<トーミノ頭から中通りを下る>
浅間連峰周遊:第2日目(3):烈風の第2外輪山トーミノ頭
(丹沢塔ノ岳常連)
2013年10月8日(火)~10日(木)
第2日目;2013年10月9日(水) 曇・強風
<ルート概念図>
<早めの昼食>
■予定通りトーミノ頭を目指す
途中から3人と2人のチームに分かれて行動していた私たちは,TBさんの良く通る声のお陰で,予定より早い場所,Jバンド分岐で合流することができた.最初は火山館で合流する予定だったので,早く合流できただけ,案内役の私も随分ときが楽になる.
Jバンド分岐から一緒に下山し続けて,11時04分,草すべり分岐に到着する.
この時点では,私は当初の予定を変更して,火山館に戻るつもりでいたが,
「このままトーミノ頭経由で車坂峠へ行きましょう.」
という意見が出る.それはもう予定通りに車坂峠へ向かうのが良いに決まっているが,この時点で,私には二つの懸念があった.
その第1はトーミノ頭付近の強風である.3人グループが登頂を諦めた前掛山分岐よりは標高は低いが,それでもなお山頂付近の露岩帯は,距離はほんの少しだが,かなりの強風が吹き荒れているに違いない.果たして大丈夫かな…
第2は,先ほど体力を消耗して途中で浅間山登頂を諦めたOTさんの体力である.私は,
「ここからトーミノ頭までの標高差は350メートルほどありますよ…体力は大丈夫ですか?」
とOTさんに何回も念を押す.
「ユックリ登れば大丈夫ですよ…!」
とのお返事である.私は.
「凄く急な登り坂ですよ…」
と,なおも念を押す.それでも大丈夫との返事だったので,私も当初予定通り,トーミノ頭を目指そうと決心する.ただし,何か不都合があったら直ぐに引き返しますよと同行の皆さんに同意を得る.
<再び草すべり分岐へ>
■谷間の紅葉
草すべり分岐からトーミノ頭へ向けて歩き出す.
すぐに緩い傾斜の下り坂になり,クマササに覆われた谷を越える.相変わらず濃い霧が湧いているが,谷筋の紅葉が綺麗である.
高い所から,かなり強い風が吹き降りてくる.OTさんが,
「ここは風の通り道だね…」
と呑気なことを言っておられるが,私はトーミノ頭の強風がこことは比較にならないほど強いだろうと思っている.そのために,ついつい,大丈夫だろうかとついつい愚痴が出る.
<谷間の紅葉>
■早めの昼食
谷を越えると,第2外輪山火口壁の急登が始まる.
足が速い人ばかりなので,なかなかゆっくりとは歩いてくれないので,どうしてもOTさんが置いてきぼりになりそうになる.
「これはまずいな…」
と思いながらも,ついつい私も速歩になってしまいがちである.それでも一番足の遅い人に合わせて登り続ける.
11時44分,坂の途中で,OTさんが,突然,立ち止まり,近くのクマササの中へ座り込む.
「シャリバテなので,ちょっと食べさせて…」
とのこと.
“なるほどシャリバテだったのか”
言われてみると,少々早いが昼飯にしても良い時間である.風さえ吹かなければ,この先,座る場所のあるトーミノ頭が昼食を摂るのに一番良い居場所である.でも,今日は間違いなく強風が吹いているので,到底,無理.そうだとすれば,ここで昼食を摂った方が良い.そんな判断もあって,全員ここで昼食を摂ることにする.
<坂道の途中で昼食>
<急坂を第2外輪山の尾根へ向かう>
■黒斑山の案内標識
15分ほどで昼食を終える.
私は,もう一度,
「ここからならば,まだ十分に引き返せますよ…(体力は)大丈夫ですか」
と念を押す.
{シャリが入ったから大丈夫」
とのお返事だったので,再びトーミノ頭を目指して歩き出す.
12時40分,黒斑山・湯の平の案内標識の前を通過する.
<黒斑山・湯の平の標識>
■急登が始まる
案内標識を過ぎると,いよいよ急登が始まる.ここは第二外輪山の火口を直登する道なので,当然急登になる.
先へ進むにつれて,ますます急坂になり,途中から一寸した岩稜も混じるようになる.
これまでビデオ撮りで,先頭を歩いていたMGさんと私が,ちょっとした切っ掛けで順番が入れ替わる.
今昇っている登山道の先がどうなっているか気になっている私は,MGさんにOTさんのケアーをお願いして,一行より先に歩くことにする.今回の旅行で,始めて自分の経済速度で歩く機会でもある.私は,かなりの速度で,先の方まで歩いてみる…,と,言うよりは,このコースを歩くのは数年ぶりのことなので,この先の登山道の様子が気になって仕方がない.もし,登山道が荒れていたら引き返す積もりである.
<この辺りから先が急登の始まり>
■霧の合間に外輪山が見える
何時もの塔ノ岳モードで登り始める.たちまちの内に,後続の方々との距離が開いて,視界から消える…もっとも霧で視界が縮まっている.
確かに登山道は荒れているが,通れないほどでもない.途中に結構変な所もあるが,いくら披露しているとはいえ,北アルプスの有名所はすべて踏破している.痩せても涸れても,山旅スクールの卒業生だ.技術的には一番未熟と思われる私が通れるのだから問題ないと判断する.唯一の問題は体力だ.でも,ゆっくり焦らずに登れば大丈夫だなと判断する.
山頂は近付けば近付くほど遠くに逃げていくような感じがする.でも,12時40分頃,ちょっと霧が薄れた瞬間に,切り立った外輪山の一部が姿を現す.あの山の並びにトーミノ頭がある.もう少しで外輪山の山頂に突き上げる筈である.
やがて,一寸迷いやすい2差路に突き当たる.私は,ここで,一行が登ってくるのを待つ.
暫くすると,例によって,下の方から,風の音に混じって,TBさんが私を呼んでいる声が聞こえてくる.私は.
「オーィ…一本道だから,そのまま登ってきて…」
と大声で返事をする.ただ,私の声が皆様に届いたかどうかは分からない.
一本道なので,ユックリでもジワリジワリと登ってきてもらえば,間違いなく私が居る場所に到着するはずである.
<霧の合間に外輪山が見える>
■漸く外輪山の尾根に到着
5~6分も待っただろうか.MGさんに励まされながら,OTさんも喘ぎながら分岐に到着する.もちろんその他の方々が余裕綽々である.
岩肌が大きく抉れた所を左手に迂回するように案内してから,私は斥候の役割を果たすために,一行より先に塔ノ岳速度で更に登り続ける.
ここから先は,勾配は極めて急だが,迷いやすい所も,危険な所もないようである.数年ぶりに歩くコースだが,どうやら大丈夫のようである.
12時36分,私は無事に第2外輪山の尾根に突き上げる.この辺りは周りに木が生えているので吹き荒れる風も幾分和らいでいる.ジッとしていると,少々寒いが何とか休憩を取ることができる.
「オ~ぃ…! 稜線に出たぞ,もう少しだぞ」
と,後続の皆さんを励ますが,風の音に吹き消されて,一行には届かないかもしれない.届かなくても良い.私は何とかもう少しで稜線だということを伝えたい発露として,聞こえる聞こえないは別にして,叫びたかった.
12時45分,MGさんに励まされながら,OTさんが稜線に到着する.他の皆様は例によって余裕綽々である.
OTさんの顔色が青ざめている.如何にも疲労困憊という様子である.でも,ここまで来たら,もう殆ど登り坂はなく,下り坂が大半である.私はこの荒れた気象から見て,ここから車坂まで,いくつかのコースの中から,中コースを下ることに決める.
“良かった…!”
<烈風吹き荒れるトーミノ頭から中コースへ>
■最大の難所トーミノ頭
12時51分,TBさんを先頭にトーミノ頭へ向かう.
下の写真の前方に.霧に霞んで見えている岩塊がトーミノ頭である.そこだけは樹林帯から露出していて,激しい風が吹き荒れている.ここで吹き飛ばされたら350メートル崖下まで真っ逆さまである.
「皆さん,距離は短いけれども,今日最難関の難所を通過します.注意して通過しましょう」
と呼びかける.
案の定,樹林帯を抜けると,逆巻く烈風が吹き荒れている.全く立っていることは不可能である.しゃがみ込んだままの姿勢で,トーミノ頭の岩の間をソロリソロリのザリガニのように這いつくばって進む.衣類が風に煽られてバタバタと大きな音を立てる.リュックが帆船の帆になったように風をはらんで躰を引っ張る.生きた心地がしないって,こんな状態のことをいうのかな…なんて,余計なことを考える.その途端に,
“そんな馬鹿なことを連想している間は,まだ余裕があるな”
と自己判断するが,そんな自己判断をするだけ,お前さんは神経がうわずっているんだと,すぐにもう一人の私が冷静に判断する.
まあ,何れにしても,烈風に煽られながらの行動は,ほんの数分で終わる.トーミノ頭を廻り込んで,車坂に向かう下り坂の樹林帯に入ると,今までの烈風がうそのように,静かになる.
<いよいよ烈風のトーミノ頭だ>
■中コースに入る
トーミノ頭から下り坂に入る頃には,気分的にも随分と余裕が持てるようになる.
先ほどまで,全力を尽くして登っていたOTさんも元気である.すぐに深い森林の中に入り込む.ここまで来ると,さしもの風も全く静かになる.
トーミノ頭から下りはじめて直ぐに,表コースとの分岐に到着する.今日は迷わずに中コースを選ぶ.中コースの登山道は,多少荒れている所もあるが,順調に下り続ける.今日は早め早めに行動しているので,時間には十二分の余裕がある.ここから先は,安全に注意しながら,ノンビリと風景を楽しみながら,歩き続けようということになる.
13時40分頃,中コース唯一の登り坂に差し掛かる.でもこの辺りまで下ると登山道も随分と歩きやすいように整備されているので,歩くのも大変楽である.外輪山の登り坂で苦労されたOTさんも,余裕を持って登っておられる.
<中通り唯一の登り坂>
■車坂峠側の紅葉も始まっている
相変わらず霧が立ちこめているが,車坂峠側の紅葉も随分と綺麗になり始めている.
足許は多少ザレているが,決して歩きにくいということはない.私たちは,紅葉を愛でながら,気分的にも,体力的にも,かなりの余裕を持って,下り続ける.
実のところ,サッサと下ったら,余りに早く車坂峠に着いてしまう.
<車坂峠側の紅葉>
■車坂峠に到着・バンザイ!
13時45分頃,裏コースと合流する.
この辺りから先は,車坂峠に遊びに来た人達の散策コースにもなっている所である.道路は殆ど平らになり,進行方向右手には,樹林の間から高峰高原スキー場の施設などが見え隠れするようになる.
先ほどまでの烈風が嘘だったような長閑な散策路が暫く続く.
14時00分,私たちは無事車坂峠に降り立つ.
“やれ,やれ,…やっと到着したぞ!”
安堵!
予定通り行動出来て本当に良かった!
車坂峠の案内板の前で,記念写真を撮る.そして,ちょっとの間,この辺りでゆっくりしてから,今日の宿泊場所の高峰高原ホテルにチェックインしよう.
<車坂峠で記念写真>
(つづく)
前の記事
http://blog.goo.ne.jp/flower-hill_2005/e/4248350a2fb463f5ba062d29584c835e
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