Entrance for Studies in Finance

消費者金融・ノンバンクの再編

Hiroshi Fukumitsu

概論 2006年12月の改正貸金業法制定、2007年12月の同法施行を受けて、消費者金融業界・信販業界は、再編の渦中にある。改正貸金業法により、従来、利息制限法との間にあった法定上限金利の齟齬は是正されることになった。これについては、多重債務者問題解決に向けて利息制限法への法定上限の一本化を望む声があった反面、貸金業が零細事業者の資金繰りや債務比率の高い人々への貸し手として機能していたことを評価する意見もあった。しかしこうした意見は、実際に数字の上で返済困難な多重債務の実態や、過度な返済の追及を受けて自殺に追い込まれるなどの悲惨な事例と比較して、均衡を失している。大変残念なのは、一部のマスコミや学者が、市場主義的な考え方からこの問題を市場を委ねることを主張し続けていることである。
 貸金業法の改正や、前後する裁判所での判決を受けて、過払い利息の返還請求が増加したことで、貸金業界では、返還に備えた引当金の積み立て。また利息制限法レベルへの金利適正化によって、業務内容の見直しを迫られた。金利を適正化すると、従来の顧客層とは違う優良顧客層に貸付の対象を絞り込まざるを得ない。その結果、業務規模の縮小が予想される。しかし長期的視点でみると、この変化は貸金業界の正常化、社会的地位の向上にも役立つに違いない。おそらく確かに規模は縮小するだろうが、顧客層を絞り込めれば、債務不履行率は低下し、低下した金利水準でも貸金業界は十分収益を確保できるはずである。
 問題は、銀行などが展開するカードローンなどと顧客層が重なり、優良顧客の取り合いになることで、従来のような「すみわけ」がむつかしくなることだろう。結果として貸金業界でもブランド力や法律順守(コンプライアンス)能力のある大手だけが生き残れるということは十分考えられる。しかしここは確かに議論の余地があるところだが、私たち自身がそういう方向での変化を望んでいるのではないか。
 マスコミや学者による世論誘導(改正貸金業法批判)はその意味でまったく誤った誘導だと私は考えている。

メガバンクのノンバンク戦略
実は貸金業という枠組みには消費者金融だけでなく、信販・カード、リースなどノンバンクといわれる業態に関わっている。預金をあづかることなく、貸付を行うという業態がノンバンクである。
 現在、消費者金融の分野では、プロミスと三洋信販を抱える三井住友Gと、アコムを抱える三菱UFJFGとが激しく競合している。その結果、売却方針が出されているGE系のレイク、CFJ系のディックの行方に注目が集まっている。リース・信販では、統合だけの戦略では限界があり、本体の銀行のリテール戦略を含め戦略の総合化・明確化が要請されている。リースについては、みずほ系3社の統合問題がどのようになるかに関心が集まる。
 三井住友は、2007年9月にプロミスによる三洋信販へのTOBを実現させた。傘下のカード会社4社を2008年10月には持ち株会社の元に統合。2009年4月には三井住友カードとOMCカードの2社に統合。リースについては三井住友ファイナンス&リースへの統合をすでに2007年10月に終えた。このようにノンバンク戦略で先行している。
 消費者金融ではアコムを抱える三菱UFJは、2007年4月にリース会社を三菱UFJリースに統合。三菱UFJニコスを完全子会社化。ジャックスへの出資比率は引き上げる方針。2007年春にはセントラルファイナンスを系列から失うという失態を演じたが、セントラルへの強引な圧力が反発を買った原因とされるところが三菱らしい。
 みずほは、消費者金融には参入しないとしている。カード・信販については、オリコを支援して、オリコを通じてクレディセゾンとの関係を強化する方針。傘下の、興銀リース、芙蓉総合リース(旧富士系)、東京リース(旧勧銀系)の統合が課題として控えている。

[経緯]
04/01 最高裁 みなし弁済の適用を厳格に解釈する判断示す
04-05 貸金業登録で個人で300万円 法人で500万円の純資産必要に
06/01 過払い金の返還をもとめる最高裁判決出る みなし弁済の要件の厳格化
06/12 改正貸金業法成立 上限金利29.2%→20%以下へ 完全実施される2009年末にはグレーゾーン金利は廃止 出資法の上限金利が20%に引き下げられる
   前後して顧客からの過去の上限金利を越える利息返還請求急増
   また年収の3分の1を超える貸し付けを禁止 取り立て規則も厳しく 貸金業者への規制を大幅に強化 06年12月一部施行
07/07 最高裁 過払い利息についての返還義務の判断
07/12/19 改正貸金業法 施行(4段階 影響の大きい総量規制や上限金利の引き下げは2010/06までに完全施行) 大手は金利を先行引き下げ 業界の自主規制も先行実施へ
   自主規制の内容 返済能力のチェック強化 返済を月収の3分の1 さまざま質問で聞き出す 書類を新たに求める(50万以上) リボルビングは返済期間短期化(30万円以内は3年以内 30万円超は5年以内) など
09/12 個人向け無担保融資を年収の3分の1以下とする総量規制実施へ 

2007年
N07/01/10 消費者金融各社リストラ進む シティ系CFJ(ディックなど) 07春まで に有人店舗8割閉鎖 希望退職募る クレディア 07春までに全店舗閉鎖 社員数3割カット など
N07/01/23 消費者金融各社では規制を先取りして上限金利を下げ優良顧客を囲い込む動き広がる。合わせて店舗・人員の削減などリストラ進める。
N07/02/06 大手消費者金融の審査が2006年4月頃から段階的に厳しくなった。4月頃は申し込みの承認比率は60%前後。9月50%台前半。12月各社とも50%以下へ(アイフルは38%)。
N07/02/08 経済産業省 悪質訪問販売取締りへ 支払能力厳格審査を信販に義務付け 2008年の通常国会で 割賦販売法 特定商取引法 改正案を提出
N07/02/14 アプラス 最大で500億円の増資を新生銀行グループに要請 社長に新生銀行副社長 会長に新生銀行会長で元アプラス社長が就任 
N07/02/15 信販大手 オリコ 07/03期 連結最終赤字2000億円以上 特別損失にそなえ引き当て金積み増し 繰り延べ税金資産取り崩し みずほ支援検討 
N07/02/21 アイフル 有人店舗の8割閉鎖グループ全体で2000人削減へ(2006年4月の全店業務停止でイメージ失墜)
N07/02/24 消費者金融や信販会社 今期業績 一段と悪化 
N07/03/03 武富士 有人91店を閉鎖へ 希望退職実施せず 
N07/03/08 レイク 有人店6割閉鎖 希望退職募集へ 
N07/04/05 金融庁 強引な取立て(債務者の家族に肩代わりを強要 取引履歴の開示を遅らせるなど)で三和ファイナンスに対し43日間全店業務停止命令 
07/04/01 三菱UFJニコス(UFJノコス+ディーシーカード)開業
N07/04/13 06年度下期 個人事業者の倒産急増 前年の2倍超 
N07/04/19 消費者金融 赤字1兆円 大手4社 07/03期 過払い金返還で引当金 
NE07/04/27 セントラル クオーク統合 三菱住友FG 信販3位に
N07/04/28 セントラルファイナンス 三井住友FGと三井物産に第三者割当増資 三井住友G入り 三菱UFJGから離脱へ 09/04 三井住友系クオークと合併目指す 
N07/05/03 消費者金融大手4社 最終赤字1兆7000億円 過払い返還急増 引当金計上 融資残高この1年で6兆8000億円から4000億円減る
N07/05/03 プロミス 07/03期最終損益赤字3782億円 中期的に1000人削減
N07/05/15 三菱UFJ セントラルファイナンス株4.8%分全株売却へ 600億円超の貸出金の一括返済も求める 
N07/05/29 信販5社 最終赤字5400億円 2007年3月期 過払い金返還が急増 
07/06/22 三菱UFJ 信販大手のジャックスへの出資比率を上げて傘下に。その上で三菱UFJニコスの信販事業をジャックスに統合。カードはニコス、信販はジャックス、消費者金融はアコムに振り分け。
N07/06/24 カード大手 休眠会員削減 有料化 提携カード削減 
N07/06/26 大手5社 2007年3月末の融資残高 6兆9000億円 前年度比7%減。国内銀行の個人向け融資計 113兆円 住宅ローンなど設備資金を除くと11兆5000億円
N07/07/10 07/03末登録業者数1万2000。1980年代半ばには5万近くあった。純資産の義務化があった2004-2005に急減。さらに2006末の改正貸金業法成立の影響。登録は3年有効。更新費用15万。
N07/07/20 プロミスと三洋信販が経営統合に向け交渉(実現すれば貸付金残高2兆円規模 業界トップ) 経営統合へ
N07/08/22 GEコンシューマーファイナンス レイク売却か 
N07/09/14 プロミスによる三洋信販へのTOB成立へ 取得額964億円あまり
N07/09/15 クレディアが民事再生法を申請 負債750億円 
N07/09/20 ニコス 1000億円赤字 従業員4割削減 三菱UFJ主導で経営再建 
N07/09/21 三菱UFJ ニコスを完全子会社化 約1200億円の第三者割り当て襟増資を引き受け 今後3年で従業員の4割を削減
07/10 三井住友銀リースと住商リースが合併 
N07/10/19 クレディアの破綻でクレディアの信用保証でローンをおこなってきた地銀が衝撃受ける 
N07/11/01 消費者金融大手 新たな引当金つみましなく そろって黒字に転換
N07/11/30 消費者金融 アイフル プロミス アコムで外国人持ち株比率過去最高 武富士48.0 アイフル41.8 プロミス39.8 アコム26.7 株価下落も背景
N07/12/19 信用力に低い個人事業者の倒産という副作用がでている 

2008年
N08/02/13 アイフルが1200億円増資(第三者割り当て増資とユーロ円建て新株予約権付き社債) 第三者割り当ては社長と社長の同族会社が引き受け
N08/02/27 貸し金業者の数 08/1末現在9819社 1万社割る 10年前(1998)には3万社以上あった。
08/02/28 三井住友FG カード信販など傘下のノンバンク4社の統合方針固める
08/04/25 民事再生手続き中のクレディアの再建をアドバンテッジ傘下の消費者金融かざかファイナンスが支援に
08/05/13 多重債務者対策本部有識者会議 多重債務者1年前に比べ3割減少 上限金利引き下げが効果
08/05/15 アイフル 08年3月期 277億円の黒字(前期は4112億円の赤字)
08/05/15 オリコ 08年3月期 133億円の黒字(前期は4613億円の赤字)
08/05/16 金融庁 三和ファイナンスに対して初の改善命令(親族に肩代わり求めるなど悪質な回収行為 一部業務停止) 武富士は業務改善命令(不適切記録)
08/06 シティ傘下にCFJ「ディック」 シティG日本の消費者金融事業からの撤退を発表 シティの拡大路線修正
08/7/11 新生銀行 レイク(GEコンシューマーファイナンス)の5800億円買収を発表(2060億円を超える過払い金返還はGEが負担する契約) GEから住宅ローンやクレジットカード事業も買い取る
 アコム(三菱UFJFG)やプロミス(三井住友FG)ともレイク取得をせりあう。逆張り戦略 消費者金融に傾注 新生の経営悪化 シンキやアプラスの業績悪化による。
 買収により新生銀Gの消費者金融貸付残高は8000億円程度となる。アコム、武富士、プロミス、アイフルなど1兆円を超える大手とほぼ並ぶ。
08/08/08 武富士 08/4-6連結純利益93%減
08/08/08 クレディセゾン(08年3月期連結純利益1695億円 総資産2.4兆円 G従業員3500人) 08/4-6 連結純利益15%減 オリックス(ノンバンク首位 08年3月期連結純利益1695億円 総資産8.9兆円 G従業員数1万9000人)との経営統合を交渉中

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