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アイルランド再投票(09年10月)でリスボン条約批准へ

アイルランド、国民投票でEU新条約を否決(2008年6月13日開票)
 欧州連合の新基本条約であるリスボン条約(大統領制や意思決定の効率化など)がアイルランド(法人税の軽減で海外企業を呼び込んで成功 税制の共通化に否定的とされる)の国民投票で否決された(開票2008年6月13日 賛成47%に対し反対53%。背景:市民や企業の反発)。この条約は27ケ国(1995年オーストリアなど3け国加盟で15け国体制 2004年チェコなど10け国加盟で25け国体制 2007年のルーマニア、ブルガリアの加盟で27け国体制)のうち18ケ国ですでに批准済みであった。
 2009年に予定されていた政策決定の効率化を目指した新体制(EU大統領や外相級ポストの新設など)への移行が大幅に遅れるのではないかと懸念された。
 アイルランドでは2001年にEUの東方拡大を定めた基本条約「ニース条約」が同様に国民投票で否決された前例がある。2005年にはEU憲法条約をめぐる国民投票でフランスとオランダが否決した。もともとオランダやイギリス(前ブレア首相に比べてブラウン首相は慎重)はこれ以上の欧州統合に慎重であるとされる。

 ユーロでは1998年6月に欧州中央銀行が発足。1999年1月には独仏伊など11ケ国が金融政策を欧州中銀ECBに移管して、ユーロ圏が成立している。2002年1月からはユーロの紙幣硬貨が流通を始めた。ユーロ圏はギリシア(01年1月)、スロベニア(07年1月)、キプロス・マルタ(08年1月)、09年1月にはスロバキアを加えて、欧州単一通貨導入国(ユーロ圏)は16ケ国体制となっている。
 ECBは消費者物価上昇率2%未満を政策目標としているが、2007年年末からユーロ圏の急激な物価上昇が生じている。国際的な食料品の高騰や原油高が一因と思われる。サブプライム問題の結果としてのユーロ高、物価上昇の中での賃上げはユーロ企業の国際競争力を低下させている。景気後退にもかかわらず、インフレを懸念するECBは金利を引き下げられないジレンマの中にある。
 つまりEUはユーロ経済圏を作っているグループとEUに単に加盟しているグループとに2重化。今回のアイルランドの造反はEU統合によって自国の立場が埋没してしまうことを中小国が懸念していることや、EUのとくに政治的統合に向けての温度差を露呈させることになった。

アイルランド、再投票で条約を批准(開票2009年10月3日)
 その後、金融危機の直撃を受けたアイルランドでは世論が変化した。2009年9月の世論調査では賛成46%、反対29%、未定25%。経済的孤立への不安が高まったとされる。09年の成長率はマイナス8%。失業率は12%強と1年前に比べ倍増。
 2009年10月2日に国民投票。開票は10月3日。賛成67.1%、反対32.9%となった。これでアイルランドの批准が決まった。その後、ポーランドが批准(大統領が必要文書に署名)、最後に11月3日チェコの大統領が、同国の憲法裁判所が条約が同国憲法に違反しないと判断したことを受けて、批准文書に署名。加盟27カ国すべてで批准手続きが完了。リスボン条約は12月1日に発効する見通しになった。

EU首脳会議、初代大統領を選出(2009年11月19日)
 リスボン条約発効の見通しを受けて11月19日、ベルギーのブリュッセルで開かれたEU臨時首脳会議は、初代の大統領にベルギー首相のヘルマン・ファロンパイ氏を全会一致で指名した。任期は2年半(最長5年)。首脳会議の議長役だが、現在の輪番制よりは政策の一貫性、継続性を確保しやすくなるとみられる。外相にあたる外交代表には、イギリスのキャサリン・アシュトン氏。EUとイギリスのパイプ役であり、英国でのリスボン条約批准(2007年)の立役者とされる。両者の正式の執務開始は2010年1月1日とされる。

Area Studies
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