Entrance for Studies in Finance

日本の証券市場 時価総額・上場企業数・売買代金

東証の株価
 2006年末から2009年末にかけて、東京証券取引所(TSE: Tokyo Stock Exchange)の上場会社数は大きく変化していないものの微減。09年末の東証の上場企業数は2,319社(東証一部は1,684社)。TSEの上場会社数のピークは2007年5月の2425社。企業グループ再編(完全子会社化、合併)による上場廃止が進む一方、新規株式公開は停滞。企業の組織再編による上場数の減少を埋めるだけの新規公開がない。また内部統制報告書、四半期決算の作成など上場のコストの増加。他方では株価低迷による資金調達のメリットの減少。
全国5証券取引所の上場企業数は2011年8月末で3,596社(2010年末では3646社 2009年末との比較で93社減少 なお年末のピークは2007年末で3942社)。月末ピークの2007年6月末に比べて2011年8月末は約350社減少。減少理由は、新規上場の減少(2009-2010年の新規上場は年間20社程度)、親子上場の解消を目的(東証の場合は6割が親子上場の解消目的 事例 2011年4月:パナソニックによるパナソニック電工と三洋電機の完全子会社化による非上場化 2010年には上場会社は128社減少 うち日立が日立マクセルなど5つの上場子会社を完全子会社にするなど54社の例)の上場廃止の増加などを受けたもの。このほかMBO(経営陣が参加する買収)など非公開化を選んだもの15社。経営破たんを理由とするものは2010年中7社。新規上場は22社。
 親子上場の解消は、まず統合による営業面でのメリットがある。他方、上場の継続は利益相反の可能性、経営判断の迅速化に支障。現在、みずほFGが傘下の証券2社と信託の完全子会社化を検討中。
 2010年の上場社数減少の主要因:上場子会社の完全子会社化(親子上場の解消)問題
他方、時価総額は2008年にかけ2年間で半減。ただし2009年末の東証の上場企業時価総額は2008年末よりは戻して308兆円(東証一部は303兆円)となった。2006年から2009年にかけて新興株市場では時価総額は半減。売買代金は4分の1以下に縮小した。新興株市場がひどく落ち込んだことがわかる。
 東証一部の売買代金は、2006年から2007年にかけては膨らんだものの、2007年から2008年にかけては急減した。2009年は1年を通じて低調でとくに2009年冬は記録的な低い商いとなった。2009年の東証の年間売買代金は374兆円(東証一部は369兆円)にとどまった。

2010年末上場会社数
 日本は5取引所で3646社前年比93社減 2007年ピークに3年連続減少
 中国は上海が894社で24社増 深圳が1169社で339社増
 シンガポールは778社で5社増
 インドムンバイは5034社で79社増
 先進国では減少傾向 新興国で増加傾向

株式の時価総額
 米国17.3兆ドル 中国6.7兆ドル 日本4.1兆ドル(2010年末 国際取引所連盟による)
 2010年末時価総額のGDP(IMFによる2010年10月時予測)に対する比率
 米国118% 中国117% 日本71%
 企業の平均ROE(バークレイズキャピタルの調査)
 米国14% 欧州11% 新興国14% 日本7% 

日本企業の収益力の低さ
 2009年度ROE(%)
中国移動(中)サムソン電子(韓)現代自動車(韓)NTTドコモコマツトヨタ自動車
24%15141142


東証と大証の合併問題
 2011年3月9日 大震災の直前に浮上(当時 東証は2011年秋の自社株式上場も計画していた)
 統合のメリット
 デリバ・現物の双方に強い市場の形成
 システム投資の効率化
 経営規模の拡大で海外証券取引所との提携交渉も有利になる 

 大証はすでに上場(2001年に株式会社化 2004年に自社株をヘラクレス 現ジャスダックに上場 時価総額1053億円)。株主の主体は外国人。大証は金融派生商品中心(2010年度取引高は大証2億1440万単位対東証2762万単位 国内デリバ市場では大証が5割 東証が3割という言い方)。純利益は互角。大証91億円 東証は88億円(現物株中心の東証は審査などの負担が大きくデリバ中心の市場に比べて収益性悪い 他方デリバ市場は国際競争激しい 日経平均はシカゴやシンガポールでも上場)。資産規模で大証は東証の2分の1以下 大証528億円 東証1247億円。
 大証を存続会社としての合併案。⇒裏口上場となる。
 東証は非上場(2001年株式会社化 2007年持ち株会社化 推定時価総額は2000億円程度)。その株主の主体は中小証券会社に約110社。東証は現物株中心(2010年度の上場会社数は東証2280社対大証1732社。売買代金は380.5兆円対16.9兆円。売買代金で東証は大証の22.5倍 東証のシェアは9割以上 なお東証の売買代金の6割は海外投資家によるもの。アジアにおける売買代金首位の座は2009年に上海証券取引所に奪われた。なお2011年1-3月は一時3位に復活。背景には中国の中央銀行が2010年秋以降 金融引き締めに転じたこと。海外と比べた割安感から日本株を買う動きが高まったこと。トップはNYSE4兆4626億ドル 2位がNASDAQーOMX 2兆8920億ドル 3位が東証1兆2462億ドル。4半期ベース売買代金での東証のアジア首位は2010年4-6月期以来。)。
 東証によるTOB案。⇒大証は上場廃止で不満。
 折衷案⇒3分の2まで66%までの上限付きTOBを実施。その後、大証を
 存続会社とする逆さ合併を実施する(複雑だが両社の顔を断つ立つ案)

取引所再編論議の背景
 私設(代替)取引の急拡大 2010年度の売買代金は約4兆3000億円(国内でPTS運営は7社 取引所経由は約397兆円の1%)。売買手数料安い。
 利用は海外の機関投資家中心(自動発注システムが利用されることでPTSに取引が流れる)
 2011年6月の売買代金が初めて1兆円超えた(1兆809億円 前月比28%増 最大手チャイエックスだけで5155億円 同31%増)
 2011年7月の売買代金は1兆1441億円。前月比6%増。外国人投資家に加え国内機関投資家 個人がPTSに移り始めている
 2010年夏から増えてきた。 日本証券クリアリング機構が主要PTSでの売買決済の保証を始めたことで安全性高まった。
 2010年7月 野村HD傘下のチャイエックスが日本に参入した。
 2011年6月下旬 SBI証券が自動発注システム導入。ネット証券のサービス拡大で個人投資家にも利用広がるのでは。
 2011年5月―6月 国内上場株取引に占めるPTSのシェアは3%台に高まる。
 欧米では個別株の4-5割が取引所からPTSに流れている。

東証一部二部マザーズ
暦年年末上場企業数年末時価総額年間売買代金
20062,391549.8673.8
20072,389483.8752.2
20082,373283.5576.3
20092,319307.8373.9
金額単位は兆円

東証一部
暦年年末上場企業数年末時価総額年間売買代金
20061,715538.6644.3
20071,727475.6735.3
20081,713279.0568.5
20091,684302.7368.8


東証二部マザーズ
暦年年末上場企業数年末時価総額年間売買代金
200667611.2(3.9)29.5(22.1)
20076628.2(2.8)16.9(13.6)
2008660(198)4.5(1.2)7.8(6.1)
2009635(183)5.0(1.5)5.1(3.8)

()内はマザーズで内数

東証一部1日当たり売買代金(3ケ月平均)
08/1-32.73
08/4-62.48
08/7-92.20
08/10-121.87
09/1-31.43
09/4-62.24
09/7-91.49
09/10-121.44
10/1-31.49
10/4-61.65
金額単位は兆円

東証の上場会社数 時価総額 取引金額などの推移 → 東京証券取引所
 世界の主要取引所の時価総額 取引代金 → 国際取引所連盟(WFE)
世界の株価動向を反映する指数 → MSCI世界株指数

世界の株価  
 2007年10月末 ピーク 
 2008年8月末 WFE49兆628億ドル(約5100兆円)   2007年10月末比14兆ドル減った
2008年9月末 世界の株式時価は42兆ドル前後  2008年10月末比21兆ドル(2100兆円前後目減り)
 2009年2月末 世界の株式時価は28兆ドル台(底)
 2009年2月末 WFE主要52取引所 28.7兆ドル 
 2009年6月末 約37兆ドル(構成比率でアジアの比率が2001年頃より上昇して3割強 欧州を抜く)
 2009年10月16日 WFE44.8兆ドル 
 2010年4月末 世界の株式時価は約49兆ドルに回復
 2010年5月下旬 43兆ドルまで減少

Written by Hiroshi Fukumitsu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
originally appeared in Jan.19, 2009
corrected and repostd in July 26, 2010 and Sept.22, 2011
証券市場論講義 証券市場論リンク
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「Securities Markets」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
2024年
2023年
人気記事