SF短編集である。
彼の処女作『横浜駅SF』をいたく気に入ったのでハヤカワ文庫から出た柞刈湯葉『人間たちの話』も手に入れた。
『横浜駅SF』を読んで最初に思い出したのは 椎名誠氏の『アド・バード』で、実際あとがきにも柞刈氏も椎名氏が大好きでその影響が出ている、とあった。
この『人間たちの話』にも椎名氏の影響のある話(あとがきにもそうある)も入っているけれど、バラエティに富んでいる。6編入ってますからね。
柞刈氏は生物畑出身なんである。そこに興味のあるわたしとしては好奇心をそそられる。とはいっても如何にも生物してます、なんて話はないよ。そこが氏の漠とした広さを表しているようでおもしろい。
それぞれの話は全然違う舞台で登場人物もシチュエーションも違うのだが、妙に登場人物に共感できるのだなあ。 いや、 ぺたぺたと 分かるう ! みたいなことにはならないのだけれど、 そうだよなあ、 みたいな気分にはなれた。その微妙な距離感がすごく気に入った。 人間いろいろありますよ、あなたの思いもよらないわたしかもしれないし、わたしの思いもよらないあなたかもしれないし、でも存在してるんだよね、っていう感じ。通底しているのは「愛」ですかね。すう~っ と薄くね。それくらいがいいよ。
6編のうちわたしがいちばん身近に感じられたのは「たのしい超監視社会」だな。うん、大いにあり得る。
何にせよ生まれたからには死ぬまで生きてくのだ、せめて楽しみたいものだよ、と思いました。