Entrance for Studies in Finance

三洋電機の再建

創業家の退場
 三洋電機は半導体の収益悪化などで2005年度に業績が悪化。経営再建中の三洋電機の2008年度からの新事業計画が明らかになった(2007年11月)。
 この間に2006年春金融機関3社(三井住友銀行 ゴールドマンサックス 大和証券SMBC)に3000億円の第三者割り当て増資。実質的に金融機関の支配下に入った。また2007年3月ー4月には野中会長と創業家の井植社長が辞任。

再建計画
創業家に代わり社長に就任した佐野精一郎社長は選択と集中を加速。2006年12月にはセイコーエプソンと共同出資の液晶会社の持ち株をすべてエプソンに売却。半導体子会社の三洋半導体は入札方式で売却予定。三洋電機クレジット株のGEへの売却に続いて(TOB方式で買収し完全子会社化へ07/3発表:これまでGEキャピタルリーシングで大口リースをまた消費者金融レイクを展開してきたGEは環境の変化からレイクを縮小、法人事業にシフト)、携帯電話販売のテレコム三洋の売却をきめた。

 今回の新事業計画では携帯電話事業を京セラ(国内8位5%前後)に売却(2007年12月最終合意目指す)する一方、世界首位のリチウム電池(充電池)では3年間で1000億円を投じてノートパソコンや携帯電話向けを増産する。次世代リチウム電池の量産にも乗り出すとした。リチウム電池は、世界シェアで三洋電機が4割、ソニーが2割、中国BYDが2割、松下電池が1割。日本メーカーが世界シェアの7割。その中で三洋が首位。電池の小型化によりハイブリッド車の燃費の改善が進むことも期待される分野。
 国内でシャープに次ぎ2位の太陽電池事業については、原料のシリコンウエハーの調達増産に1100億円を投じて、基幹部品セルの生産能力高め、売上高を倍増するとした。2006年の国内シェアはシャープが46.8%、三洋電機が22.7%、京セラが18.4%、三菱電機が10.7%など。国際的にもシャープがトップだが、今後はQセルズ(ドイツ)、サンテックパワー(中国)などの進出が予想される。
 なお携帯電話事業は三洋の売上高では最大事業。また北米向け(米大手スプリントに供給)輸出は黒字。しかし国内での販売不振(国内7位シェア7.6%)からノキアとの合弁話がでるなど再編の模索が続いていた(表面化2006年2月 白紙撤回2006年6月)。しかしこの合弁話は、携帯を中核事業と位置付ける創業家のもの。その後、携帯事業の不振が表面化してからは、金融会社の不満は高まった。
 京セラにすれば、今回の買収は国内最下位から、トップのシャープに迫るパナソニックモバイル、東芝、NECなど2位グループにせまり、スプリントを通じ国際展開のチャンスである。
 スウエーデンのエリクソンと2001年に携帯電話事業を統合したソニーを除くと、日本の電機メーカーは、携帯電話事業の国際展開に成功していない。
 三洋の業務は、携帯の次が充電池、そして業務用機器(空調、ショーケース:業務用冷凍機器など)である。このほかデジカメ、光ピックアップなど。今回の決断は収益でかげりをみせた携帯事業を売却、より高収益事業にシフトすることを意味する。
 このほか収益の低い国内白物家電(エアコン、冷蔵庫など)の国内販売縮小も決めた。海外での販売・生産にシフトする。大きく見れば収益に低い国内消費者向けの縮小である。なお売却を予定していた半導体事業については2007年10月段階で売却断念を表明しているため、再建への足かせにならないかとの懸念が出ている。
 この売却予定相手は国内ファンドのアドバンテッジパートナーズ。2007年8月に表面化したサブプライム問題の影響で金融機関が買収資金の融資に慎重になった結果とされる。また、合意された買収金額(2007年8月末の入札結果で1100億円)が半導体事業の価値に比べて高すぎるとの見方が支配的だったとも指摘されている。三洋側は逆に簿価である1000億円弱下回る金額での売却は見送った模様である。

不適切な会計処理の表面化(2007年2月)と処分(2007年12月)
 この問題について、証券取引等監視委員会が2006年秋以来、2004年3月期決算(監査は中央青山)について調査をすすめていることが2007年2月に表面化した。問題は業績不振だった子会社・関連会社の株式評価損の扱い。不当に小さく見積もり44億円の黒字として配当を支払った疑いがある。
 前後の決算は03年3月期が539億円の赤字。ところが05年3月期と06年3月期は子会社の株式評価損を2000億円近く計上。こうしたことから評価損処理を先送りした疑いが出ている。
 三洋側でも01年3月期から06年3月期までの単独決算について調査。05年4月に設けられた課徴金制度の対象となる05年9月中間決算で株式資本を約3割かさ上げしていたことが判明したとして、証券取引委員会は課徴金を科すように金融庁に勧告する方針をかためた(07/12/15)。勧告は07年12月25日に行われ、これを受けて東京証券取引所は同日付けで三洋電機株を上場廃止の可能性のある監理ポストに割り当てた。東証では、同社の決算訂正が市場に与えた影響の重大性などを審査した。
 また同日、三洋電機では01年3月期から06年3月期までの訂正単独決算を公表した。結果、01年3月期は黒字から赤字に転落。また03年3月期から04年9月中間期の間、原資不足のまま違法配当したことも認めた。しかし他方で法定準備金を取り崩せば配当はできる状態にあったので、タコ配ではないとした(でも準備金を崩すということはタコ配でしょうね)。また当時の経営陣に違法に支払った配当総額計280億円の弁済を求めることは現実的ではないとした。旧・現経営陣の退職慰労金の不支給などを明らかにした。

電池事業軸に再建が進展中
08年3月6日 臨時株主総会が開催され、07年3月期決算訂正を承認した。役員退職慰労金約12億円の支払い見送り 07年3月末で単体で4101億円の繰越欠損金 2010年までに資本準備金の取り崩しにより復配に向かう方針が示された。今後は2次電池 太陽電池に重点投資 2010年度で営業利益1000億円目指す(⇔シャープが太陽電池で大型投資 など競合)

08年4月 2010年めどにシリコン使用量を大幅に減らせる(シリコン使用量は100分の1程度に 生産コスト下がる 価格半分程度に 発電効率低下を新技術でカバー シリコンの需給ひっ迫で日本勢苦戦 ドイツQセルズがシャープを抜いて世界1に)薄型HIT太陽電池の量産開始(⇔09年度に同型の専用工場を立ち上げるシャープを追い上げる)
自動車用電池はドイツフォルクスワーゲンと共同開発

08年5月 08年3月期 連結最終損益が4年ぶりに黒字転換 
有利子負債前期比1900億円減の4889億円
06年にゴールドマンサックスG 三井住友銀行 大和証券SMBCGが3000億円の増資を引き受けたときの優先株の扱いが焦点に 09年3月に普通株に転換 買い入れ消却するか 事業会社やファンドに転売するか
液晶パネル調達でシャープと提携発表(08/05/23)

08年6月 繰り返し使えるニッケル水素電池(約1000回充電できる 環境負荷が小さいとして注目 ニッケル水素電池での国内シェア3割でトップ 充電池に大きくシフト)で生産量倍増へ

08年7月 リチウムイオン電池(2007年の世界シェア26%でトップ サムソンSDIやソニーが続く)の新工場を兵庫県南あわじ市に。貝塚に建設中の工場と合わせて生産能力3割増やす(投資額は合計で540億円) リチウム電池はパソコン向けに需要は拡大(ノートパソコン向けでの世界シェアは4割)

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.

電機業界
東芝とマツダ 企業研究:東芝・日立・パイオニア・シャープ 原子力エネルギーへの懐疑と代替エネルギー デジタル家電 パナソニックによる三洋電機買収

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