Entrance for Studies in Finance

東京電力の実質国有化(2012年7月31日)

東電国有化(2012年7月31日)は破綻前国有化
 東京電力実質国有化(議決権の過半を国が保有するという議論をここでは実質国有化と呼ぶ)となった。
 今後原発事故の損害賠償規模は十数兆円が見込まれる。原発政策は国が主導して電力会社がそれに乗っていた構造であり
その破たんの責任をすべて電力会社に押し付けるのは確かにおかしい。では電力会社がいやいや原発をやっていたかというと
確かに主体的に推進していたことも事実だ。
 問題は原発が重大事故を起こしたとき、それが1基の事故でも、1企業の手に余る災禍をもたらすということ。それを
福島第一原発は、多くの犠牲の上に教えてくれたということだ。
 今回の事故に関していえば、立地、設計、維持管理すべてにわたって東京電力が主体的に行ってきたわけだから、地震と津波により
生じた事故に関して一次的責任が東京電力にあることも間違いない。ただ国が電力政策という形で、原子力発電を推進してきたことも
事実。国がいろいろな場面で安全性のお墨付きを与えてきたことも事実。
 最終的に復旧経費と損害賠償についてまずは東京電力に一次的に負担させる。その資金のうち発電所関連はできるだけ自己負担させる。
損害賠償についても一次的に負担させたうえで、国が交付国債を拠出して損害賠償機構を設立し資金援助(資金を交付)する、あるいは融資という形で資金を確保する道を開く。という筋書きは、国の責任があいまいである点を除けば仕方がないことかもしれない。
 そして東京電力の財務状態の悪化、自己資本比率の低下に直面して、国は損害賠償に責任をもつという意味で今回、破綻前方式(破綻前国有化方式)がとった。その国有化の期日は払込日を取ると2012年7月31日となった。

 この方式は2003年の「りそな銀行」がモデルで普通株や議決権のある優先株を引き受け国の議決権が半分超えるというもの。
りそなの場合は2003年6月に1兆9600億円を投入。議決権の72%握った。総額で注入額は約3兆円 
 この方法は既存株主の株式が価値はさがるものの無価値にならない。破綻前方式は株主の責任を問わないということを意味しており、
債務が重いままと残る欠点があると指摘される。他方では上場が維持されることはメリットの一つとされる。
 東京電力の株主の責任については、経営に参与は困難な小口株主にすれば、寝耳に水の話。株価の低下ですでに責任を取らされたとも
いえる。論理的には株主は、東京電力の原発政策を止めさせる責任があったわけだが、東京電力の経営者がそうした議論を傾聴したかは
確かに疑わしい。

 これに対して、一度破綻させたうえで処理するのが破綻処理方式。破綻処理方式では株主価値がゼロになり、上場も廃止。
1998年の旧長期信用銀行。旧日本債券信用銀行。金融再生法による特別公的管理に移行して、ゼロ円の株式をすべて国が買い取った。
日本航空 国の企業再生機構が100%減資後に3500億円出資 破綻後国有化方式ともいう。
日本航空は2012年7月に再上場申請予定。この例などを参考に破綻処理方式の方がよかったとの意見が残る。

原子力損害賠償機構と政府の責任
 政府は東京電力については原子力損害賠償機構を設立(2011年9月)。国債を機構に付与して賠償資金を助けることにした。
機構は必要に応じて国債を現金化して東電に資金を交付する。
 機構は政府保証付で金融機関から借り入れてそれを東電に融資もできるものとされた。
 政府は2011年8月 原発賠償支援法を成立させ賠償機構を設立、資金面で東電を支え存続させる道を選んだ。
 東電に除染 廃炉費用負担押し付けて、国の責任があいまいとの批判は強いが、客観的にいえば責任を認めているともいえる。
原子力損害賠償機構から東電への交付金1兆5803億円(2011年4月-12月 特損で計上した賠償費用1兆6445億円)

2012年3月上旬 民間金融機関が追加融資の大筋了承
なお2012年3月7日までに主要行は総額1兆700億円の追加融資を大筋了承(銀行 生保など約70の金融機関が参加)
 その内訳は新規融資5000億円 
 過去に借りた融資の残高を維持するための1700億円
 お金が必要になったときの融資枠4000億円
 2012年7月に3700億円(1700+2000) 
2012年12月に3000億円 それぞれ融資する計画
 (すでに2011年11月に融資枠3000億円設定 期限2012年4月下旬)
すでに
2012年2月10日  原子力損害賠償機構と東京電力 取引金融機関に追加融資を正式に要請
        無担保・無保証で融資7000億円程度と融資枠3000億円程度を機構側は求める
        (金融機関側の一般担保付社債私募引受案を機構側が拒否) 
賠償資金の追加援助6900億円の追加認定(賠償範囲の拡大に伴う措置)
        4月下旬期限の融資枠を1ケ月程度延長(既存融資の期間を延長)
2012年2月後半  金融機関側は融資については一般担保付社債引受の形での融資で粘りその主張を通した模様。
        追加融資 新規融資が5000億円 融資枠が4000億円 借換が1700億円 合わせて1兆700億円
        そのうち5000億円(新規融資3000億円 融資枠2000億円)を日本政策銀行が負担。
        残りの4000億円(新規融資2000億円 融資枠2000億円を3月11日時点の残高比率で負担)
        融資の前提は公的資金注入 電気料金の引き上げや原子力発電所の再稼働  
        すでに2011年春に2兆円規模の緊急融資(東電向け債権を正常債権扱いとしてきた)

3月26日 東電 機構に対して 1兆円の資本注入と8000億円の追加支援を要請する方向(すでに東電は1兆7000億円の賠償を計上 うち1兆5800億円は機構が支援)
3月29日 東電 原子力損害賠償機構に対して1兆円の資本注入と福島第一原発事故に伴う賠償資金として約8500億円の追加支援求める決定
(2012年度 廃炉除染費用の増大が予想される)
(公的支援の合計は3兆5000億円規模 過去最大の政府支援)
背景:3月末の自己資本比率は3.5%(単体)で資本増強が急務

電気料金引き上げを織り込んだ事業計画+公的資金投入 前提に融資実行へ
4月27日 総合特別事業計画提出(東京電力+原子力損害賠償機構)→枝野幸男経済産業相
(議決権付種類株式で2分の1超の議決権→東電側は3分の1程度にとどめることを求めたが押し切られる 一時的公的管理。
転換権付き無議決権株も取得。こちらは経営目標未達の場合、議決権が発生するもの。優先株で出資しても配当を期待できないので優先株としなかった。
潜在的に3分の2超の議決権確保。出資比率は最大で75%:東電の時価総額3310億円04/04から逆算
普通株を使わない。財務省が普通株を嫌った。機構への株価変動の影響を避ける。評価にあいまいさ。買い手もみつかりにくい。
将来 経営改革のめどがついた段階で議決権を2分の1未満に低減。
取引金融機関が借換で与信維持。
主要金融機関 新規融資の実行で約1兆円の追加与信。当面無配。)
5月8日 臨時取締役会 次期会長 社長を内定 取締役16人から11人へ 
社外取締役は7人で調整(14日公表に向けて人選)
5月9日 総合特別事業計画 枝野経済産業相の認定受ける(電気料金引き上げによる収益改善が織り込まれている 正式認定) これを受けて金融機関は総額1兆700億円の追加融資を行う。第一弾は7月に政府による公的資金投入と合わせて計3700億円(2012年度の社債償還予定が約7500億円。この償還資金確保が当面の課題。東電債の発行残高は4月末で4兆3000億円 7-8年物の流通価格が70円程度まで下落している。金融機関や年金基金が幅広く買っており、デフォルトさせれば深刻な問題が発生するため デフォルト回避は至上命題。電力会社の社債は一般担保付。会社の試算全体を担保にしたもので、その債権はほかの債権者、たとえば被災者の賠償債権よりも優先される。他方、株価は200円前後)。
5月14日(経団連からは実現せず同友会から3人 経団連側は協力せず)

2012年6月27日 定時株主総会
(議決権付A株を3200億円 議決権はないが議決権付A株に転換できるB株を6800億円 合計20億株の種類株を発行 全額を原子力損害賠償機構が引き受けて実質国有化へ 国は引受時点で50.1% 最大で75%の議決権を握る また種類株は優先株として発行し一定条件で普通株に転換可能 ただし東電は賠償資金を機構に返済することを実質的に優先する合意をした模様)
西沢俊夫社長 勝俣恒久会長 退任 勝俣氏への退職金支払見送り
広瀬直己次期社長 下河辺和彦会長(原子力損害賠償機構 運営委員長) 就任
委員会設置会社に移行

2012年7月31日 実質国有化
原子力賠償機構 1兆円出資(実質国有化 国が潜在的に議決権の3分の2をもつ 優先株の代金払い込み期間 7月11日から25日)
金融機関は総額1兆700億円の追加融資を行う。第一弾は7月に政府による公的資金投入と合わせて計3700億円.
2012年7月31日 原子力損害賠償支援機構が種類株で1兆円を出資する 議決権の50.11%を政府が握る
機構は議決権あり 議決権なしの2つの種類株を引き受け
潜在的には最大で75.84%握る
払込日は当初の7月25日が31日に延期(家庭向け料金値上げの判断が25日になったこと 金融機関との追加融資の
締結がずれこんだこと)
料金の判断・・・・・・経済産業省
資本注入の判断・・・・原子力損害支援機構
 値上げについては7月1日に平均10.28%引き上げの予定が値上げ幅を8.46%に圧縮して
9月1日実施とされた。今後は小売 送配電の社内分社化に取り組むとのこと
 2013年4月までに社内カンパニー制を導入し、事業部門を燃料・火力、送配電、小売の3カンパニーとして。
それぞれがコスト管理、収支目標もつくる。経営の透明性と規律を高めることを狙う。

背景:7月末に1000億円の社債償還をひかえていた。原子力損害賠償支援機構からの1兆円融資を前提に金融機関から
融資を受ける予定。ところが融資を受けるはず。家庭向け電話料金の引き上げで政府内で意見の対立
(経済産業省と消費者庁)。
認可が遅れたことから7月26日に融資(日本政策投資銀行 三井住友銀行など)される予定(第一弾)の3700億円が、延期された。
→ 家庭用電話料金の認可が遅れた結果 8月1日に変更。

2013年以降の今後については
福島第一原発の廃炉 被災地の除染費用 十数兆の費用 東電は経営的に成り立たない
また柏崎狩羽原子力発電所の再稼働の見込みも立たない(予定は2013年4月だが見通しは立たない)
原発1基稼働で年780億円の収益改善効果があるとのこと。
柏崎には6基あり、これを13-14の2年間で動かす予定。
ということは理屈では780×6=4680億円の収益改善効果・・・本当だろうか。

いまひとつは火力発電所への更新投資。東電では自力の資金調達がむつかしいため
SPC方式で提携企業の出資を仰ぐことを計画している。燃料を納入するガス会社や
石油会社が提携先として検討されているとのこと。
→ これに対して自治体や企業が自前で電源開発しようとする動きがある
2000年の電力自由化で電力の小売りへの参入がみとめられているが2012年7月には政府が全分野での自由化方針を決めている

電力供給の危機が表面化したとき 注目された一つは企業がもつ自家発電設備
また自家消費を上回る「埋蔵電力」
新たな参入事業者は「新電力」と呼ばれている
東京電力の電力料金が大幅に引き上げられる中
「新電力」のビジネスチャンスが拡大している
東京都の東京湾岸火力発電所整備構想 そして
東電の老朽家電の更新(規模の大きさ 関連インフラは整備済み)も大きなチャンスとされている

民主党政権は原子力損害支援機構という形での支援はするものの
国の責任には踏み込まなかった。

 2011年11月 東電 緊急特別事業計画 について政府認定 受ける 賠償総額約1兆109億円
 2011年12月 約6900億円の追加援助申請認められる
 2012年3月 約8500億円の追加援助申請認められる
 2012年5月 東電 総合特別事業計画 について政府認定 受ける 賠償見込み額2兆5462億円
 2012年12月 約7000億円の追加申請認められる(総合特別事業計画の数値を修正する)

賠償見込み額 に対して 引当金を積む
その後 損害賠償機構から 資金援助(交付) でその分は相殺できる仕組み。
国が責任を認めているともいえるが曖昧。

2011年大震災以降2011年末までの記録
 3.11大震災前後 
 3月10日 国債に対する上乗せ金利 0.1%前後で推移。
 3月11日 東日本大震災の発生 福島第一原子力発電所が被災
 3月12日 1号機で燃料棒露出溶融 1号機水素爆発
 3月14日 原発事故の深刻化 3号機水素爆発 2号機燃料棒完全露出溶融
 3月15日 S&P 東電 長期/短期 格下げの方向で検討 4号機水素爆発 その後火災発生 
 3月16日 Moody's 東電Aa2 格下げの方向で検討
 3月18日 Moody's 東電 長期格付けを引き下げ Aa2 → A1 
 3月18日 S&P 東電 長期/短期とも格付け引き下げ AA-/A-1+ → A+/A-1
 3月25日 R&Iが東電の発行体格付け引き下げ AA+ → AA-へ(Reuters)
      10年物国債に対するスプレッドは0.67%に拡大
 3月31日 Moody'sが東電の長期格付けを引き下げ A1 → Baa1 

2011年4月April
4月1日  S&P 長期/短期とも引き下げ A+/A-1  → BBB+/A-2 (Reuters) ⇒ 電力債の発行は困難に
     10年物国債に対するスプレッド1.95%に拡大
 4月1日 管首相が東京電力国有化に対して否定発言
 4月6日 始値354円終値337円。安値292円高値396円。東電株価が最安値を記録。 

 国債に対するスプレッドは震災前の0.1%程度から2%強にまで上昇(20倍程)
 他方、ユーロ建て10年債のスプレッドは5%を超えており海外投資家の
 国内投資家に比べた厳しい見方が伺える(参照『日本経済新聞』2011年4月7日)

 4月7日  R&Iが東電の長期格付け引き下げ AA- → A
          CPの格付け        a-1+ → a-1(Reuters)

4月8日 国債一時1.335%
 4月11日 東京電力は複数の金融機関から総額2兆円の借入を実行したと発表 社債償還 設備投資 復旧費用 燃料費など運転資金 メガバンクおよび大手信託銀行から 期間3-5年程度の長期資金 → 信用力低下で社債発行が困難になったことが背景
  借入資金の使途  
    社債償還資金
    設備投資資金
     福島第一原発 復旧費用
     代替運転する火力発電 燃料費用

 4月11日 始値460円終値500円。安値445円高値500円。最安値の4月6日からは相当に戻している。
        10年物国債利回り1.335%(過去ピークは2月16日の1.345%) 
 4月12日 2011年3月期は無配と報道(2010年9月期は1株あたり30円の中間配当あり)→終値450円
        始値466円終値450円。安値440円高値539円。
 4月13日 始値515円終値502円。安値485円高値524円。 
 4月14日 政府が復興税創設を検討 財政悪化懸念和らぐ 長期金利低下
        臨時増税 所得税・法人税 一定税率上乗せ 消費税率引き上げ 有力  
        震災国債発行          
        投資家は 電力債を敬遠 電力債以外の格付けの高い社債が人気
        スプレッド 投機的債券並みの3-4%に拡大
 4月18日 S&Pが米国債の長期格付けの見通しを安定的からネガティブに変更
 4月26日 東京電力流通利回り低下 スプレッド1.6-1.7%にまで縮小
 4月27日 S&P 日本国債の格付け(AA-)見通しを安定的からネガティブ に変更 日本の財政見通しを下方修正 増税等の措置がとられなければ債務残高の対GDP比率は従来想定より悪化する。2013年度に137%ではなく145%になる。

2011年5月May
 5月7日  S&P 東電 長期格付けアウトルック 安定的 → ネガティブ に変更
 5月13日 S&P 東電 長期会社格付けと長期債券格付けを BBB+ → BBB なお短期は変更されなかった(Bloomberg)
 5月13日 R&I 東電 長期 A を格下げ方向でモニターと発表(Reuters) 
 5月16日 Moody's 長期 Baa1 → Baa3
長期シニア有担保 Baa1 → Baa2 
短期CP Prime 2 → Not Prime(Reuters)

5月27日 フィッチ 日本の長期国債格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更 財政状況の悪化に歯止めがかからず福島原発の処理コストの規模が依然として不透明。
 5月30日 S&P 東電長期会社格付けをBBB からB+ に変更 投機的格付けに格下げ
          長期債券格付けはBBBからBB+
            短期債券格付けはA2をBにそれぞれ格下げ
 ⇒ 電力債の保有継続に赤信号
 5月31日 Moodys 日本国債の格付けAa2を引き下げ方向で見直すと発表 「東日本大震災の日本経済や財政への
影響が思ったより大きく、財政再建に向けた改革を実現するための政治情勢も不透明」

2011年6月June
 6月1日  R&I A を A- に変更(Reuters)
       Moodys 東電格付けを変更 Baa3 → B1 投機的格付けに格下げ(Reuters)
長期発行体格付けをBaa3からB1へ
        シニア有担保格付けをBaa2からBa2へ  ⇒ 電力債の保有継続に説明責任 デフォルトの可能性高まる

低下する国債金利 2011年6-8月
2011年6月13日 今後3ケ月国債金利見通し 1.1%-1.4%
2011年6月21日 新発10年物国債金利終値1.125%(前日比0.10%高い)
2011年6月28日 新発10年物国債金利一時1.085%(7ケ月ぶりの低水準) 新発20年物国債利回りは1.865%(半年ぶりの低水準)
2011年7月6日 新発10年物国債際金利1.175%(2ケ月ぶりの高水準)
2011年7月11日 今後3ケ月の見通し1.0%-1.3%
2011年7月25日 同上1.085%(前週末比0.010%低い) 無担保コール翌日物は0.070%(0.003%低い)
2011年8月3日 同上1.010%まで低下(2010年10月以来の低水準) 円相場は77円台前半でもみ合う
2011年8月4日 一時0.995%(2010年11月12日以来9ケ月ぶりに1%割れ)
2011年8月8日 今後3ケ月の見通し0.9%-1.1%
2011年8月15日 今後3ケ月の見通し0.98%-1.15% 
 
 東京電力の2010年12月末の純資産は3兆円 有利子負債7兆円超(うち5兆円は社債 この規模は日本企業で最大 国内社債発行残高の約8%)
    発電所の建設 送電網の更新など 
    東電の社債発行残高5兆円

  発電所関係費用  
   汚染除去費用
   安全対策費用
   原子力発電所の停止・中止・解体費用
   代替発電所整備費用 火力発電所復旧費用
   代替燃料費用 

  賠償責任
   自治体・避難住民の移転経費
   避難住民の生活費用
   避難住民の生活再建費用
   避難住民住居の買取費用
   廃棄生産物補償費用(農産物・魚介類)
   休業補償
   汚染除去費用(土壌改良費用)

 作業員の健康被害への補償

 国有化のパターンを検討したものに 問題山積みの東京電力 考えられている国有化のパターン。 一般に以下の3ツのパターンがある。
 近年の国有化(公的資金投入+経営権取得)の例
 ①1998年の旧日本長期信用銀行(債務超過)
  金融再生法 早期健全化法 を制定 破たん申請 特別公的管理銀行として一時国有化 債務超過にして国有化した 
金融再生法制定 特別公的管理銀行として国有化 100%減資
 ②2003年のりそな銀行(資産超過として 株主 社債権者に負担求めない) 普通株と優先株を組み合せ1兆9600億円の資本注入 国が議決権の7割超を取得 頭取・副頭取は退任 退職金支払われず 外部から経営者招く 資本注入後も上場維持(株主は希薄化で責任負担)
  公的資金を注入して国が実質的に大株主になった。
  りそな国有化の闇 預金保険法第102条第1項の扱いにした点がみそ。
  預金保険法第102条は、ケースを第1項(過少資本行への資本注入)第2項(破たん処理)第3項(一時国有化)に分けている。
  1項というのは信用秩序の維持のため予防的に公的資金を注入するというもの。前提は債務超過に至っていない、資産超過ということ。
  お金の出所は預金保険機構の金融危機対応勘定(りそな銀行)か金融再生勘定(旧長期信用銀行)かになり、それぞれの勘定は政府保証付きの借入・債券で資金を調達する。
 ③2010年の日本航空の一時国有化(会社更生法による法的整理)
 日本航空の場合は企業再生支援機構という官民共同出資の組織が出資する形。企業再生機構は政府保証付きの社債・借入金によって資金を調達する。

 今回は、②の預金保険機構に似た原子力損害賠償機構を設立(電力9社が設立)。同機構に政府が交付国債付与で出資。その範囲での資金援助(交付)をきめ、さらに政府保証の借入・債券発行で資金を調達。間接的に「公的資金」を投入することになった(2011年9月に原子力損害賠償機構が設立された)。この機構が東京電力に資金を交付、優先株出資・あるいは融資。
 東電の株式・社債は保護されたが当面は株式は無配に。東電の機構への返済額は、年間利益から設備投資額を除いた額とすることで設備等額は確保といった枠組み(2011年5月10日までに固まった原案)。
 原発をとめた影響が大きくでていること(燃料費の増加 火力発電所への設備投資)。東電を破たんさせると投資家・債権者のほかに大きな影響がでること。5兆円の社債が破たんした場合の混乱、電力供給にも支障の可能性があること。東電は役員報酬の返上・有価証券、不動産の売却、社員の年収カットなどリストラを急ぐことになった。なお東電役員の報酬の高さがその後明らかになる。東京電力は内外に展開している事業を見直して不急の事業からは速やかに撤退するべき。
 2011年12月27日 東京電力は原子力損害賠償機構(2011年9月設立)に対して事故賠償のため6900億円の追加資金援助を申請(東京電力ではすでに11月に緊急特別事業計画を定めて8900億円の資金援助=交付を受けている。これは国から機構が受けた交付国債を元手にしたもの 6900億円は2012年2月10日に認定 合わせて1兆5800億円が東京電力に交付され、東京電力は債務超過を免れた)。
 他方、機構は今後1兆円規模を資本注入。この時点では普通株を中心に3分の2以上の議決権を得ることを視野に入れていた(その後種類株=優先株に変更)。このために金融機関から機構が協調融資を受ける この借入には政府が2兆円まで保証をつけられる 財務省は国に負担が来ることを恐れ3分の1までにとどめることを主張)。東京電力側は議決権のない種類株を中心として、議決権を守る構えを示した。このほか取引金融機関に1兆円規模の追加融資を求めることになった。

参照「巨額融資と社債の行方 一連托小生の東電と金融界」『金融財政事情』2011年4月11日号, pp.6-7
復興財源として外貨準備を活用してはという意見がある 根津利三郎ほか「復興財源に外貨準備を活用せよ」『エコノミスト』2011年6月14日, pp.18-30

福島第一原発炉心溶融事故の経緯について

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
originally appeared in April 12, 2011
corrected and reposted in June 30, 2012 and January 1, 2013.

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