10年位前でしょうか、ヤフオクでトランスがいくつかまとめて出品されていました。真空管アンプに使えそうな電源トランスやチョーク、小さな出力トランスや何用だかわからないトランスなど数10個をひとまとめにしたものでした。
こういうのを見ると、ついワクワクしてしまいこの価格なら買ってもいいかなと、決めた額を入札しておきました。すると運よく案外安めで落札でき、見事トランス長者になったわけですが、その中に含まれていたなんだかわからないトランスが気になっていたのを思い出しこの機会に測定してみました。
そのトランスは下記のような山水のトランスです。
結構大きなトランスで、コアボリュームも大きくまたコアの組み方が下記写真のように少し変わっています。
リード線は2方向に分かれていて、1次側、2次側とそれぞれ接続できるようになっているようです。恐らく出力トランスではなかろうかとは思っているのですが、どんな巻線なのか、1次、2次インピーダンスはどのくらいなのか、品番はおろか、リード線の接続方法についてもよくわかりません。
そこでまずは、このリード線がどんな接続なのか、トランスの1次、2次のそれぞれの接続状況を確認してみました。
この確認方法については、それほど難しくなく下記写真のようにテスターのDCRの計測で各リード線のつながり方や抵抗値を測定していきます。その結果、各リード線の接続状況やリード線間のDCRの状況から下記の図のような巻線構成になっているものと思われます。
次に、巻線比や巻方向の測定です。これは普通のテスターではできないので、早速購入したばかりのファンクションジェネレータとオシロを使用して確認してみます。
取りあえず、黄色と橙色のリード線を結んで、緑ー赤色間に信号を入れて、黒ー紫色間の信号電圧を確認し、巻線比を確認してみます。
緑色ー赤色間には、瞬時値2Vの1kHzの交流電圧を加えています。
そうすると、出力は下記のようにほとんど出ず。
どうも信号が打ち消しあっているように思えます。打ち消す要素としては、緑-黄色間と橙-赤色間の巻線が逆の可能性ありです。そこで、接続を変更してみました。緑色と橙色を結びます。そうすると下記のように出力が出ました。
2Vの入力に対して、0.34Vの出力となりました。合わせて、1次-2次間の位相の確認ですが、現在の接続で下記のように同相であることがわかりました。
ということは、巻線の巻き方(位相)と巻線比は次のようになります。
巻線比は、6:1で、巻き方向は図の黒丸の通りのようです。
仮に黒-紫間を2次側、黄-赤間を1次側とし、黒-紫間のインピーダンスを16Ωとすると、黄-赤間のインピーダンスは、巻線の2乗に比例するので
Zp=6×6×16≒600Ω
となります。
何だかトランジスタ用の出力トランスのように思えてきましたが、実際のところどうなのでしょうか。最後に出力トランスとして使用できるのか、周波数特性を確認してみたいと思います。測定回路は、下記のようになります。1次インピーダンスを600Ωとして測定します。その場合、発振器の出力インピーダンスは50Ωなので、トランスの1次インピーダンスに合わせるため、550Ωを追加します。
測定結果は、ざっとですが、10Hz~150kHz位まであり、出力トランスとして申し分ない特性です。これが電源トランスだったら、恐らく数kHz程度しか高域は伸びないと思われます。よって、電源トランスというよりは、出力トランスとして使用すべきトランスで、1次側:600Ω(150Ω+150Ω)、2次側:MAX16Ωのプッシュプル用出力トランスということが判明しました。
思わぬ低インピーダンスの出力トランスでした。このトランスで何のアンプを作ろうか。楽しみがまた増えそうです。
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