イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

Grossetoで未公開のBotticelli(ボッティチェリ)ーGrosseto

2020年10月10日 16時18分03秒 | Mostra(展覧会)in Italia

個人的にBotticelli(ボッティチェリ)はあまり好みではないのだが、なぜかここ数日ネット上の記事が目につく。
今日は「Botticelli(ボッティチェリ)の未公開の作品がGrosseto(グロッセート)の特別展に」という記事。
GrossetoはFirenze(フィレンツェ)と同じToscana(トスカーナ州)に属するが、Firenzeからは南へおよそ113キロ海に面している。
そこで今月23日から2021年1月10日まで、初一般公開されるのがこの作品。

Botticelli(ボッティチェリ)のTondo(円絵)
工房の作品か?とも言われているが。
 描かれているのはMadonna con Bambino, San Giovannino e San Gabriele Arcangelo (tempera su tavola, diametro cm.85)
聖母子と洗礼者ヨハネと白百合の花を持った大天使ガブリエルが描かれたテンペラの板絵で、直径85センチ。
この作品は1985年ロンドンのChristie's(クリスティーズ)でオークションにかけられた。
そこまではFondazione Federico Zeriのカタログにも出ている。(参照
そしてそこで購入したのが、イタリア人コレクターのGianfranco Luzzettiで、購入後はプライベートコレクションとして彼のお屋敷に飾られていた。
この人、古美術商らしいのだが、彼のプライベートコレクションを求めて、ルーブル美術館の担当者が訪ねてきたことも有るらしい優良コレクターの1人なのだが、彼は頑としてそれを売らず、コレクションを生地に寄贈することを望んでいた。
なぜルーブルでなく、フィレンツェではなく、というとこれは地元愛。
「Grossetoには絵画館がないから」という理由だそうだ。
そしてなかなかGrosseto市との折り合いがつかなかったらしいのだが、ようやく彼の希望がかない、昨年12月地元GrossetoにMuseo Collezione Gianfranco Luzzetti(ジャンフランコ・ルッゼッティコレクション美術館)がオープンした。
Antonio Rossellino, Giovanni Fei, Giambologna, Passignano, Rutilio Manetti, Pier Dandini, Camillo Rusconi Corrado Giaquintoなどの作品を所蔵している。
https://www.clarissegrosseto.it/gianfranco-luzzetti-collezione

で、今回初めて一般公開されるこの作品だが、クリスティーズのカタログには「ボッティチェリの工房作」とあるが、聖母の顔や手の曲げの非常に優美なところなどクオリティーの高い場所は、サインが無くてもマエストロの手によるのではないかと考えられている。
BotticelliはこのTondo(丸型)に聖母子、その他聖人だったり天使だったりという構図で何枚も描いていて、どれも似たような見解が述べられている。

例えばPalazzo Pitti(ピッティ宮殿)にあるこちら。

上の作品とそっくり。
こちらにはMadonna con Bambino, San Giovanni Battista bambino, San Michele Arcangelo e San Gabriele Arcangelo (tempera su tavola, diametro cm.115) 
聖母子、洗礼者ヨハネ、剣を持った大天使ミカエルと白百合を持った大天使ガブリエルでテンペラ板絵で直径115センチ。
若干の違いは有れど、よく似てる。
こちらも以前はBotticelliの作品か?と言われていたが、現在では工房作と考えられている。(参考

作品が常設されるならまだしも、この機会だけなら残念だ。
来年1月までにイタリアに行ける可能性はないけど、情報として載せて置こう。
早く自由に移動が出来る日が来ることを切に願いながら、今はいけないイタリアに思いを馳せる今日この頃。

特別展:La bellezza svelata
Un tondo inedito di Botticelli dalla Collezione Luzzetti
A cura di Mauro Papa e Giovanni Gazzaneo
場所:Polo culturale Le Clarisse, Via Vinzaglio 27 - Grosseto
期間:2020年10月23日ー2021年1月10日
   木、金、土、日 10時ー13時、16時ー19時
入場料:2€
詳細:https://www.clarissegrosseto.it/


参考:https://www.clarissegrosseto.it/un-tondo-inedito-di-botticelli-mostra-grosseto




最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます (Maki)
2021-01-28 00:33:03
fontanaさん むろさんお返事ありがとうございます。
ボッテチェリ検索・・溜息が出るほど感動しました。昔、ボッテチェリの図録や全集に掲載されていた美術館を訪ね歩いたことを思い出しました。(ほとんど非公開でした・・がコルシーニ家のコレクションが渋谷で鑑賞できたのは驚きましたが・・)
ローマでのボッテチェリの展示会を調べていたら、パリのジャックマールアンドレ美術館の展示会がヒットした私には、宝の宝庫のようなブログです。オークションの記事を楽しみにしています。(乱文で申し訳ございません)
返信する
ありがとうございます。 (fontana)
2021-01-23 10:24:33
むろさん
コメントありがとうございます。
エネルギーが切れてしまい、最近は別な興味の方向へ行っていますが、NYの入札が来週あるようなので、その辺から復活しようかと思っていますので、またよろしくお願いいたします。
返信する
こちらこそよろしくお願いします。 (fontana)
2021-01-23 10:18:22
Makiさん
初めまして、コメントありがとうございます。
ドイツ在住なのですか?規制が強化されているようですが、私は日本の生ぬるい規制より、ドイツのやり方を非常に好意的に感じています。一刻も早く世界が落ち着き、自由にどこへでも行ける時がくることを祈るばかりです。

昨年は外出規制中にしまい込んでいた資料を引っ張り出して、色々調べたのでご参考になれば幸いです。(昨年末からちょっとサボっていますが…)
これからもよろしくお願いいたします。
返信する
ボッティチェリのこと (むろさん)
2021-01-22 10:43:02
Maki様、はじめまして。上記コメントを投稿した者です。

ドイツにお住まいなのですか? 4~5年前に長年の念願だったベルリンとドレスデンに行く機会があり、聖セバスティアヌス、バルディ家の聖母、ラクツィンスキーのトンド、聖ゼノビウスの4番目の奇跡 など見残していたボッティチェリ作品を見ることができました。

ここのブログの主催者様は以前「ボッティチェリはあまり好きではない」とお書きになっていましたが、最近ボッティチェリ関係の記事を頻繁にご紹介していただき、とても感謝しております。9月から11月頃の記事では、クイエーテやマイアミの聖母戴冠、サザビーズで売られるという「メダルを持つ若者の肖像」とボッティチーニの絵の関連、ヴァザーリ芸術家列伝初版掲載ボッティチェリ伝の翻訳などをテーマにしていただき、私も勉強になりました。(ご興味があればその辺の記事&コメントもご覧ください。)コロナで海外旅行ができないこの時期、将来の旅行のための充電期間と思い、今まで放置していた本や文献のコピーを発掘しているところです。

返信する
はじめまして (Maki)
2021-01-22 01:12:17
ボッティチェリが好きで調べていましたらこちらのページにたどり着きました。
私の夢はボッティチェリの全作品を鑑賞したいです。こちらの展覧会も3月半ばまで期間が延長しましたが、ドイツのロックダウンがいつ終わるか悩ましいところです。コメント欄、イタリアの記事参考になります。日本に帰って本棚を漁りたい気持ちになりました。更新を楽しみにしています
返信する
いえいえ (fontana)
2020-10-11 09:24:50
むろさん
お役に立てて何よりです。
なぜか最近イタリアの新聞などの文化欄にボッティチェリの記事が出ることが多い気がします。また何か見つけたら紹介させていただきますね。
返信する
ボッティチェリの工房作聖母子トンド (むろさん)
2020-10-10 21:18:49
40年以上の間ボッティチェリが最も好きな画家で、追い続けてきた私としては、この絵もとても気になるので、手持ち資料で早速確認してみました。
RizzoliのL’opera Completa del Botticelli(G.Mandel 1967,邦訳集英社1975)とライトボーンの2巻本Botticelli Vol.2カタログレゾネ1978には掲載されていなくて、N.PonsのCATALOGO COMPLETO1989 Rizzoliには上記本文掲載のピッティの絵のバリエーションとして、ピッティの絵の解説中に下記の解説が出ていました(図版はなし)。
Un’altra variante (diam.86) fu messa in vendita nel 1898 dal marchese Ricciardi Milano, ed e forse la stessa che e passata recentemente attraverso la vendita antiquaria di Christie’s (Londra, 5 luglio 1985, lot 65).
(ネット翻訳サイトで私も訳してみました。)

私の評価は、ピッティの絵より少し落ちる工房作か、というところです。この絵の図版は初めて見たので、早速保存しておきます。ご紹介ありがとうございました。

返信する

コメントを投稿