11月17日(水)晴れ【聖徳太子考(7)十七条の憲法その4】
本日は17日です。あらかじめ記事の下書きをしておきましたので、なんとしても「十七条の憲法」を一通り終わりにしたいと思います。あまりに切ないことのあった日なのですが。人間にとって、人の死よりも一大事はありません。他のことはなんであっても乗り越えられますが、死を乗り越えることはできません。受け入れるしかありませんが、あまりに幼い子の死は、あんな幼い子が一人で旅立つのかと思うと。私がご葬儀をつとめなくてはならないことは辛いことです。
十六に曰く、民を使うに時を以てするは、古の良典(よきのり)なり。故に、冬の月には間(いとま)あり、以て民を使うべし。春より秋に至るまでは、農桑(のうそう)の節(とき)なり。民を使うべからず。それ農(たづく)らざれば何をか食(くら)い、桑(こがい)せずば何をか服(き)ん。
★民を労役に使うときは、冬の間が農耕の仕事がないのでよいでしょう。農耕に適した時期に民を遣えば、食べるものにことかいて困るし、蚕の時期ならば着ることに困るであろう、と、実に細やかな配慮の有る太子であることがうかがえます。*桑(蚕飼い)
十七に曰く それ事(こと)は独り断ずべからず。必ず衆とともに宜(よろし)く論ずべし。少事は是れ軽(かろ)し。必ずしも衆とすべからず。ただ大事を論ずるに逮(およ)びては、もしは失(あやまち)あらんことを疑ふ。故に、衆とともに相弁ずれば、辞(ことば)すなわち理(ことわり)を得ん。
★ことを行うにあたり、皆さんと議論したほうがよい。独断専行は往々にして問題がありますね。しかし、小さな事は、自分で決めてもよいでしょう、と細かいことまで、太子は述べられています。実際、細かいことまで相談していては、為すべきことまで、時期を逸してしまうこともありますね。責任者がある程度のことは、責任をもってことをすすめたほうがよいこともあります。ケースバイケースですが、太子はそのようなことまで、やはり見通されていたことがうかがえます。太子が飾り物ではなく、実務をこなされていたことがよく分かる条文です。
明治天皇が諸侯や公家などに示した新政府の基本方針である「五箇条の御誓文」の第一条に「広ク会議ヲ興(おこ)シ万機公論(ばんきこうろん)ニ決スヘシ、と、一番に述べていますが、これは十七条の憲法の影響が当然ありますね。
原文
十六曰、使民以時、古之良典。故冬月有間、以可使民。從春至秋、農桑之節。不可使民。其不農何食。不桑何服。
十七曰、夫事不可獨斷。必與衆宜論。少事是輕。不可必衆。唯逮論大事、若疑有失。故與衆相辮、辭則得理。