フェンタニル

2024年12月14日 15時25分19秒 | Weblog

概要

[編集]

フェンタニルは、主に鎮痛薬として使用される強力な合成ピペリジン系オピオイドである。ヘロインの50倍、モルヒネの100倍の効力を持つ[19]。主な臨床用途は、がん患者や手術患者の術中・術後疼痛管理である[20][21]。フェンタニルは処置時の鎮静・鎮痛にも使用される[22]投与方法にもよるが、フェンタニルは非常に即効性があり、比較的少量で過剰摂取を引き起こす可能性がある[23]。フェンタニルはμオピオイド受容体英語版を活性化することによって作用する[17]

作用は急速で、効果は通常2時間以内に消失する[17]。医療では注射、鼻腔スプレー、皮膚パッチ、トローチ、錠剤などの剤形で頬粘膜から吸収させて用いる[17][24]。医薬品としてのフェンタニルの有害作用は、他のオピオイドの有害作用と同じであり[25]依存症せん妄呼吸抑制(重度かつ未治療の場合、呼吸停止に至る可能性がある)、傾眠吐き気、視覚障害、ジスキネジア幻覚せん妄、「麻薬性せん妄」として知られるこれら精神症状の組み合わせ、イレウス筋硬直便秘意識消失英語版低血圧昏睡死亡などである[22]アルコールと他の薬物(例: コカインおよびヘロインなど)は、フェンタニルの副作用を相乗的に悪化させる。ナロキソンは、オピオイドの過剰摂取の影響を拮抗することができるが、フェンタニルは非常に強力であるため、複数回のナロキソン投与が必要な場合がある[11]

フェンタニルは1959年にポール・ヤンセン(Paul Janssen)英語版によって初めて合成され、1968年に米国で医療用として承認された[17][26]。発売から20年以上、作用時間の短い注射薬のみであったが、様々な剤形の開発が進められた。1990年代には、有効成分を皮膚から長時間送達するために経皮吸収パッチが開発された[27]。1998年にはトローチ製剤が承認され[28]、2009年には口腔粘膜吸収製剤として水溶性フィルムが承認された[29]。2011年、速放製剤のバリエーションとして、フェンタニルを鼻から投与することも可能となった(点鼻薬[30][31]。2015年には、世界中で1,600キログラム(3,500ポンド)が医療に使用された[32]。2017年の時点で、フェンタニルは医療で最も広く使用されている合成オピオイドであった[33]。2019年には、米国で最も処方されている薬の278番目であり、100万以上の処方があった[34][35]。フェンタニルはWHO必須医薬品モデル・リストに掲載されている[36]

フェンタニルは、アメリカにおけるオピオイド過剰摂取の流行英語版に拍車をかけ続けている。2011年から2021年まで、処方オピオイドによる年間死亡者数は横ばいであったが、合成オピオイド過剰摂取による年間死亡者数は2,600人から70,601人に増加した[37]。2018年以降、フェンタニルとその類似体が米国における薬物過剰摂取による死亡のほとんどを占めており、2021年には71,238人以上の死亡を引き起こしている[38][37][39]。フェンタニルは、2018年にヘロインを抜いて以来、米国における薬物過剰摂取による死亡の大部分を占めている[38]アメリカの国立法医学研究所英語版は、連邦、州、地方の鑑識によるフェンタニルの報告は、2014年の4,697件から2020年には117,045件に増加したと推定している[40]。フェンタニルは、コカインやヘロインなどの他の薬物と一緒に混合されたり、摂取されたりすることが多い[40]。フェンタニルは錠剤の形で報告されており、その中にはオキシコドンなどの医薬品を偽装した錠剤も含まれている[40]。他の薬物と混合されたり、医薬品として偽装されたりすることで、過剰摂取の場合に正しい治療法を判断することが難しくなり、その結果、死者が増えることになる[22]。フェンタニルと混合された他の薬物の服用による過剰摂取を防ぐために、薬物検査キットが利用可能である[41][42]。フェンタニルは製造が容易で力価が高いため、密造密輸も容易であり、その結果、フェンタニルは他の乱用される麻薬に取って代わり、より広く使用されるようになった[43]

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 中国「人民」の暗黒時代が来た! | トップ | 不法移民追放にアメリカ軍投... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

Weblog」カテゴリの最新記事