日本銀行には「インフレ恐怖症」が根付いている。 このインフレ恐怖症には、論理的根拠がなく、宗教的な信仰に近い。
白川総裁の時代では、インフレ恐怖症のため、必要な金融緩和処置が進められず、日本経済は「白川デフレ」に陥った。 黒田総裁に変わり金融緩和は進んだが、白川デフレからの脱却には、まだ時間がかかりそうだ。 黒田総裁の「異次元金融緩和」でもインフレは発生していない。この点からも、白川総裁時代に日本銀行が罹っていた「インフレ恐怖症」には、全く合理性が存在しない、ことが分かると思う。
日本銀行は、職員の採用方法に致命的な欠陥を抱えている。日本銀行の採用では、面接を通して「異質な」候補者が徹底的に排除される。そのため、組織の中には「イエス・マン」だけしか残らない。 欠陥のある経済理論を信仰して、金融政策で間違いを繰り返しても、日本銀行内では自浄作用が働かない。 日本経済の「失われた25年」は「失われた30年」になろうとしている。 (25年前に新卒で採用され、25年間も日本経済停滞政策を進めてきた日本銀行職員は、既に50歳前後だ。)
インフレとは物価の変動のことである。インフレ率を理解するためには、「インフレ」の定義と「貨幣・資金」の定義を見直してみればよい。
資金には「供給量」と「流通量」がある。
供給量とは、市場にある資金の絶対額で、stock(蓄積額)である。
流通量とは、市場で動いている資金の額で、follow(取引額)である。
一部の人は、資金の「供給量」が増えるとインフレになると信じている。 しかし、この考えは間違っている。資金の絶対額が増えても物価は上がらない。
自分の生活を思い浮かべて欲しい。例えば、宝くじが当たって貯金額(資金額)が増えたと場合、高級品が買いたくなるかもしれない。 しかし、安物に高い値段を払おうとは思わないはずだ。 高級品の売り上げが伸びることは、インフレではない。 安物の値段が上昇して初めて、インフレと定義される。
資金の供給量が増えただけでは、インフレは起きない。
一部の人は、資金の「流通量」が増えるとインフレになると信じている。 しかし、この考えも間違っている。 流通量が増えるだけでは、物価は上がらない。
自分の生活を思い浮かべて欲しい。 例えば、給料が上がって収入(流入額)が増えたとする。 新しい物が欲しくなるかもしれない。しかし、安物に高い値段を払おうと思うだろうか? 売上が伸びることは、インフレではない。 安物の値段が上昇して初めて、インフレと定義されるのだ。
資金の流通量が増えるだけでは、インフレは起きない。
日本経済再生のためには、社会での「デフレ・マインド」を破壊する必要がある。インフレ目標を達成するためには、日本銀行は、金融政策を通して日本人の心理状態をひっくり返す必要がある。 年間80兆円の金融緩和規模を、年間160兆円に膨らませたところで、それだけでは、インフレは起きない。 しかし、デフレ・マインドの破壊には影響があるかもしれない。
年間160兆円規模の金融緩和では、狂乱物価にはならない。 たとえ別の要因(例えば関東大震災)で、狂乱物価が発生するとしても、「インフレ」を正確に理解していれば、狂乱物価を抑え込むことは簡単だ。
戦前・戦後の歴史を振り返る限り、日本銀行にはインフレを理解している人材が存在しなかったように思える。 あれだけ間違いを繰り返せば、自浄作用のある組織であれば、インフレ要因を正確に理解することができる。 しかし、残念ながら、日本銀行には自浄作用が存在しない。
日本銀行での仕事が長引くにつれて、黒田総裁も「インフレ恐怖症」に感染してしまったようだ。 抗生物質を飲むなどして、インフレ恐怖症を克服し、インフレ目標達成に向けて、通常業務に戻ってもらいたい。