Fuji Trip!

水豚先輩の週末旅日記

山陽オトナの修学旅行 車内篇

2015-06-24 01:02:54 | とらべる!




さてさて、私たちを乗せたのぞみ号は新横浜駅を出発すると次は名古屋まで停まらない。
静岡全スルーという奴である。

とりあえずは相模の平野をまっすぐ進む。
丹沢の山々背後に富士山が見え隠れするのだが、ビルがいちいち邪魔をしてくるので写真は撮りづらい。

小田原駅を過ぎてトンネル区間に入れば、いよいよ始まる長い長い静岡県。
車内の電光掲示板は丁寧に通過した駅を教えてくれるのだが、熱海からはじまり浜松まで静岡県内には6つも駅がある。
座席が通路側だったこともあり、デッキも近いから時折はデッキに赴いて景色を眺めることにする。





 

三島駅あたりから進行方向右手には富士山が見えるのだが、先程神奈川県内で見えていたにもかかわらず、雲がかかってしまっている。
見えるのは長い裾野だけ。

新富士駅までの区間はは、沿線に工場が多い。
紙の工場が多いと何かの本で読んだことがある。

近隣の田子の浦は1960年代に公害問題にもなった場所である。

そういえば、1971年に公開された『ゴジラ対へドラ』という作品を以前に観た。
田子の浦のヘドロ問題を扱った特撮映画で、劇中では駿河湾からヘドロ怪獣が誕生し、静岡県を舞台にゴジラと死闘を繰り広げる。

この映画はゴジラ作品の中でも異端の存在で、劇中にゴジラが空を飛ぶのである。
これには賛否両論があるらしい。

というような、どうでもいい記憶が景色と共に流れ去っていく。


 

 

しばらくは座席に戻って、もう一度デッキを訪れるころには天竜川を渡っていた。
富士川、大井川を渡って、最後に天竜川を渡れば、静岡県もあと少し。

浜松駅を過ぎれば、浜名湖が見えてくる。
広々とした湖と別れを告げれば、県境はもうすぐ。


豊橋を過ぎると名古屋都市圏に突入。
並走する東海道線や名鉄電車を眺めているだけでも楽しい。

ビルの広告も見慣れないものが多くて、追う目が忙しくなる
もうちょっとゆっくり走ってほしいのだが、そうはいかない。

名古屋駅で降りる人がデッキに向かい始めたので席に戻ろう。






席について、持参した柳田國男をぺらぺらと読んでいても、なんだか落ち着かない。
というよりも本のチョイスを間違えた感がある。
高速で走る乗り物と柳田國男がまず似合わない。

スーパーで安売りしていたひな祭りチロルが可愛かったので買ってきたのだが、どうやら箱がひな壇になるらしい。

 

 



こういう旅行の時にはみんなでシェアするのが楽しいので買ってきたのだが、皆はぐっすり眠っている。
それはそうだ、オールでカラオケ行って、その前の日の夜は打ち上げでこれまた朝方まで起きていたのだから。

1日休んで元気いっぱいな自分の目だけが冴えまくっている。
気付けばチロルを積んでいた。


席とデッキのうろうろを続けて、ついに山陽新幹線に入るとトンネルが続くので諦めて寝た。

 



11:14
広島駅に到着。
電車を降りると、大きく伸びをして、ほっと一息。

この場所に降り立つのは実に6年半ぶりのことだ。
私は中学の修学旅行が広島と京都であった。

その時は新幹線も広島も初めてだったものだから、よく覚えている。

これから向かうのは、あの時と同じ、宮島である。

 


山陽オトナの修学旅行 はじまり篇

2015-06-21 01:03:25 | とらべる!


大学に入ってからというもの、春休みというと部活の人たちと旅に出る。
長い春休みを利用して出かけられるのは高校3年生と大学生の特権である。

1年の頃は京都を朝から夜まで楽しみ、2年では贅沢にオーシャンビューの旅館に泊まった。
今回はどうやら食べまくる旅になりそうである。
参加者ももちろん違うから、それぞれに影響し合って、毎回テーマが変わるのは楽しい。

目的地は山陽地方。
広島県と岡山県の周遊である。

個人で出かけるのであれば、もちろん新幹線など贅沢な乗り物は利用しないが、大勢で行く場合は安かったりもする。
近畿日本ツーリストのWEBプランで新幹線往復とホテルがセットになったプランで2泊3日25000円ぽっきり。
これは安いということで、久々に山陽新幹線に乗車することになった。

私は旅に出るときは必ずタイトルをつける。
今回のタイトルは「山陽オトナの修学旅行」。
先程、食べまくる旅といったが、それ以上に山陽地域には世界遺産をはじめ多くの名所がある。
それこそ修学旅行のようにあまりにも有名な名所も見学する一方で、時間制限や門限に縛られることのない自由なオトナの旅行。
春の訪れを告げるような、西への旅が始まる。



3月17日。
空はすっきりと晴れ渡っている。
6時台の中央線はすでにもう混雑しているが、集合場所となる東京駅の八重洲口は意外にもすっきりとしている。
もしかしたら他の人は京葉線の地下ホームとかに吸い込まれたり、さっさと新幹線に乗り込んでいるのかもしれない。

この部活の人たちのよくわからないところは、旅行の前日に前夜祭を行うところである。
池袋のカラオケボックスで一夜を明かしてこの場所へ来た人が半数以上というから驚きである。

今回の参加者は10名、うち1人は2日目の現地合流となっている。
適当に買い物を済ませたら、東海道新幹線のホームに上がって、7時10分発の「のぞみ9」号に乗車する。
車両の入り口には「N700A」と書いてあるので、ちょっと新しいやつである。







広島到着時刻は11時14分。
乗車時間は4時間あまりである。

新幹線の車内はやはりサラリーマンばかり。
高速化を求めてしまうあまり、新幹線の車内ではみんな到着するのを待っている感じがあまり好きではない。
旅は行程も楽しみたいところ。
快適ではあるけど、窓は小さいしなあ。

しかし、都市圏を結ぶ大動脈であるから仕方ない。
広島に着くのを大人しく待とう。


夏の日

2014-08-27 11:56:32 | とらべる!


昨年より、夜が濃い旅になっている。
夏の夜は短いけれど、時折涼しい風が吹いて昼間よりも活発になる。

盛り場の賑わいを感じて、最後には終着駅に行きたい。
降りる人はいても乗る人はいない終着駅で、行き場のない寂しさを感じるのが良い。

旅には何処か寂しさがある。
盛り場にいても、終着駅にいても同じような気がする。

寂しさは連れがいては感じる事ができない。
旅行と旅は違うのだな、と思った。


名古屋のりものづくし 終章

2014-05-06 23:44:19 | とらべる!


富士山を眺めつつ夕暮れ時を迎え、左に富士右に太平洋というような絶景を楽しみながら再び山間に入るころにはとっぷり日は暮れた。

周囲が何も見えない足柄SAで2度目の休憩があり、用もなく外へ出て寒いのにアイスを買った。
足柄SAと言えば高速道路のサービスエリアの域を逸脱し観光地化していることで有名で、首都圏からサービスエリアを目当てに出掛けてくる人もいるらしい。

すでに御殿場を過ぎ、ひと山越えれば神奈川県である。
知っている場所に着くと、いくらか気持ちに余裕が出てきて仕舞にはアイスなど買ってしまう。

状況によってはこの先の区間は渋滞も覚悟しなければならないが、平日ということもあって順調に流れているようだ。

足柄から先の峠越えは蛇行し隧道を駆使して越えていく。
名古屋インターからここまでは特に目立ったカーブはなかったため、この付近の地形がいかに厳しいかわかる。
下り方面の道路はしばらく離れたところを走っているらしく、見えない。

大井松田ICを過ぎるとよく知る高速道路の姿に戻る。
伊勢原、厚木、大和と停留所に停車するので、東京駅に出るよりもこのあたりで降りた方が本当は早かったなと思う。




夜の高速道路のオレンジ色の照明は個人的には好きで、等間隔に照らすリズムに乗せて音楽を聴くのもいい。

東京ICを越えれば車線は減り、ビルの合間を抜ける首都高速に変わる。
見事にビルとビルの間を切り裂くように走るので、海を切り裂くモーゼの奇跡を思い起こしてしまう。
そんなことを思うのも、道路が空いているからで普段の首都高で思うことはなかっただろう。

霞が関で一般道に降りて、人の少ない官庁街をゆっくりと進んでいく。
久しぶりの信号機に行く度も足止めをくらいながらも、バスは定刻通りに東京駅に着く。


この3日間私は歩くことをあまりしていなかったように思う。
しかし普段の生活の何倍もの距離を移動し、移りゆく景色を見てきた。
用もないのに、地図を広げて旅をした。

移動中、常に景色は変わるのでなかなか飽きることはない。
飽きたら本を読んで、それでもつまらなければ寝ればいい。
とても御贅沢な気分転換だ。

まだ見たことのない景色が多すぎて、「何も考えず」とまではいかない。
内田百のような奔放さは足りないかもしれない。

しかし、旅は何気なく落ちている疑問を拾う行為でもあると思う。
行先までの移動はお任せして、私はただ揺られているだけ。

そのあいだに車窓の景色には、いくつもの発見がある。
そして時には旅を思い、旅を振り返る。
自分のペースで考え事しながら旅は進んでいく。

それが自分に合った旅。
乗り心地とまだ見ぬ車窓に誘われて、また旅に出る。

そしてまたひとつの旅行記ができた。


名古屋のりものづくし[名城線-桜通線-スーパーライナー]

2014-05-06 05:00:49 | とらべる!

最終日は東京へと帰るのみだが、家に着くまでが遠足というのが掟。
最後の最後まで少しでも多くの乗り物を乗りつくし、楽しもうと思う。

まず、昨日までは名鉄のフリーパスを使用していたが2日間で期限が切れたため、名古屋駅までは地下鉄で向かう。

宿泊地を出て、大通公園を歩きつつ、名城線の栄駅を目指す。
今日も天気が良く、青空を突き刺すように名古屋テレビ塔が建っている。
鉄骨本来の飾らない姿が魅力的で、スタイリッシュな女性のような印象を抱くのは私だけだろうか。

以前にテレビ塔やその周辺は散策したことがあるため、少しだけ眺めたら地下へ潜る。
名城線は一昨日も乗り継ぎで幾度か利用した日本で唯一の地下鉄環状線。
残念ながら今回も1駅区間しか利用しない。

名古屋駅へは矢場町駅から東山線、もしくは久屋大通駅から桜通線のどちらを利用しても行くことができる。
桜通線は今回まだ乗っていないため、久屋大通経由で行くことにする。
栄駅から「右回り」の名城線に乗車。「右回り」という表記が環状鉄道らしい。

休む間もなく久屋大通駅に到着。
早いなと思って調べてみると同駅区間は400mしか離れていないらしい。
降りたホームからはエスカレーターに乗るだけで桜通線のホームへと降りることができる。




桜通線は名古屋交通局では一番新しい路線らしく、幅の広いホームとホームドアがそれを物語る。
この路線が中村区役所-今池間で開業したのは1994年のことで、その後順に路線を伸ばして2011年には郊外の徳重まで延伸している。
後に開業した区間は鉄道空白地帯を走っているが、利用者は今一歩のようである。

到着した「中村区役所行き」の先頭車に乗る。
走行中、見るともなく地下鉄の真っ暗な車窓を見ていると、トンネル内で分岐線を見つけた。
路線を左に分けて、引き込み線のようになっている。怪しい。
無機質な地下だからこそ不自然な空間にそそられてしまう。

後に調べると、丸の内駅で交差する鶴舞線との連絡線らしい。
もちろん旅客用ではないので通過することはできないが、名古屋にも隠れた地下線が存在することを知った。
機会は少ないけれど、地下路線を眺めていても発見はある。





まだ名古屋駅に着かなければならない時刻まで余裕があるので、一つ手前の国際センター駅で下車する。
ホームの先に未使用の部分があり、入ることはできなくなっている。柵が設けられは増結に備えてあるのだろうか。

改札を出ると、長い地下道が名古屋駅方面に伸びている。
ユニモールと呼ばれる地下街になっており、1駅区間歩けてしまう。
栄の地下街と同じく、ショップが軒を連ねてデパートのように充実している。


地上へ出て、書店に立ち寄ってからJR名古屋駅を抜けて太閤口へ。
一昨日降り立った太閤口のバスターミナルに戻ってきた。

東京へはここから高速バスで帰る。
東京-名古屋間は毎時1本は運行されていて便利だ。
バスは東名高速を経由するものが大半を占めているが、中には中央高速や新東名を経由する便もある。
特に最近は新東名の開通によって、最短時間で結ぶ便は新東名を利用している。

便によって途中停車するバス停や車の設備が異なるので、バスも鉄道と同じのように複雑。
そのため、選び甲斐もある。

ぜひともこの機会に新東名を通ってみたかったのだが、同じ料金で乗るのなら独り身は三列シートが嬉しい。
2階建てバスであれば2階席先頭を指定する事ができれば、東京までの6時間、飽きるほど景色を眺めることができる。
高速バスネットで3列シート車の2階席先頭を予約できたので、新東名は諦めることにした。

バスによってはコンセントが付いていたり、3列シートより少し贅沢なビジネスシートやプレミアムシートの付く便もあった。
時間と相談しつつ、様々なバス旅を楽しみたい。


乗車するのは「スーパーライナー22号」。
ネーミングはもう少しどうにかならなかったものか。
新幹線に「はやて」や「やまびこ」といった日本名の愛称が付くのはなじみ深いが、高速バスはカタカナ文字の愛称が多いようだ。
「ドリーム号」や「ファンタジア号」といった具合に付けられている。

スーパーライナーの所要時間は6時間16分。
新東名を使うと最短5時間というから驚き。

人の少ない待合室で案内放送が流れて外へ出ると、大きな二階建てバスが待っている。
早速改札を済ませて2階へ上がる。
さすがに天井は狭く、進むには頭を下げる格好になるが、座ってしまえば問題はない。




2階建てバスの目線は思ったよりも高く、非日常的で少し目が回る。
高速バスの事故が近年立て続けに起こっているので、意外と人気のない席かもしれない。


13:00 名古屋駅発

定刻通りに名古屋駅を出発。
さようなら、名古屋。と言いたいところだがしばらくは市街地を走る。
スマートフォンのマップを利用して現在地を追いつつ景色を眺めると、今回の旅で通った路線の真上を走ったりもする。
幹線道路の幅は広く、片側三車線の道が続く。
路線バスに自家用車と交通量も多く、バス停でも停車するため高速道路に入るまでに40分ほどかかる。

名古屋インター付近で高架を走る東山線と別れを告げると、東名高速に入る。
運転が一定の速度になると急に眠たくなって少しの間眠りについた。
昼寝をしたところで東京に着いていたりはしない。

起きると、すでに愛知県から静岡県に入っていた。
静岡県は長い。新幹線に乗っていても感じる静岡の横長はバス移動ならば、なおさらだろう。




いい感じにお尻が痛くなってきたところで、浜名湖SAにて休憩。
乗客のほとんどが外へ出て伸びをしつつ施設へ向かっていく。
与えられた時間は少なく、売店にてお菓子を購入していたら浜名湖を眺めている時間はなかった。




気を取り直して出発すると、バスはすぐに浜名湖を渡った。
予想していなかった絶景だ。

新幹線から眺める浜名湖よりも、内陸部のために入り組んでいる。
車窓左側は奥浜名湖というらしい。


新東名経由の場合は三ヶ日ICで分岐するため、浜名湖は見ることができない。
ちょっと得した気分で、次は富士山が見えるのを楽しみに見慣れない車窓を眺め続ける。

高速道路の良いところは、県境や市境に看板が出ているところ。
絵入りの看板には幾度も茶畑が描かれているのが静岡らしい。

浜松、袋井、掛川と東海道における静岡比率の高さを改めて実感することになる。
江戸時代のお伊勢参りを筆頭とした東海道の旅ではいったい何日間、静岡で過ごしたのだろう。

新幹線は最新技術を持って静岡県を完全無視して新横浜-名古屋間を1時間半弱で駆け抜けている。

移動の時間は短縮されて過程が待ち時間になったとき、旅は旅行へと変わってしまった。
「旅は憂いもの辛いもの」。目的地までの過程こそ、旅なのである。

ならば長い静岡の区間こそ、旅の醍醐味でもあると思う。
現代の旅人、時に明媚な景色に心奪われながら、焦らずに目的地を目指そう。


名古屋のりものづくし[名古屋本線-中央線-瀬戸線]

2014-05-06 00:40:31 | とらべる!

列車は地下に入るとすぐに名鉄名古屋駅に到着。
ミューチケットは名古屋駅まで購入していたのでここで下車する。

名鉄名古屋駅では乗客は島ホームに降ろされる。
この駅から豊橋方面への下り線になるので、ホームでは特別車に乗る人が待っていた。

宿泊先は昨日と同じく栄にあるので、大曽根まわりで向かおうと思うのだが、昨日も名古屋駅で乗り換えたので
今日は隣の金山駅で乗り換えることにする。

階段を登って隣の乗車ホームに渡って、知らない行先の列車に乗って金山駅に向かう。


17:37名鉄名古屋駅発<名鉄名古屋本線>

普通列車以外の種別はすべて名古屋駅の次に停車する駅が金山駅である。
再び地上に戻って、JR線と並走を続ける。

金山駅ではJR東海道線、中央線と地下鉄名城線、名港線に乗換えることができる。
1989年までは別の駅だったものを一ヵ所に集め、以前は通過していた東海道線にも新たに駅を設け金山総合駅として開業したという。
名鉄線がJR線に挟まれたユニークな配置をしている。





名鉄の赤い列車に別れを告げて、中央線に乗り換える。
金山駅は駅ビルに様々な店舗が入り、広い自由通路は多くの通勤客で賑わっている。

中央線のホームも家路を急ぐ通勤客が多く、寒そうに列車を待っている。
時刻表を見ると、多くが高蔵寺行きになっており、近距離輸送が中心らしい。
以前聞いたことのあった座席指定快速の「セントラルライナー」は廃止されたようだ。


湘南色の帯を巻いた車両がやって来た。
以前は首都圏の近郊型車両として乗ることの多かった211系、東海地区ではまだ都市圏で走っている。

17:57 金山駅<JR中央線>

殺人的な混み具合ではないとはいえ、帰宅ラッシュである。
慣れない場所だとしっかり目的地で降りる事ができるか不安になる。
大曽根駅がいくつ先だったかも曖昧なのでなおさらだ。
手帖で確かめる事も出来ずに、どっと人が降りたので流れで下車すると運良く大曽根だった。

そのまま流されるように改札を出て、分散していく人なみの中、瀬戸線改札へと向かう。
今回の旅行で乗車する実質最後の名鉄線。




18:00 大曽根駅<名鉄瀬戸線>

運良く到着したのはスカーレットの車両。
今年中にもお別れする赤い瀬戸電だ。

がらんとした車内で足をのばしたり、振り返って窓越しの景色を眺める。
やはり上り列車は静かでいい。
昨日も同じことを思ったから、遠回りしてでも瀬戸線に乗ってしまった。
金山から名城線に乗った方が早かったのだけれど。

18:10 栄町駅到着

終点に到着した。
軌道の先には壁がある。軌道の終わりと、旅の終わり。
旅の始まりや終わりが行き止まりの場所というのは風情があっていい。
ちょっと立ち止まって振り返ってみる。

私を乗せた列車はすでに尻を向けて、もと来た路を去っていく。

さようなら、赤い電車。

名古屋のりものづくし[小牧線-犬山線]

2014-05-05 03:30:59 | とらべる!


15:35 味美駅発<名鉄小牧線>

飛行機が去って、落ち着いたホームに自動放送が流れて、ピンク色の車両が到着した。
車内はセミクロスシート。時間帯も昨日と近いためか、乗車率も先日と似ていて西日が射す車内は穏やか。

列車は急ぐわけでもなく、マイペースに進む。
都市と郊外を結ぶ路線にしては中途半端な歴史を持つ小牧線は他の名鉄路線とは雰囲気が異なっている。
小牧という中核都市を抱えながらも、長らく終点の上飯田から名古屋方面への延伸、他線接続は行わず、
平安通駅まで延伸し、栄や名古屋までパイプが繋がったのは、つい10年ほど前の話である。

60年代後半からは立体交差事業や一部複線化が行われ、発展はしてきているもののどこか沿線には寂しさが漂っている。
小牧線の利便性が微妙なためか、車社会が浸透していたためか、問題はすでに鶏と卵であるような気がする。


しかし、一定の発展衰退ではなく、区間によって異なる姿を見せる小牧線に何故か心惹かれてしまった。
近づけば列車は掘割の中に進入して、壁が押し迫った狭い路を縫うように走っていく。
掘割内に設けられた小牧口駅を過ぎると、天井に蓋がされてトンネルになった。

小牧線が複線化されているのは小牧駅までである。
地下に設けられた小牧駅は一部列車が折り返し運転も行う運行上の拠点の一つ。

乗客も半分ほど降りて、同じくらい乗ってきた。
小牧駅を出発すると、単線に変わって緩やかなカーブの掘割を抜けて地上へ顔を出す。
左側の車窓には桃花台交通の廃線が沿う。
それと競うように瞬く間に高架線に変わって、小牧原駅に到着した。




目の前に見える桃花台交通の廃橋梁に惹かれて、この駅で下車をする。
列車交換のできない小牧原駅は狭い。ホームの真上を桃花台交通の橋梁が通っている。
その橋梁は桃花台ニュータウンへと続いているのだろう。

地方交通の廃止は現在も続き、過疎化したローカル線が次々と消えていくが、桃花台交通は平成に完成した新線が短命にも廃止された珍しい例である。
非電化単線のようなローカル線ではなく、新交通システムなのである。
全線が高架線で建てられため、廃線後は撤去する予算がなく放置されたままになっている。

改札を出て、桃花台交通の廃線跡を見て回ることにする。




駅前はロータリーもなく、バス停がポツリとあるだけの小さな駅。
駅は鉄道に乗降りするためだけの場所のようだ。駅を中心に発展している首都圏郊外とは異なる。




少し歩くと桃花台交通の小牧原駅跡がひっそりと残っている。
隣の小牧駅での乗換えが主流であったと考えられるが、この駅でも乗り換えができたのだろう。
駅の跡はシャッターが閉ざされて、放置自転車が私を寄せ付けないようにしている。
入り口には終電車時刻を掲示した看板が残されていた。




ひと通り散策をし終えて、小牧原駅のホームに立つと、ちょうど夕暮れ時で遠くの山の上に天守閣のシルエットが見える。
犬山はまだ遠いので小牧城だろうか。
小牧も、歴史を辿れば徳川軍と羽柴軍の戦った「小牧・長久手の戦い」の舞台であった。
今回は名古屋の交通機関に揺られることをテーマに巡っているために視野に入れていなかったが、尾張の地は安土桃山時代の舞台として多くの歴史を残している。

三河と尾張はテーマのある史跡巡りができそうだ。



16:17 小牧原駅発〈名鉄小牧線〉

昨日も見た風景をもう一度見つつ、気付けば眠りについていたようで、目を覚ますと遠くに「若い太陽」が見えた。
犬山駅に着くと、名鉄の各列車が頻繁に出入りしている。
午後は比較的ゆっくりとした路線に乗っていたためか、電光掲示板の表示が目まぐるしい。
犬山線に乗って名古屋方面に戻ろうと思うのだが、とりあえず、始発駅から座って帰りたいので、新鵜沼駅まで犬山線を下ることにする。





2つ先の新鵜沼駅は、犬山線の終着駅。
3面5線を有し、静かな構内は最果て感が漂う。
実際は各務ヶ原線が直通していて、末端ではないのだが落ち着いた雰囲気がよい。

ここからは最後にミューチエットを購入して特別車に乗って名古屋に向かおうという魂胆だ。
空港へと直通するミュースカイに乗車したかったのだが、時間が合わずにパノラマシート。
旅の始まりと終わりに展望席とは贅沢。




この駅から乗車する人は少ないようで、特別車は独り占め。
発車10分前の購入で簡単に展望席が指定できるとは小田急では考えられない奇跡。
ゆっくりと腰を下ろして、暮れていく街並みを眺めつつ音楽を聴く至福の時間。


17:02 新鵜沼駅発〈名鉄犬山線・快特〉

新鵜沼駅を静かに出発するとすぐに木曾川をトラス橋で渡る。
速度を落として橋を渡るので、じっくり眺めることができ、嬉しい。




途中駅で特別車にも何人か人が乗ってきた。
私の隣にも小学生くらいの子が座って、興奮気味に移りゆく景色を見ては立ったり座ったりしている。
付き添いの母親も「乗れてよかったね」と語りかけている。

この展望がちょっとした贅沢として、日常的に使えることが羨ましく思う。





特別快速として運転しているので、途中駅の多くは通過する。
反対側のホームには、帰宅する人で賑わっているのが見える。

布袋駅前後では車窓から「布袋大仏」が見えると聞いていたのだが、見逃してしまった。
腫れぼったい目をしたユーモラスな姿が印象的で、ぜひ見たかったのだがいつか日中に来てみようと思う。

先程下車した上小田井駅を過ぎると、天高くぽつりと浮かぶ城北線の小田井駅も見えた。
遠く先に見えていた名古屋駅の高層ビルの夜景も徐々に迫ってくる。
本線と合流し、東海道線と並走すると何本もの光が入り乱れて美しい。
昼間はゴタゴタした都会の風景も夜は一味違って落ち着きが出てくる。
それも、音が聴こえない場所から眺めているからこそ楽しめるのであって、現実世界に放り出されたらそんなに美しく感じることはないだろうなと思う。

展望席から見る夜景もなかなか贅沢だ。

名古屋のりものづくし[城北線-小牧線]

2014-04-30 01:50:29 | とらべる!




小田井駅を出発した城北線は終点・勝川駅に向かってゆっくりと進んでいく。
車内はセミクロスシートになっていて、車両中間部がクロスシートになっている。

ゆっくり景色を楽しみたいときはクロスシートに限るが、1両編成のワンマンカーなのでロングシートの一番後ろ寄りに座って流れていく景色を眺める事にする。

それにしても立派な高架線である。
遮るものは何もなく、複線の軌道が延々と伸びている。
基本的に日中は毎時1本しか運行されない路線とは思えない贅沢さがある。

周囲に大きな街はないと思われ、停車する駅では数人の乗客が降りたり、降りなかったりする。
それもそのはず、城北線も名古屋の市街を取り囲むように周縁部を走っている。
都市へ直結しない路線である。

都心部に近いことで住民は都市への上り下りの移動が基本であって、横への移動は需要があまり無いのであろう。
同じく名古屋都市圏の周縁部を走る愛知環状鉄道は、比較的中心部との距離があるため、名古屋へ直結する乗換駅への横移動に使われると考えられる。
また郊外の核となる駅周辺が栄えることで両駅間の行き来も行われるはずである。

城北線は他路線との接続も悪い。
先程、歩いて乗り換えた小田井-上小田井駅間も決して乗換駅と言える距離ではない。
終起点となる枇杷島と勝川駅はJR線との接続駅ではあるものの、乗り入れは行っていない。

はたしてこの城北線は都市に潜んだ無用の長物ではないのか。
地図を眺めてはよくこのようなことを思っていたが、どうやら訳あり路線のようである。

城北線の立派な高架線、旅客鉄道の為につくられたのではないという。
貨物列車が旅客営業の多い名古屋駅を通過せずに済ませるために計画された貨物専用路線の未成線を旅客用に流用したものである。
愛知環状鉄道もまた、貨物計画線を受け継いだ路線だ。
この二つの路線は見事に名古屋都市部を囲うように迂回して東海道線と中央線を結ぶ形をとっている。

つまり城北線は貨物列車の巨大な未成線ということだ。

建設途中で事業は中断してしまったため、今現在勝川駅はJR線と接続しておらず、駅舎が離れた場所にある。
しかし、将来的にはJR駅構内に乗り入れて直通させる計画も考えられる。
起点の枇杷島駅と終点・勝川駅をJR線と接続することで、東海道線から中央線へ、金山や千種駅といった繁華街を通ることなく繋ぐバイパスになる。
これは貨物線以外にも中央線特急や回送車などにも利用できそうだ。

城北線の本領発揮はこれから。

そのために複線高架の立派な路線になっているそうである。
城北線の各所を見ると架線や駅ホームの増築用の用地は確保されている。

その時まで城北線は地元の人とマニアだけの知る謎のローカル線でいるのだろう。





進行方向左手には高速道路が並んで走っている。
隣では幾台もの自動車が目的地へ向かって急いでいる隣では、後にも先にも何も見えない広々とした高架を走る1両の列車。
本当に名古屋は車社会だと実感する。
高速道路の高架がこちらより少し高い位置にあるのが憎い。


しかし、この穏やかさは嬉しい。
ゆったりと座って、外の景色を何気なく眺める。
自分は何も動かずに、景色だけがただ移ろいでいく。
東京では休日でも、この穏やかさは体験できない。

周囲に遮る物がないためか、車内に西日が入ってくる。





このまま終点の勝川駅まで乗車して、最果て感を味わうのも悪くないが、もう一度名鉄小牧線に乗りたいので味美駅で下車。
列車はディーゼル特有の低い音を鳴らして去っていった。
小高いホームに聞こえる音は高速道路を走る車の音だけだ。

味美駅ももちろん無人駅である。
この駅も地上3階にあり、階段を伝って出口へと向かう。
小田井駅と同じく2階にはコンコースとなるような広い空間がある。
天井に鳩が巣をつくっているくらいで他には何もない。

しかし降りてみると、上空には高速道路、地上には片側3車線の一般道と騒がしい。
駅の出口も地下道で自動車道路をパスした先にある。

次に向かう、小牧線の味美駅は同じ駅名にもかかわらず700mほど離れている。
もはや乗り換えの域を逸脱し同一名称の付く全く異なった駅。





しばらくは高速道路沿いを進み、小牧線の高架が横切るとそれに沿うように左折する。
高速道路と城北線と小牧線の立体交差は見事。

高架線沿いを歩いていくと小牧線は次第に地上へ降りてくる。
すると味美駅も近い。

名鉄の味美駅も無人駅で、駅前は自転車でびっしりと埋まっている。
人の気配はなく、寂しげな印象だ。

ホームのベンチで列車を待っていると、上空から重音が覆いかぶさってきた。
何事かと見上げると、見たこともないような大きさの飛行機だった。
ひときわ巨大なわけではなく、距離が近かったのだと思う。

近くに小牧空港があることは後に知ったのだが、躯体が真上を飛んでいる感覚は決して気持ちのいいものではなかった。


名古屋のりものづくし[あおなみ線-犬山線-城北線]

2014-02-23 01:07:01 | とらべる!


13:34 金城ふ頭駅発 <あおなみ線>

名古屋駅へと戻る、あおなみ線の車内は非常に賑やかな様子である。
皆、リニア・鉄道館を見学してきたのだろう。

皆が座席に座りながら振り返って車窓に見えるものを目で追ったり指さしたりしているから、沿線に馴れていない乗客と一目でわかる。
私も同じように外を眺めては、見知らぬ沿線風景を楽しむ。
途中で眺めの編成の貨物列車とすれ違った。


名古屋駅は太閤口からJR線の下を通り過ぎて名鉄名古屋駅へ向かう。
名鉄フリーパスがまだ本日も使えるのでなるべく乗っておきたい。

願わくばミュースカイに乗って中部国際空港にも行ってみたいし、
常滑の「やきもの散歩道」を散策したり、のんびりと蒲郡線に乗車もしてみたいのだが時間が足りないので、
本来の趣旨である、のりものづくしを貫くことにしようと思う。






名古屋駅から2つ先の上小田井駅まで乗車したいのだが、普通犬山行きが目の前で行ってしまった。
上小田井駅は特急は停まらないために、次に乗ることのできる列車は27分の急行。

ぼんやりと次の列車を待つ私の前を矢継ぎ早に停まっては出発する電車。
行先は岐阜に弥富、新鵜沼と様々で目がまわる。

電車は私の前に停まったり、停まらなかったりする。
編成も行先も種別も異なるのだから、乗りこなすのは難しい。

結局、目的の列車が来るまでの10分ほどの時間に4本の列車を見送った。


14:29名鉄名古屋発 <名鉄犬山線急行>

ここから短区間乗車するのは名鉄犬山線。
名古屋から犬山結ぶ名鉄の幹線のひとつだろう。

地上へ出てしばらくは本線と同じ路線を通り、枇杷島分岐点で右へ大きくカーブし、本線と逸れて犬山へと向かう。
枇杷島分岐点は本線と犬山線が平面交差しているほか、分岐先同士を結ぶ路線もあり三角形のデルタ線を形成している。
駅を起点に分岐することが多い中、ここは独立して分岐点がある。平面的なセクションも珍しい。


ここからしばらくは高架線を走る。
犬山線の急行が名古屋を出て初めに停車するのが上小田井駅。
駅に滑り込む手前に、さらに背の高い城北線の高架線をくぐる。

ほぼ同時に地上から路線が吸い込まれるようにこちらに伸びてくる。
これは地下鉄鶴舞線で、この駅から犬山線に乗り入れてくる。
地下鉄との共用高架駅は都市郊外ではよくある光景。





上小田井駅を降りると、先程交差した城北線の高架線を目指して歩く。
城北線の小田井駅が歩いて5分ほどのところにある。
乗換駅としては公認されていないが意外と近い。

名鉄の線路沿いを名古屋方面に歩くとすぐに高架線が見えてくる。
名鉄線より高いところを走る城北線の高架線、周囲に高い建物が無いためか現代に生きる城壁のよう。






高架橋に沿って歩くと小田井駅がある。
たいそうご立派な高架線とは裏腹に、駅前はひっそりとしている。
高架線のコンクリートに大きく「小田井駅」と書いていなければ駅とは気付かないだろう。

駅前一等地には砂利敷きの契約駐車場。その合間を縫って駅に向かう通路が伸びていて、控えめに「小田井駅」と書いてある。
橋脚内に納まった駅構内にはトイレ以外に施設はない。
他は普通の高架駅とさほど変わらないのだが、「色」がこの駅には皆無で、冷たく押し黙ったコンクリートが不気味。
ホームは地上4階にあるので、階段を使って上っていく。






2階には意味深な空きスペース、3階にはコンコースもあるが自動改札機もない無人駅で、ただ広い空間があるのみ。
ホームへ上がると、視界が開ける。展望台に上ったように見晴らしが良い。
名古屋方面を見ると、駅前のビルや栄のテレビ塔の姿も確認できる。反対側には巨大なショッピングモールが見える。

これは待ち時間に景色が眺められて素敵だなと思ったが、場所が場所なだけに風が強い。
階段付近に車両1両ほどの長さの屋根があるだけで雨風をしのぐには心もとない。






高架線とは現代的だけれども、中身は地方ローカル線の無人駅さながらの簡素さ。
一体列車が来るのかすら不安になる。
名古屋にこんな場所がある事すら信じがたい。

この城北線は東海交通事業城北線と言って、JR東海の子会社が運営を行っている路線で東海道本線の枇杷島駅と中央線の勝川駅を結ぶ。

列車の本数は毎時1本と少なく、途中駅に他線との乗換駅はない。
ほぼ全線が複線高架という恵まれた環境を持ちながらも、名古屋市にあることが信じがたいほどのローカル線だ。


変わった構造の駅や路線の遺構が好きな私はいつか川島令三氏の本で城北線の存在を知り、乗ってみたいと思っていた。
が、予想をはるかに上回る本数の少なさと接続の悪さで毎回断念していたのだ。



しばらくすると、静けさを破って列車接近の放送が流れた。
やって来たのは1両編成の気動車。車体はJR東海と似た色をしている。
数人の乗客を乗せて、小田井駅を出発。


名古屋のりものづくし[ゆとり―とライン‐中央線-あおなみ線]

2014-02-17 00:30:30 | とらべる!

 

次の日はどのようにして巡ろうか、まじめに考えずにベットに入ってうとうとしていると意外にもぐっすり寝てしまった。
起きたら既に10時を過ぎており、だいぶ日が高い。

とりあえずは栄町駅から瀬戸線に乗って、大曽根を目指す。
今日は昨日乗る事の出来なかった路線を優先的に乗ろう。


10:25 栄町駅発 <名鉄瀬戸線>

相変わらず天気が良い。
都会ではなく、海か山にでも行きたくなるほどの晴天である。
今回3度目の大曽根駅を降りると、本日のお目当てのガイドウェイバス・ゆとり―とラインに乗り換える。

ガイドウェイバスは専用軌道を走るバスのことで、バスと鉄道の中間のような交通。
車両は普段の路線バスとあまり変わらないので高架線を走るバスといった感じ。

専用軌道をつくるほどの需要はあるけれど、鉄道ほどの輸送力は求められていないという特有の環境がないと生まれない都市交通だ。






ゆとり―とラインの停留所は地上3階に位置する。
駅と呼んでいいのかバス停なのかわからないほど立派な建物。
基本的には路線バスと同じ乗車方式のため、運賃は車内後払い方式になっている。
しかし、中間階には用途がよくわからない改札もある。

ホーム階は広々としているが、低床でバス停そのもの。
大曽根は終点のため、降車専用のホームが向かい側にあって、バスは回転スペースで進行方向を変えてホームにやって来る。






車両も何の変哲もない路線バス。

何故、あえて乗車人数も限られているバスなのかと疑問にも思うが、専用軌道の他に一般道も走る事ができるのが大きな利点のようだ。
道路の混雑する都市部は高架線を走り、郊外で一般道へ降りてからは路線バスになる。
そのため系統もいくつかあり、行先を見てから乗らなければならない。

専用軌道部分の運行本数は日中でも10分に1本用意されている。
出来れば中央線の高蔵寺駅行きに乗りたかったが、本数が少ないので中志段味行きに乗車。



10:40大曽根駅発<ゆとり―とライン中志段味線>

大曽根を発車して大きく右にカーブすると、しばらくは市街地を走行する。
架線がないので見晴らしが良い。右手にはナゴヤドームが見える。
守山までは地下鉄名城線と同じルート。本数においては地下鉄の優勢だろう。

バスの欠点は定時運行ができないところにあるが、このように専用軌道を使えば急停車の危険も減り、交通渋滞に悩まされることはない。






ガイドウェイバスのもう一つの特徴は軌道部に付くガイドレールと車体の案内装置によって運転されること。
専用軌道で運転手はハンドルを握ることなくバスが動く仕組みになっている。
運転手はいるのに運転しないとはまた不思議。


バスなので多少縦揺れはするが無駄な停車をしないので快適。
ちょっとしたトンネルのような停留所をいくつか通って、郊外の丘陵地帯を進む。

リニモと同じように住宅街を過ぎると上り坂になる。
坂を上りきるとまもなく小幡緑地に着く。




専用高架は小幡緑地までで、この先から一般道路に入る。
ガイド運転から手動に切り替わる。

この先も乗っていたいところだが、帰るのに時間がかかるので下車。
大曽根から240円。通常のバスよりかは割高だろうか。

駅前は名前通りに森林公園になっているようだが、何も見ずに踵を返して大曽根行のバスに乗る。
下りのバスよりは混んでいて、既に座席は空いていない。

10:57小幡緑地発<ゆとり―とライン中志段味線>



大曽根駅に戻って朝飯とも昼飯とも言えないご飯を食べ、中央線で名古屋駅へ。

名古屋からはあおなみ線に乗り換える。
JR名古屋駅に寄り添うように建つホームで金城ふ頭行きの列車を待つ。

隣では東海道線が頻繁に入線しているというのに、こちらは日中15分間隔の運行のようだ。
しばらくすると、新しそうな車両が来た。






12:00名古屋駅発<あおなみ線>

名古屋駅を出発すると近鉄線と関西本線と並走する賑やかな区間。
近鉄特急が停まっているのが見える。

関西本線と別れを告げると、金城ふ頭に向けて南下する。

あおなみ線は、正式には名古屋臨海鉄道南名古屋港線と言う長い名前がある。
貨物線を改良し旅客化した比較的新しい路線で、旅客以外に貨物列車の運行が頻繁に行われているという。

走行するのは他線との接続がない鉄道空白地帯。
それもそのはず、周囲に広がるのは倉庫や工場の類ばかりである。
高架線を走るため、遠くの運河越しに名古屋港も望める。新しい路線は景色を楽しめていい。

周囲に住宅の少ない地域なので、各駅には生活感が無く、こざっぱりしているように見える。
地元密着、というよりは臨海地域の通勤者向けの路線なのだろう。

そのために利用しにくい路線だが、2011年に終点の金城ふ頭駅近くにJR東海リニア・鉄道館が完成したこともあって、観光客も利用しやすくなった。
折角なので、あおなみ線の車窓を楽しみつつ、リニア館にも足を運んでみようと思う。

高架が続くあおなみ線。終点に近づくにつれて港が目の前に見えてくる。
巨大な斜張橋、名港トリトンの下をくぐると金城ふ頭に着く。

名古屋から乗車してきた人はきっと同じくリニア館に行くんだろうなあ。




金城ふ頭は感動的ではないけど見晴らしのいい駅。
到着しても、対岸に見える工場群が雄大で、車内からしばらく眺めていたくなる。

無機質な工場は近くから眺めると無機物に拒絶される恐怖を覚えることもあるが、遠く眺めていると何処か異国の島を見ているようでいい。






駅を降りると、名古屋の南の最果て感が漂っていて、
これ以上は伸びる事のない高架線が虚空に突き出している。




歩いて1分ほどでリニア・鉄道館に着く。
リニアモーターカーを模したような平面的な建築だ。

ここはJR東海が運営する鉄道博物館で、JR東海内で活躍した車両の展示を行っている。
新しく大宮にできた鉄道博物館も未だ訪れたことはないが、パンフレットで見た展示空間に惹かれたので入ってみよう。
大人は入館料1000円。






館内に入ると最初は導入部ともいうべきシンボル展示。
照明が控え目になっていて、3つの車両が浮かび上がって引き込まれる。

手前は蒸気機関車、最奥のリニアモ-ターカーは見てすぐに分かったが、中央の新幹線は何だろう。
説明版を見ると、世界最高速度を叩き出した試験用新幹線らしい。

高速化に貢献した3つの車両。
ここに東海の歴史と方向性が具現化されているのだ。

確かに、JR東海と言えば東海道新幹線に建設中のリニア中央新幹線と日本の鉄道の高速運転に力を入れている。
シンボル展示を通して博物館のテーマを掴むことができるというわけか。


次の空間は観光情報誌でもよく見る広々とした車両展示。10種類以上の車両が一堂に会している。
手前からは見たことのある新幹線車両が並ぶ。

この景色には鉄道好きでなくても驚かされるだろう。







思い入れがあるのは300系。記憶の中に一番残っている新幹線だ。
私が幼い頃には最速の新幹線「のぞみ号」だったはず。
中学の修学旅行の時、初めて乗った新幹線も300系だった。
いつの間にか現役を引退して、次々と新しい車両が生まれている。






形式とか機械的なことには興味はなかったけれど、電車は車両のデザインが好き。
とはいっても実際は間近で見ることはできないから、貴重な体験。
きっと幼い頃に同じように眺めたらもっと大きく、かっこよく見える事だろう。
新幹線の流線と光沢はいいなぁ。

カモノハシみたいなのは700系か。






新幹線以外の在来線は見たこともない車両も並んででいる。
昔に本の中で見たことのあるものから、初めて見るものもいる。

車体は茶色をしたものが多い事からも近年の車両は鮮やかになったと思う。
それでも昔の車体のなめらかさが気に入っている。
現代のステンレス車体は溶接跡が見え、汚れが目立つのでどうなんだろう。


目の前にあるものが何だか知らなくても、デザインや乗り心地を比べて意外と楽しめる。
車窓や関連建築が専門の私も長々と鑑賞してしまった。