Zooey's Diary

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「ある画家の数奇な運命」

2020年10月09日 | 映画

現代美術界の巨匠と言われるゲルハルト・リヒターの半生を、ドイツ激動の時期に絡めて描いた人間ドラマ。
ナチス政権下のドイツ、叔母エリザベトの影響で幼い頃から芸術に親しむ日々を送っていたクルト。
若く美しいエリザベトは、感受性が豊かすぎる故に精神のバランスを崩して強制入院、その頃のナチの優性主義によって、ガス室に送られる。
成長したクルトは美大に入ってエリーと恋に落ちるが、エリーの父親はナチスの高官で、かつてエリザベトを死に追いやった張本人であった。
クルトはそれを知らないままにエリーと結婚し、芸術活動が制圧される東ドイツから西ドイツへと逃げ、創作に没頭するが…



「善き人のためのソナタ」(06年)のフロリアン・ドナースマルク監督作というので、鑑賞しました。
今も健在のゲハルト・リヒターに交渉した結果、映画化の条件は、人物の名前は変えること、何が事実か事実でないかは絶対に明かさないこと、だったのだそうです。
奇しくも今月に入って、ポーラ美術館が彼の作品を30億円で落札して話題になったばかり。


3時間超の長尺のこの映画、見応えはあるのですが、どういう方向性なのか観ていてもさっぱり分からないのです。
ナチの優性主義を糾弾したいのか、社会主義下の不自由な芸術体制を批判したいのか、愛する人を殺めた人間に対する復讐劇なのか、恋に落ちた若者の愛欲生活を描きたかったのか、はたまた60年代のドイツの現代アートの軌跡を紹介したいのか?



或いはそれら全部、と言えるのかもしれません。
リヒターの叔母がナチスの障害者安楽死政策で命を奪われたこと、妻の父親がナチ高官で安楽死政策の加害者だったことは事実なのだそうです。
歴史の過ちや運命のいたずら、戦中戦後のドイツの変遷、芸術家の産みの苦悩、そういったものをドナースマルク監督は、リヒターの生涯に全部重ねて描きたかったのか?
こんなに骨太な作品に、激しいベッドシーンが何故あんなに多くあったのかも疑問ですが、創造の根本はその営みにあるとでも言いたいのでしょうか?
英題は『Never Look Away』、「決して目を逸らさないで」というような意味らしい。
この言葉は叔母エリザベトの言葉として、作中に何度も出てきました。

公式HP 


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