リリースされてたのに気付いてなかった。
CYHRAの『THE VERTIGO TRIGGER』。
元AMARANTHのジェイク・Eと、元IN FLAMESで現THE HALO EFFECTのイェスパー・ストロムブラードによるバンドの3rd。
スウェディッシュメタルの持つ、鋭利且つザラついた質感のギターサウンドと、ジェイクの歌唱とポップセンスが融合したHR/HMであり、曲によっては凡そメタルと言い難いほどのものがあったりもする。
アルバムリリースされる度に、作曲に於けるジェイク主導感が強くなっているが、エレクトロニクス要素を加えていながらフックの焦点を忘れがちな曲にしているよくあるバンドと違っている点は、ヴェテランであるメンバーだからこその個性ある重みの利いたサウンドメイキングと、ジェイクによる歌唱によるところがやはり大きい。
前作『NO HALOS IN HELL』は、そんなメタルとポップの融合と拮抗の境界性を上手く描いた、傑作といっても差し支えないアルバムだった。
今回、メンバーに元THE CROWNのマーカス・スーネソンが加入。
アルバムでも早速曲作りに参加し、その存在感をしっかりと顕示。
前作以上にジェイクのポップセンスが前に出てくるような楽曲陣の中で、ヘヴィなギターを随所に入れ込み浮足立たせない、「コレはあくまでもハードな音楽だ」と黙認させているサウンドは、やはりスウェーデン人であるマーカスの貢献がここで活きていると思う。
で、
そうなってくると「あれ、イェスパーは?」ってなるんだが、今回彼はアルバム制作上ではベーシストとしての役割となっている。
まァ、IN FLAMES時代から知っている人からすれば、彼は中々に「難しい気質」な人間である為、この立ち位置の変動は、何とも今後の不穏を感じさせられると思ってしまうよな。
CYHRAの後に結成されたTHE HALO EFFECTでは、メロデスファンが望む様なギター弾いてるワケだし。
ただ、
この辺りの動きは、CYHRAに於ける活動では「起こり得る事」としてメンバーも捉えているらしく、その一環の中で、マーカスが加入する事になったそうだ(つまり、場所によってはイェスパーは不在になってしまっていた、という事)。
何よりも過去のインタヴューでジェイクが「このバンドで、自分達はイェスパーを守っているんだ」という発言。
元々、友人同士として始める事になったこのバンドは、そんなイェスパーの挙動を気遣う為に、当初はライヴ活動を活発に行う様な真似をしないようにしていた(とは言うものの、このレヴェルのバンドがツアーを期待されないワケがなく、それなりに規模は拡大していた様な気はするし、マーカス加入はそこが最大の理由だろう)。
存在が必要、という事だろう。
ビジネスとしての間柄以上に、友人同士でいられる活動のできるバンドとして。
酷な話、現状でイェスパーが居なくなっても、CYHRAは機能する。
でも、ジェイクの発した言葉が事実であれば、このバンドに居続けてほしいと、個人的にも思う。
今回のアルバムでは、イェスパーは作曲に一切関与してない。
だが、いずれまた、彼がこのバンドで作曲に関与する可能性は大いにあり得る。
その時に生じるマジックの衝撃を、待ち望みたいモンだね。