Entrance for Studies in Finance

Private Brands 低価格戦略の変質

低価格戦略low price strategy
スーパー コンビニは PB(自主企画品 メーカーへの大量生産委託)による割安商品戦略をとってきた。メーカー側も大量注文生産のため納入価格に引下げ余地がある。

しかし2013年に入ってPB商品のあり方で質の高さも合わせて目指すことが明確になってきた
PBは原価が安く利益率が高いので値下げ余地。顧客の節約志向に対応。現状でメーカー品より1-2割安く設定しているが、なお引下げ余地がある。ナショナルブランドに比べて粗利益率が2-4割高いとされる。他方 ナショナルブランドを値下げキャンペーン対象に使うとも。
 食用品・日用品が30数兆円の市場規模であるのにPB商品は従来1兆円強の市場だった。PBを1-2割値下げして消費喚起するようになった。
 背景には、消費者の低価格志向や原料価格の低下がある。

 イオン(ジャスコ マルエツなど):トップバリュ
   09秋小型デイスカウント店「アコレ」の展開始める  08年夏 PB品を3-5割下げている。
   原料 製法にこだわった トップバリュセレクトの品目を増やす(2013年→2014年)
 セブン&アイ:セブンプレミアム 
   09秋にもワインを販売する
   ヨーカ堂は08年8月からデスカウント店「ザプライス」を開業展開。
   象徴 セブンゴールド 金の食パン 2013年4月投入
   高品質のセブンゴールドの品目拡大へ(2013年度) 
 ユニー(サークルKサンクス):+KACHIAL
 西友:グレートバリュー

他方 メーカー側はPBの生産受託に応じるとともに商品数の削減で主力商品に経営資源を集中
これに対してメーカー側は商品数を絞ってナショナルブランドを守る方向に動いている。品目数を維持してきたのは売り場を確保するため。しかし点数の増加は、生産コストの増加、在庫管理コストの増加につながっている。点数を減らすことでコストを減らすことができる。
 切り替えをしないことで作業効率の上昇、包装費 物流費 広告宣伝コスト削減。利益率の高い主力商品に生産と人材を集中(返品率の高い季節商品 非主力分野商品の削減)。

苛烈なナショナルブランドかプライベートブランドかの争い。背景にあるのは国内市場の縮小傾向。
 スーパー コンビニ合わせた市場規模27兆円(2012年)2013年度大手小売り5社のPB売上高は2兆円超え
 メーカー側にもPBの生産受託は不可欠に
 全国のスーパーの売上(2013年 日本チェーンストア協会発表)は全店舗では12兆7224億円 前年比1.5%増 プラスは2年ぶり。既存店だけでは2012年比0.7%減。
 全国のコンビニの売上(2013年 日本フランチャイズチェーン協会発表)は全店舗で9兆5213億円 前年比4.0%増。既存店だけでは8兆5213億円 前年比1.1%減。大手ではPB商品投入で粗利益率が上昇している。都心部ではファミマのように品揃えを増やしミニスーパーと競合する戦略もみられる(2013年度)。
 
アパレルのSAPの議論はstore brands(private brands)の議論と重なる
アパレルでの製造小売(SAP)を広くとらえると、お店をもっている側が製造すべきものを企画して販売する形態を広く製造小売とみることができる。もともとメーカーは小売に対して委託販売して売れ残りを回収していたわけだが現場の情報に距離があった。小売りがメーカー物に頼るのはブランド力の差が大きい。自らのブランド力があればそれを生かして、さらに現場の情報を生かして製造小売に進化できることになる。
 このように成立するブランドをstore brands(house brands or own brands)とよぶことがある。アメリカ(US)ではhouse brands、英国でown brands、オーストラリアでhome brandsなど、各国で言い方が違う。スーパーや小売店の自主企画品をこう呼んでいいる。

 日本語のprivate brandsは和製英語とされる。英語としてはprivate label。
 消費不況のなかで、スーパー、コンビニは自主企画品PBを、メーカー品(national brands)よりも安く販売することで、消費喚起に努めている。背景にあるのは、これらの商品が競っているのは日用品市場とでもいえる成熟市場で、製品の品質に大きな差がないためである。
 そしてアベノミクスによる消費喚起のなかで、品質の追及による消費喚起が浸透するとすれば、これは消費者にとっても歓迎するべきことであろう。

高価格帯ブランドの市場が縮小から回復へ
 他方、消費不況のなかで高価格帯ブランドへの消費者の支持が落ちており、その象徴となっているのが、高価格帯ブランドの衰退である。しかしアベノミクスの過程で高級ブランドの消費が復活してきているとの指摘もある。注意するべきことは、高級ブランドを購入する階層と、さきほどのスーパー、コンビニでPB商品かNB商品かで悩む階層とは、そもそも所得階層として同一とは思えないことだ。後者は、高級ブランド帯には手が出なくなった階層。そこにプチ贅沢として、PBかNBかの選択があるとみるべきではないか。
 そうだとしても、下の階層でプチ贅沢が始まり、上の階層で資産効果(株式や不動産など資産価格の上昇)で高級ブランド消費が復活を始めれば、それが消費回復の兆しといえなくはない。

アメリカでは2007-2008年スタバが大幅縮小 しかし日本では
 そもそも景気の後退期には、高価格帯で勝負するビジネスが影響を受ける。たとえばアメリカでは08年7月30日にスタバの4-6月決算が発表されたが、スタバが1992年の上場以来初めて赤字に陥った。同社は景気減速による消費減速、ガソリン代値上げによる消費圧縮、ファーストフード店との競合激化から苦戦した。同社の来店客数は07年7-9月から減少に転じた。店舗当たり売上高も減少。
 そこで2008年年頭に入ってから、国内赤字店舗100店舗削減、9月末までの国内新規出店を従来計画より27%減の1175店舗とする方針を打ち出した。マクドナルドがプレミアムコーヒーを投入して集客力の強化に入ることがわかり、スタバの危機感は高まった。
 単価が高額な同社は顧客に敬遠され、2008年5月30日に発表された1-3月決算は大幅な減益となった。1年の国内新規出店を400店未満とする大幅縮小方針が示された。
 スタバは08年7月1日、09年3月末までに500店を追加閉鎖するとした。すでに発表分とあわせ600店舗(店舗の5%)を閉鎖。最大1万2000人の従業員(従業員の7%)を削減することになった。また09年9月末までの新規出店規模を200店未満とすることも発表した。
 7月30日発表の4-6月決算が赤字になったのはこうしたリストラ費用の負担もある。
 7月29日には店員以外の一般従業員1000人の削減。オーストラリアの店舗の約70%の閉鎖を打ち出した。スタバの一方的拡大はこれで終わったといえる。
 その後 米国ではハワードシュルツ氏がCEOに復帰。全米の7000店舗を一時閉鎖して従業員の再教育を実施し、ブランドの再生に努めたとされる。その成果といえるだろうがスタバは復活を遂げた(反面 2012年には課税回避問題で国際的な注目と批判も浴びた)。なお日本のスタバは2011年に利益の落ち込みは経験したが、2012年から2013年と好調な業績を維持している(背景の一因には2011年以降のコーヒー豆相場の下落があるとされる)。
 
消費・人口構造の変化への対応 郊外は縮小 高齢層 個人客重視に転換
 郊外型のファミリーレストランも、景気後退では食事の内食化、ドライブでの外出の手控えの影響をまともに受けた。加えて、長期的に少子高齢化で主力のファミリー層は今後減少する。人口は都市部にますます集中して郊外は過疎化が予想される。景気の後退に対応して不採算店の閉鎖を急ぎ、従来の出店内容を根本的に修正する必要が指摘された。
 ところでファミレスの売上が減ると、コンビニなどの中食(あるいは内食)食品の売上がのびる(外出手控えの巣ごもり消費で外食が減ると、内食が増え、たとえば宅配ピザやテイクアウト食品が伸びる)というように、景気の悪化の中でも売上を伸ばすところがある。
 百貨店・スーパーはともに売上が1990年代に入って以降は下降線。ところがコンビニは減速しながらも上昇した。スーパーの売上減少は、衣料部門の後退を受けたもので、スーパーの衣料部門は専門店に押された結果である。1998-2008の間 百貨店・スーパーともに11年連続で前年割れ。これに対しコンビニは、08年8月末の店舗数41,645店までに発達。また百貨店業界の規模(売上高)を抜いたと見られる。
 コンビニは、中長期的な消費の都心化・個人化という流れにのっている。ファミレスは、この変化に対応を進めている。郊外型ファミレスは郊外の不採算店舗を廃止、駅前など都心部での出店を増やしている(なお円高を追い風にして海外出店も増やしている)。今後は店舗の構造やサービス(業態)を、高年齢層、個人客をターゲットに見直すことが必要とされる。
 外食産業で、最近注目されているのは共通メニューによる多店舗営業の問題点である。顧客がメニューに飽きてしまうこと。多店舗展開を開始すると流行の変化に合わせた転換がしにくいことなどが知られる。これに対して収益性を保つには、機動的なメニュー変更や業態転換が必要。他方、多店舗営業には、食材仕入れの効率化・集中調理による厨房の共通化というコストメリットがある。そこで同一ブランドで多店舗営業にせず、多店舗でありながら表向きは個店で営業する方式が注目されている。
 
電子マネーによる待ち時間短縮
なお、他方で人件費抑制ばかりでなく、混雑解消(客の待ち時間短縮)にもつながるとして導入が期待されているものに、電子マネーの対応がある。

 am/pm :Edy
Jusco :WAON Suica
Itoyokado :Nanaco
Seiyu :現金 or credit card

コンビニコーヒーの拡大とコーヒーチェーン店の高級化
 今後、人口構成の高齢化を考えると、コンビニ・ファミレスの店舗設置は都市の駅前(背景には地価の下落がある)にさらに一層シフトするだろう。(すでに都市部は過剰出店、過剰競争になっているとの指摘もある。しかしトレンドをとらえれば集客向上の可能性がある)。
 アベノミクスによる景気回復の掛け声を受けて、顧客の高齢化(シニア化 滞在時間の長期間化)を客単価(支払単価)の引き上げにつなげようととする動き(コーヒーの質の向上 メニューの増加 高級化 店内調理化 会員サービスの強化 フルサービスへの回帰 内装の高級化 無線LAN環境の整備)が、コーヒーチェーン店やファミリーレストランでは現われている(背景には2012年から2013年にかけてローソンやファミマなど大手コンビニが低価格コンビニコーヒーを投入 さらにはスーパーコーヒーの拡大したことがある ローソンやファミマは高級豆を使ったコーヒーを120円から180円の低価格で投入 コーヒーチェーン店の脅威となっている またコンビニでの食材販売拡大に対抗する上で脱価格化 低価格からの離脱が必要になっていること=従来のビジネスモデルの変更が必要になっていることもある)。
 ただセルフサービス式店舗の消滅や大幅な価格引き上げにならないことを望みたい。おそらくだが低コスト(公共的空間など)の店舗場所の選定 適切な舗規模と、運営の合理化によって低価格コーヒー店の可能性はまだあると思う。高齢化社会を控えてそうした空間の社会的ニーズは極めて高いのではないだろうか。

ファーストフードの衰退
 アベノミクスによる消費の回復は、ファーストフードの衰退、ファミリーレストラン復活という形でも表れている。マクドナルドの既存店売上高が2012年2013年と連続して前年割れとなったのは象徴的だ。マクドナルドというと私たちが感じるのは、安っぽい内装、紙製のコップ、正直に言ってまずいパンズなどだ。中高校生はともかく、高齢の大人や家族連れがまともに食事を楽しむ場所とはいえないのではないだろうか。つまりマクドナルドの基本的なあり方を変えない限り、高齢化の進展とともに客数の減少は続くのではないだろうか。
 国内の外食産業では、国内での市場縮小、コンビニとの競争激化をにらみ、海外での出店を増加させている。それは戦略として正しいだろうが、低価格で食事ができる場所の国内ニーズも依然高い。そして低価格とするとしてもサービス、食の質、器、素材などにはなおこだわって欲しい。私見では客の回転を高めることで、一見矛盾している、低い客単価のもとでの、内装、サービス、提供する食事の質を実現することは、可能だと考えるがどうだろうか。それがファーストフードの本来のあり方ともつながっているように思える。
 
Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
original in July 20, 2009
revised in Jan.29, 2013

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