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JPモルガンチェースの巨額損失の公表(2012年5月10日)

規制強化の必要を示したJPモルガンチェースの巨額損失公表(2012年5月10日)
2012年5月2日 ダイモンなど大手銀行トップがFRBトップにぼるかーボルカールール(2010年の金融規制改革法に持ち込まれる。
緩和を直談判 自己勘定での取引などを大幅に制限する内容

2012年5月10日 JPモルガンチェース デリバへの投資で20億ドルの評価損を公表(SECに提出の
4半期報告書でおよび電話会見 ヘッジ取引の失敗で少なくとも20億ドル=約1600億円の損失を出した)
2012年4月以降の損失

法人プライベートエクイテイ部門の4-6月の損益見通し
約2億ドルの黒字 から 約8億ドルの赤字に引き下げ
デリバ取引の持ち高を市場動向みながら今後引き下げる方針
CEOのジェイミー・ダイモンは、ボルカー・ルールをはじめとする金融規制の反対論者として知られる
JPMorgan Chase:London whale swallows $2B, CBSNews, May 10, 2012

5月11日 フィッチがJPモルガンの長期格付けをシングルAプラスに1段階引き下げ
    リスクの取り方や管理体制に欠陥が見つかった
    一段格下げする可能性の大きいネガテブウオッチに指定
JPMorgan trader London Whale blows $13 billion hole in bank's Value, The Guardian, May 11, 2012 

5月14日 最高投資責任者であるアイナ・ドリューCIOの辞任発表
ロンドンでCDS取引で巨額の売りポジション(売り 企業の信用力の回復によりCDS指数の値下がりを予想)
CDS取引での失敗 ロンドンの鯨London Whaleのあだ名がある。
同社のCIO=最高投資戦略室が損失を出した。6週間で20億ドルの損失。
自己資本比率は8.4%から8.2%に低下。屋台骨を揺るがすものではないが
金融機関の国際競争力低下につながるとして
ボルカールール反対の旗振り役のモルガンが巨額損失を出したことで
ボルカールールなど金融規制反対はしにくくなった。
これに対してモルガンを狙って買いポジションをとるものが現れた
その結果 巨額の評価損発生(持ち高解消で実現損に移行する)
損失見込み(評価損)が少なくとも20億ドル(JPモルガンの年間利益200億ドルに比べて問題はないとの指摘もある)
(他方で損失見込み額の30億ドルへの拡大も指摘される)
背景に米連邦準備制度理事会による量的緩和
融資先が限られ高リスク投資に手を出したとの解釈

リスク判定基準に銀行の裁量を認めることに不信感広がる
(自己資本必要量を操作できる)⇒銀行への不信⇒銀行株下落

5月15日 株主総会(フロリダ)でダイモンCEOが損失発生を陳謝
5月18日 フェイスブックのNASDAQ上場 その後の暴落で史上最低の上場の評価広がる greedyの限界を露呈

5月21日 自社株買いの一時停止を公表(3月でFRBのストレステスト
合格判定を受けて来年3月までに最大150億ドルの自社株買いを公表)

6月13日 ダイモンCEOが米上院銀行委員会で証言 損失の原因について担当者がリスクを理解しておらず
チェック機能も働かなかった。
6月29日 野村証券 増資インサイダー事件への関与を認めた報告書を公表 渡部賢一CEO退任を否定
JPモルガンはリスク管理にたけた慎重な銀行との評価があった。そのモルガンが投機性の高い取引をおこなっていたこと。
舞台がロンドンであったことを考えると、規制するなら各国の協調が不可欠。

6月19日 米下院の銀行委員会 ダイモンCEOらを呼び公聴会開く

7月13日 ダイモンCEOが4-6月期決算についてのアナリスト向け電話会見
評価損の規模44億ドル 純利益49億6000万ドル(前年同期54.3億ドル比8.7%減)
デリバに伴う損失は1-3月分を合わせて58億ドル(4600億円)
⇒損失の底が見えたことで安心感広がる
純営業収益221億8000万ドル(同257.7億ドル17%減)
株主資本利益率11%(12%)
6月末の自己資本比率8.3%(3月末8.4%)
JP Morgan trader London Whale leaves London, The Guardian, July 13, 2012
JPMorgan part with the London whale, The Telegraph, July 13, 2012

7月26日 野村証券 渡部賢一CEO辞職
Nomura Chief resigns over insider trading, July 26, 2012

巨額損失事件として昨年2011年10月31日のMFグローバルH(欧州国債の大量保有で知られる
 商品先物やオプションなどデリバ仲介大手)の経営破たんなどが想起される。

MFグローバルは
10月31日10時過ぎ 連邦破産法11条申請 イタリア スペイン等欧州の国債を大量に保有。
そのため顧客資産の流出にはどめがかからなくなった。同社の社債はJPモルガンチェースなど
ガ保有。負債総額は9月末で約396億ドル(3兆900億円)。
10月31日 12億ドルの顧客資産が行方不明と報道される(NYタイムズ電子版)。米当局は
自己勘定取引を進めるため顧客資金の流用がなかったかを調べている。
11月1日 顧客資産の流用が報道される(ウオールストリートジャーナル電子版)。
11月4日 ジョン・コーザインCEOが辞任。

ゴールドマンサックスGS批判
 ニュヨークタイムズがGS元中堅幹部の寄稿を載せて注目されている。
 3月14日付 グレッグ・スミス 12年勤めた 顧客を操り人形と呼んでいる
 顧客をかえりみず自社利益を追求している とGSのあり方を批判
 <リーマンショック時にCDSの最大の売り手AIG救済で最大の受益者は買い手のGS>
  <金融危機の最中には顧客に’くず’と呼ぶ商品を売り、会社はそれを空売りしてもうけた>
 <ユーロ危機の発端 ギリシャノユーロ加盟時、政府債務を少なくみせる金融取引に関与したのはGS>

originally appeared in Aug.18, 2012
corrected and reposted in Jan.2, 2013
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