲かせる シロバナタイトゴメ(白花大唐米) もあります。
一般名:タイトゴメ(大唐米)
学名:Sedum oryzifolium
分類名:分類名:植物界被子植物門双子葉植物綱バラ目ベンケイソウ科セダム属(マンネングサ属)
草丈:5~10cm 開花期:5~7月 花色:黄 花径:0.5~1cm


野性味のある白のノリウツギ(紫陽花シリーズ36)

2019年08月07日 11時01分04秒 | 

紫陽花シリーズの最後はノリウツギ。名前はウツギだが、アジサイの仲間である。園芸種はピラミッド・アジサイとしてよく知られている。しかし山中に自生する花の野性的な力強さと素朴さも捨てがたい。先日訪れた蓼科の山の中でも大きな花を咲かせていた。ノリの名は和紙の製造において樹液を糊として使ったからだという。

(2019-06 東京都 神代植物公園) 

 

 


ノリウツギ(糊空木、学名:Hydrangea paniculata )は、アジサイ科アジサイ属の落葉低木。


特徴
樹高は2mから5mくらいになる。木であるが、先端がやや倒れて他の木により掛かり、つる植物のように見えることもある。葉に葉柄があり、枝に対生し、葉の形は卵形から楕円形、縁は鋸歯状。花期は7月から9月で、枝の先に白色の小さな両性花が円錐状に多数つき、その中に花弁4枚の装飾花が混ざる。

樹液を和紙を漉く際の糊に利用したため、この名がついた。

新エングラー体系では、ユキノシタ科アジサイ属になっているが、クロンキスト体系ではユキノシタ科の木本類をアジサイ科として分離独立させている。また、APG体系においてもアジサイ科に分類される。

分布と生育環境
北海道、本州、四国、九州に分布し、山地の林縁などに自生する。よく目立つ花で、またハナカミキリやハナムグリなどの訪花性の昆虫が多く集まる。

花は枯れてからも茶色くなって翌年まで残る。そのため、和歌山県南部の山間部では娘を嫁に出すときに「ノリウツギの花が無くなるまで帰るな」と言って送り出す地域があるという。


赤紫のフサフジウツギの蜜を吸うアカタテハ

2019年08月07日 06時07分10秒 | 

昨日につづいて、花と花で蜜を吸う蝶の組み合わせ。今回はフサフジウツギとアカタテハ。フサフジウツギは匂いが強く、蝶たちも好んで集まってくる。英語名はバタフライ・ブッシュと呼ぶほどだ。以前にアップしたトウフジウツギの類縁だが、こちらのほうが花が小さく、群れて咲くので、華やかだ。蝶ならずとも近くによってみたくなる。白い花もあるようだが、白だと見分けるのに苦労しそうだ。

(2019-07 東京都 神代植物公園) 

 

フサフジウツギ(房藤空木)
落葉低木
中国原産の栽培植物が逸出したものと考えられていたが、本州中部の石灰岩地に自生する在来植物とする説もある。日本で見られるフジウツギ属のなかではもっとも大形で、高さ3mに達するものもある。花筒の外面に毛や腺点がほとんどなく、葉の裏面に軟らかい星状毛が密生することなどが特徴。花は香りがよい。花期は6-9月。(樹に咲く花)
学名は、Buddleja davidii
ゴマノハグサ科フジウツギ属
フジウツギ 花筒外面に星状綿毛密生、葉裏面は淡緑色星状毛散生、葉柄基部に托葉状付属体。
フサフジウツギ 花筒外面に毛や腺点がほとんどない、葉裏面に星状毛密生、葉柄基部に托葉状付属体。
トウフジウツギ 花筒外面に星状毛綿毛がなく腺点が密生。葉柄基部に托葉状付属体がない。葉や果実がフサフジウツギの半分くらい。