鹿沼岩山・次石山登頂(4)
(山旅スクール挑戦コース)
2006年11月21日(火)~22日(水)
第2日目 11月22日(水) (つづき)
■キレットを越える
次石山へ到着した私達は,3人のガイドがキレットから岩頭までのコースにロープ張りをしている間,次石山の山頂で待機し続ける。25分ほど待った後,ガイドから,私を含む10名の先発隊に,順次出発するように伝えられる。
13時27分,次石山山頂を出発する。すぐに鋭く落ち込む下り坂になる。ガイドが設置したロープに,2本のカラビナを掛けて,1区間に1人ずつ入って慎重に下る。所々に小さな岩場があるので,後ろ向きになって,3点確保に留意しながら通過する。
キレット直前に少し長い岩場がある。この岩場の手前にガイドが1人居て,私達を指導する。ここで,スリングをロープにマッシャー結びをして,自分のハーネスに装着している安全環付きカラビナに連結する。後ろ向きになって,一歩一歩,足場を確認しながら慎重に下降する。
私は岩場が苦手である。しかし,苦手ながら,これまで何回かストーンマジックや日和田山で初歩的な岩稜演習を繰り返しているので,この現場でも特段怖いとも感じないし,難しいとも思えない。苦手とはいえ,何回も何回も繰り返している内に,ある程度は上達するものだなと実感する。
■岩頭の頂上に立つ
キレットを越えると,目の前には切り立った岩頭が聳えている。
マッシャーの結び目をずらしながら,岩を登り始める。少し登ったところに,ほぼ垂直に近い5メートルほどの岩壁がある。下の方には多少なりとも足場があるが,上の部分には小さな足場しかない。上から登山靴のつま先が入るほどの大きさのクサリがぶら下がっている。このクサリにしがみ付くようにして,体を支えながら,やっとの思いで頭上の岩の裂け目に体を持ち上げる。さらに裂け目から這い出すのに,腕力を使いながら,無理矢理,両足を持ち上げる。そんな動作をしている間に,
「登るのがこんなにシンドイところを,帰りにはどうなるんだろう・・・」
と心配になる。
<岩場を登る>
<大きな輪のクサリ>
この岩壁を越えると,後はそれ程困難なところはない。型通りに3点確保に留意しながら,暫く登り続ける。そして,岩頭の頂上を半周するようにトラバースして,11時12分,岩頭の頂上に到着する。
岩頭の頂上は意外に広い。東西に30メートル,南北に5~6メートルもあるだろうか。頂上の西側に立つと,今,通過したキレット越えに次石山が見える。私より先に登った連中が,頂上からキレットを覗き込んでいる。後発の連中がキレット付近で苦労しているのを興味深げに見入っている。
キレットの向こう側で,多くの女性参加者に人気のアイドル系のガイドが盛んに指導している姿が気の間にチラチラと見えている。何人かの女性が黄色い声を上げて,手を振っているが,指導に熱心なガイドは気が付いていないようである。 岩頭の東側にはかなり大きな石の祠が祀ってある。こんな大きな石の祠を,一体,どうやって,ここまで運び上げたのか不思議である。祠の先には栃木の平野が広がっている。素晴らしい景色である。こんな日溜まりでノンビリと過ごすものも良いものだなと思う。
■次石山へ戻る
私達先発隊は,頂上の日溜まりで,後発隊が到着するまで,のんびりと待っている。暫くすると,後発の連中が,次々と山頂に到着する。
12時01分に最後の人が到着する。同時に,先発隊の最初の人が下山を開始する。
岩頭からの下りは,意外に楽であった。先ほど登るのに苦労した5メートルの岩壁も,大きな輪のクサリを利用して案外簡単に降りることができた。キレットを越えて最初の岩場を登り切るまでは,マッシャーで安全確保をする。それから後は,ロープにカラビナを掛けながら登り続ける。そして,13時03分に再び次石山の山頂に戻る。ここで,後発隊の全員が戻ってくるまで待機する。
次石山の山頂で,落ち着くと,これまでの興奮が次第に冷めてくる。それと同時に,凄い岩山へ登ったという満足感が心の中で沸々と涌いてくる。私ごときの老いぼれを,こんなに素晴らしいところに登らせてくれたガイドに心底から感謝したくなる。
■人が悪いガイド
13時27分に次石山を出発し,主稜に沿って北上する。途中で,幾つもの尾根が主稜に合流し,また分流する。その度に地形図と首っ引きでルートファインディングの練習を行う。昨夜,ガイドが配った資料を,眠たがって,ろくに読んでいない私は,ガイドの意図していることが,なかなか飲み込めないで往生する。
途中で,稜線の途中から北方向に延びる稜線に移るところで,ガイドが,
「皆さん勝手に行き先を決めて下さい・・・」
という。私は地形図を頼りに,それらしいところまで行ったが,その先が高さ10メートルほどの断崖になっている。私は断崖を降りることはできないので,ここは行き止まりだと判断した。ならば,手前の稜線を少し下って,目的とする稜線までトラバースしようと思ったが,途中に急な斜面があって,トラバースは危険だと判断した。万事休す。 私は「正解はない」と判断して,
「お手上げです・・・・解はありません・・」
とギブアップする。
すると,何と!
私が降りられないと判断した断崖を下るのが正解であった。そういえば,今回は岩稜ばかり歩いていた。
ガイドが断崖にロープを垂らす。そのロープを頼りに1人ずつ慎重に降りる。
■鉄塔巡視路を頼って下山
そろそろ日が傾いてきた。16時までに麓へ戻らなければ,帰りしなに温泉を楽しむ時間がなくなる。ルートファインディング実習で,たっぷりと時間を費やしたので,温泉は諦めなければならないかもしれない。
来たに向かう岩稜をたどって先へ進む。途中,特に危険ではないが,小さな岩場や,ヤセ尾根が連続する。15時35分,鉄塔のある372m峰の手前にある鞍部に到着する。ここで,後発部隊が到着するまで,30分ほど待つ。
16時08分,そろそろ薄暗くなる頃,ヘッドランプを用意して出発する。本来ならば,ここから尾根筋を通って,城山(390m)に登り,下山する予定であったが,辺りが暗くなり始めたので,エスケープルートの鉄塔巡回路を利用することになる。巡視路に沿って,ほぼ水平に次の鉄塔までトラバースする。巡視路に入ると途端に歩きやすくなる。ただ,次第に薄暗くなってくるので,林の中ではヘッドランプを点灯する。16時30分に263号鉄塔に出る。途端に林が切れて辺りが明るくなる。そのまま,この鉄塔を通過して,下り坂を辿る。16時43分,ようやく林道に出る。林道をほんの少し下り,16時47分,無事,消防署近くの自動車道に出る。思わずホッとする。
■やっと帰途に…
添乗員が呼んだタクシーがなかなか来ない。待ち時間を利用してクールダウンの体操を行う。その間に火がトップリと暮れる。
17時15分,5台のタクシーに分乗して消防署前を出発。17時34分に東武新鹿沼ホテルに到着する。楽しみにしていた温泉は,時間の都合で中止になってしまった。
ホテルに預けた荷物を受け取った後,電車の発車時間まで自由行動である。私は山旅スクール5期の皆様と一緒に,ホテルから3分ほど歩いたところにあるラーメン屋で塩ラーメンを賞味する。
新鹿沼発19時09分特急「きぬ134号」に乗車して,ようやくホッとする。京浜急行,東海道本線を乗り継いで,22時42分,無事帰宅する。
(つづく)
(山旅スクール挑戦コース)
2006年11月21日(火)~22日(水)
第2日目 11月22日(水) (つづき)
■キレットを越える
次石山へ到着した私達は,3人のガイドがキレットから岩頭までのコースにロープ張りをしている間,次石山の山頂で待機し続ける。25分ほど待った後,ガイドから,私を含む10名の先発隊に,順次出発するように伝えられる。
13時27分,次石山山頂を出発する。すぐに鋭く落ち込む下り坂になる。ガイドが設置したロープに,2本のカラビナを掛けて,1区間に1人ずつ入って慎重に下る。所々に小さな岩場があるので,後ろ向きになって,3点確保に留意しながら通過する。
キレット直前に少し長い岩場がある。この岩場の手前にガイドが1人居て,私達を指導する。ここで,スリングをロープにマッシャー結びをして,自分のハーネスに装着している安全環付きカラビナに連結する。後ろ向きになって,一歩一歩,足場を確認しながら慎重に下降する。
私は岩場が苦手である。しかし,苦手ながら,これまで何回かストーンマジックや日和田山で初歩的な岩稜演習を繰り返しているので,この現場でも特段怖いとも感じないし,難しいとも思えない。苦手とはいえ,何回も何回も繰り返している内に,ある程度は上達するものだなと実感する。
■岩頭の頂上に立つ
キレットを越えると,目の前には切り立った岩頭が聳えている。
マッシャーの結び目をずらしながら,岩を登り始める。少し登ったところに,ほぼ垂直に近い5メートルほどの岩壁がある。下の方には多少なりとも足場があるが,上の部分には小さな足場しかない。上から登山靴のつま先が入るほどの大きさのクサリがぶら下がっている。このクサリにしがみ付くようにして,体を支えながら,やっとの思いで頭上の岩の裂け目に体を持ち上げる。さらに裂け目から這い出すのに,腕力を使いながら,無理矢理,両足を持ち上げる。そんな動作をしている間に,
「登るのがこんなにシンドイところを,帰りにはどうなるんだろう・・・」
と心配になる。
<岩場を登る>
<大きな輪のクサリ>
この岩壁を越えると,後はそれ程困難なところはない。型通りに3点確保に留意しながら,暫く登り続ける。そして,岩頭の頂上を半周するようにトラバースして,11時12分,岩頭の頂上に到着する。
岩頭の頂上は意外に広い。東西に30メートル,南北に5~6メートルもあるだろうか。頂上の西側に立つと,今,通過したキレット越えに次石山が見える。私より先に登った連中が,頂上からキレットを覗き込んでいる。後発の連中がキレット付近で苦労しているのを興味深げに見入っている。
キレットの向こう側で,多くの女性参加者に人気のアイドル系のガイドが盛んに指導している姿が気の間にチラチラと見えている。何人かの女性が黄色い声を上げて,手を振っているが,指導に熱心なガイドは気が付いていないようである。 岩頭の東側にはかなり大きな石の祠が祀ってある。こんな大きな石の祠を,一体,どうやって,ここまで運び上げたのか不思議である。祠の先には栃木の平野が広がっている。素晴らしい景色である。こんな日溜まりでノンビリと過ごすものも良いものだなと思う。
■次石山へ戻る
私達先発隊は,頂上の日溜まりで,後発隊が到着するまで,のんびりと待っている。暫くすると,後発の連中が,次々と山頂に到着する。
12時01分に最後の人が到着する。同時に,先発隊の最初の人が下山を開始する。
岩頭からの下りは,意外に楽であった。先ほど登るのに苦労した5メートルの岩壁も,大きな輪のクサリを利用して案外簡単に降りることができた。キレットを越えて最初の岩場を登り切るまでは,マッシャーで安全確保をする。それから後は,ロープにカラビナを掛けながら登り続ける。そして,13時03分に再び次石山の山頂に戻る。ここで,後発隊の全員が戻ってくるまで待機する。
次石山の山頂で,落ち着くと,これまでの興奮が次第に冷めてくる。それと同時に,凄い岩山へ登ったという満足感が心の中で沸々と涌いてくる。私ごときの老いぼれを,こんなに素晴らしいところに登らせてくれたガイドに心底から感謝したくなる。
■人が悪いガイド
13時27分に次石山を出発し,主稜に沿って北上する。途中で,幾つもの尾根が主稜に合流し,また分流する。その度に地形図と首っ引きでルートファインディングの練習を行う。昨夜,ガイドが配った資料を,眠たがって,ろくに読んでいない私は,ガイドの意図していることが,なかなか飲み込めないで往生する。
途中で,稜線の途中から北方向に延びる稜線に移るところで,ガイドが,
「皆さん勝手に行き先を決めて下さい・・・」
という。私は地形図を頼りに,それらしいところまで行ったが,その先が高さ10メートルほどの断崖になっている。私は断崖を降りることはできないので,ここは行き止まりだと判断した。ならば,手前の稜線を少し下って,目的とする稜線までトラバースしようと思ったが,途中に急な斜面があって,トラバースは危険だと判断した。万事休す。 私は「正解はない」と判断して,
「お手上げです・・・・解はありません・・」
とギブアップする。
すると,何と!
私が降りられないと判断した断崖を下るのが正解であった。そういえば,今回は岩稜ばかり歩いていた。
ガイドが断崖にロープを垂らす。そのロープを頼りに1人ずつ慎重に降りる。
■鉄塔巡視路を頼って下山
そろそろ日が傾いてきた。16時までに麓へ戻らなければ,帰りしなに温泉を楽しむ時間がなくなる。ルートファインディング実習で,たっぷりと時間を費やしたので,温泉は諦めなければならないかもしれない。
来たに向かう岩稜をたどって先へ進む。途中,特に危険ではないが,小さな岩場や,ヤセ尾根が連続する。15時35分,鉄塔のある372m峰の手前にある鞍部に到着する。ここで,後発部隊が到着するまで,30分ほど待つ。
16時08分,そろそろ薄暗くなる頃,ヘッドランプを用意して出発する。本来ならば,ここから尾根筋を通って,城山(390m)に登り,下山する予定であったが,辺りが暗くなり始めたので,エスケープルートの鉄塔巡回路を利用することになる。巡視路に沿って,ほぼ水平に次の鉄塔までトラバースする。巡視路に入ると途端に歩きやすくなる。ただ,次第に薄暗くなってくるので,林の中ではヘッドランプを点灯する。16時30分に263号鉄塔に出る。途端に林が切れて辺りが明るくなる。そのまま,この鉄塔を通過して,下り坂を辿る。16時43分,ようやく林道に出る。林道をほんの少し下り,16時47分,無事,消防署近くの自動車道に出る。思わずホッとする。
■やっと帰途に…
添乗員が呼んだタクシーがなかなか来ない。待ち時間を利用してクールダウンの体操を行う。その間に火がトップリと暮れる。
17時15分,5台のタクシーに分乗して消防署前を出発。17時34分に東武新鹿沼ホテルに到着する。楽しみにしていた温泉は,時間の都合で中止になってしまった。
ホテルに預けた荷物を受け取った後,電車の発車時間まで自由行動である。私は山旅スクール5期の皆様と一緒に,ホテルから3分ほど歩いたところにあるラーメン屋で塩ラーメンを賞味する。
新鹿沼発19時09分特急「きぬ134号」に乗車して,ようやくホッとする。京浜急行,東海道本線を乗り継いで,22時42分,無事帰宅する。
(つづく)