Entrance for Studies in Finance

Case Study : Mitsubishi Motors

Mitsubishi Motors

1999 日産とルノーの業務提携 カルロス・ゴーン

2000 三菱自 組織的なリコール隠し発覚

2003 中国東風汽車と合弁設立

2004 三菱自 新たなリコール隠し発覚

2007 ルノーがロシアのアフトワズに出資

2010 日産のEVリーフ発売

2011 日産と三菱 軽販売の開発会社設立 2013 共同開発した軽を販売

2014 タカタ エアバック欠陥発覚

2015 フォルクスワーゲン 排ガス試験で不正

2016 三菱自動車 燃費改ざん発覚

2016年4月軽自動車4車種で燃費データ不正が判明 

4月半ば 救済要請(益子社長からゴーン氏へ) 中印からの買収避ける

日産が34%出資(10月)

2016年5月 日産が三菱自との資本業務提携発表 新たに5車種で不正が判明

9月に三菱G3社と日産が合意 日産34% 三菱3社(三菱商事 三菱重工業 三菱東京UFJ銀行)で17% 計51%以上を今後10年保有する(現在は三菱3社で34%) 日産は株式取得の条件として三菱G3社との協力構築求める 9月2日付け株主間契約

日産が2016年10月内に34%出資2370億円 会長にカルロス・ゴーン社長 4人の取締役派遣 取締役から三菱自出身者を一掃 社長は益子修会長兼社長(6月に相川哲郎社長引責辞任のあと兼務 燃費改ざん問題で責任取らないことに批判あり)が留任 すでに開発部門に山下光彦氏(元日産副社長)が着任すみ 燃費不正に伴う特別損失 岡山県倉敷市の水島製作所は大幅な生産減少 など将来発生しそうな損失の一括計上 17年3月期に計上

提携による相乗効果 次世代技術開発(電気自動車の共同開発) 部品の購買・販売金融 生産面での協業(三菱ノインドネシア工場で小型多目的車MPVを日産へ 三菱のプラグインハイブリッド技術PHVを日産ルノーへ) 新興国戦略(三菱はASEANで実績 フィリッピン タイ インドネシアなど)工場間競争(工場間で競わせ最も合理的な工場に生産を移すというもの 競争力のない部品会社は容赦なく切り捨て)

なお2017年5月9日発表の2017年3月期決算 1985億円の赤字(前期の725億円黒字から暗転)

燃費不正事件 2016年4月から8月

提携先の日産自動車の指摘で発覚した三菱自動車の燃費不正はお粗末な事件だ。全く理解できないのは、三菱自動車の国内売り上げは同社の売り上げの1割だから、仮にそれが激減しても、多分三菱自動車は生き残ることだ。また仮に顧客補償や日産への補償で三菱が行き詰まっても、三菱Gがおそらくまた三菱自動車を支援すると思われることだ。さらに納得できないのは、日産は今回の不正にもかかわらず軽専門の工場を持たないため、三菱との提携がなお魅力的なので続けるとされていることだ。日産が三菱自動車の企業改革に乗り出すのも一案だが、三菱自動車の経営陣を残しての自立再建を認めるべきではないのではないか。

不正は最初は4車種について、国交省に提出する燃費試験データを改ざんていたというもの。国交省は改ざんは気が付かなかったようだ。また相川社長は不正は知らなかった、4月13日(2016年)に初めて知ったとした。日産には18日に報告したとのこと。そして20日に記者会見を開いて公表と相川社長はいかにも誠実であることを装った。でも本当に知らなかったのだろうか? 燃費の改ざんについては社内会議が繰り返され、実際の燃費の悪さについて顧客からクレームが殺到していたという報道もある。この報道が正しければ、社長は本当にデータの不正を知らなかったのかどうか。

4月26日には 25年間にわたり全車種で国が定めた方法とは異なる方法で燃費計算していたことを国交省に報告した(対象は62万5000台)。1991年から惰行法で測定が義務つけられているのに「高速惰行法」で提出していたとのこと。2001年には惰行法と高速惰行法(アメリカで使われ 短時間で可能)の比較試験をしていたというから完全に確信犯にみえる。しかし両者で大きな差は出ないともいうので ここはあくまで国が定めた方法に従っていなかったことが問題という理解でよいだろう

また問題の発端の日産自動車に提供した2車種については走行試験自体を行っていなかったことを明らかにした。これは弁護のしようがないが、これは名前が違うだけだという本音から出た行為だろうか。

他方で国交省の無能さは責任が重い。なかでも国交省交通安全環境研究所は今回の不正を見抜けなかった。走行試験を行う設備がなく、走行試験をメーカーに依存,台上試験のみ これではそもそも燃費検査能力がないといわれても仕方がない。走行試験で得られたタイヤや空気の抵抗値に虚偽申請があり、結果として台上検査の結果がゆがんだようだ。ところでこの研究所と検査法人が割れていて、研究所の方は小人数。両者の関係そして実際の検査を担う検査法人が人数面で大きいというのはいびつな感じを受ける。この「研究所」が本当に検査機能を果たせる研究所になることも、今回もとめられているのではないか。

国土交通省が作成したこの研究所の論点のまとめがある

国交省側がメーカーを検査する姿勢が必要なのに国交省はメーカーを信用しているようだ。検査をするのは、国民のために検査しているのに、そこで問題がおきたことに、この研究所は危機感や反省がないようにもみえることだ。事件発覚で最も責められてよいのは三菱自動車ではなく、実はこの研究所なのに、報道をみていると、検査で不正を見抜けなかったことに当事者としての反省が全くないことが不思議だ。

三菱自動車の2016年3月末の自己資本6876億円。自己資本比率は48%だという。ロイターの報道では顧客補償で1000億円前後が必要になるようだが、これだけ資本に厚みがあると、不正をしてもすぐには倒産しないのではないか。ところで2000年と2004年 三菱自動車はリコール問題で経営危機に陥ったにもかかわらず企業体質は改まっていなかった。現在の財務力の秘密は2004年に三菱自動車は約6000億円の優先株を発行、それを三菱東京UFJ 三菱商事 三菱重工が中心になって引き受けたという三菱Gの支援体制にある。今回も三菱Gはこの企業を守るのだろうか。支援するより、経営体質を改めるにはどうするかを三菱Gは議論するべきではないか。今回もこの会社の体質に目をつむって救済するとすれば、三菱G(なかでも支援に積極的な三菱商事)の責任は極めて重い。

三菱自動車 → 三菱G(三菱重工業・三菱商事・三菱東京UFJ銀行など)の責任(6000億円の優先株を引き受けて腐りきった三菱自動車を救済):世界で競争する技術力もなく、コンプライアンス意識が全くない三菱自動車を延命させた。三菱自動車:2度にわたるリコール隠しの反省は社内になかった。コスト改革と企業倫理を同じ役員が担当:実際には法令順守する気はなかった(商事出身の益子会長のもとで事件が起きたことは注目される 商事の垣内社長の三菱自動車との協力を継続するとする発言は注目される こうした商事の姿勢が三菱自動車の徹底した改革を妨げているのではないか)。 

国(国土交通省)は業界と癒着しメーカーが出す試験データをそのまま利用して燃費検査をおこなってきた。性善説に依拠→虚偽申告に厳罰(担当者・役員に対する刑事罰・実害を上回る懲罰的罰金など)が必要。

日産自動車が対応を決定(5月12日正式発表 トヨタ VW GM に次ぐ4極の誕生へ 日産は2011年から三菱からOEM供給受ける この提携のため先行するダイハツのミライースに対抗できる 燃費の良い軽の開発を急がせたことがデータの不正につながったとの説明がある。提携ブランド「デイズ(三菱での名前はekワゴン)」は2013年から日産で発売された)。三菱自動車に経営再建に自主性を認めるとのゴーン社長の発言(5月16日)。5月24日(三菱自動車は6月24日以降の経営体制を発表 商事出身の益子会長は日産の出資まで暫定の会長兼社長 副社長に日産、商事、三菱東京UFJから各1一人の計3人。)5年間の協業の効果を踏まえて開発・購買の統合。基本合意書の締結(5月26日)。2373億で第三者引受、出資比率を34%まで引き上げるとのこと(8月末までに資産査定 10月をめどに出資)。 

5月18日 スズキの燃費不正の発表(計測方法が国の定める方式と違い問題はあったが、燃費そのものに不正はないと説明した。。。。わかりにくい。三菱の場合は数値自体の改ざんもあったことが罪深いことは確か。スズキが屋外路上のテストをしなかったのは、テストコースに必要な投資を倹約したためとも批判された)

5月期 三菱と日産の軽自動車販売が落ち込む(対象車種の販売停止 ブランドイメージ低下が響く)。問題発覚後 ホンダ ダイハツ スズキが伸びたとのこと。しかし5月18日のあとは スズキも激減へ。

6月17日 三菱 燃費の改ざんがあった4車種の顧客に一律10万円を賠償(ガソリン代の損失を補償) 過去10年についてのの新たな調査でみつかった軽以外の5社車種については一律3万円支払うとのこと、2017年3月期に約500億円の特別損失を計上。

6月24日の株主総会で生え抜きの社長(相川) 開発担当副社長(中尾)は退任。日産から開発担当副社長に山下(日産の元副社長)。三菱UFJから財務担当副社長(池谷) 三菱商事からはも副社長(白地)を迎える。3社で三菱を支えることを明確にした。大変奇妙なのは責任が大きいはずの益子会長(三菱商事)は日産の出資が完了するまで暫定的に残り社長を兼務すること。コンプラの意識が低かった原因が追究されるべきだが、問題を引き起こした益子会長が社長を務めることで、社内意識の改革は可能だろうか? 

8月末(8月30日)には国土交通省の燃費確認試験の結果 カタログ値と実際の検査結果とのかい離も明らかになった。問題は実際の結果がほとんどの場合でカタログ値より悪いということ。意図的なデータの選択があったとされる。

2017年6月3日更新(2016年10月26日up)

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