さてさて、私たちを乗せたのぞみ号は新横浜駅を出発すると次は名古屋まで停まらない。
静岡全スルーという奴である。
とりあえずは相模の平野をまっすぐ進む。
丹沢の山々背後に富士山が見え隠れするのだが、ビルがいちいち邪魔をしてくるので写真は撮りづらい。
小田原駅を過ぎてトンネル区間に入れば、いよいよ始まる長い長い静岡県。
車内の電光掲示板は丁寧に通過した駅を教えてくれるのだが、熱海からはじまり浜松まで静岡県内には6つも駅がある。
座席が通路側だったこともあり、デッキも近いから時折はデッキに赴いて景色を眺めることにする。
三島駅あたりから進行方向右手には富士山が見えるのだが、先程神奈川県内で見えていたにもかかわらず、雲がかかってしまっている。
見えるのは長い裾野だけ。
新富士駅までの区間はは、沿線に工場が多い。
紙の工場が多いと何かの本で読んだことがある。
近隣の田子の浦は1960年代に公害問題にもなった場所である。
そういえば、1971年に公開された『ゴジラ対へドラ』という作品を以前に観た。
田子の浦のヘドロ問題を扱った特撮映画で、劇中では駿河湾からヘドロ怪獣が誕生し、静岡県を舞台にゴジラと死闘を繰り広げる。
この映画はゴジラ作品の中でも異端の存在で、劇中にゴジラが空を飛ぶのである。
これには賛否両論があるらしい。
というような、どうでもいい記憶が景色と共に流れ去っていく。
しばらくは座席に戻って、もう一度デッキを訪れるころには天竜川を渡っていた。
富士川、大井川を渡って、最後に天竜川を渡れば、静岡県もあと少し。
浜松駅を過ぎれば、浜名湖が見えてくる。
広々とした湖と別れを告げれば、県境はもうすぐ。
豊橋を過ぎると名古屋都市圏に突入。
並走する東海道線や名鉄電車を眺めているだけでも楽しい。
ビルの広告も見慣れないものが多くて、追う目が忙しくなる
もうちょっとゆっくり走ってほしいのだが、そうはいかない。
名古屋駅で降りる人がデッキに向かい始めたので席に戻ろう。
席について、持参した柳田國男をぺらぺらと読んでいても、なんだか落ち着かない。
というよりも本のチョイスを間違えた感がある。
高速で走る乗り物と柳田國男がまず似合わない。
スーパーで安売りしていたひな祭りチロルが可愛かったので買ってきたのだが、どうやら箱がひな壇になるらしい。
こういう旅行の時にはみんなでシェアするのが楽しいので買ってきたのだが、皆はぐっすり眠っている。
それはそうだ、オールでカラオケ行って、その前の日の夜は打ち上げでこれまた朝方まで起きていたのだから。
1日休んで元気いっぱいな自分の目だけが冴えまくっている。
気付けばチロルを積んでいた。
席とデッキのうろうろを続けて、ついに山陽新幹線に入るとトンネルが続くので諦めて寝た。
11:14
広島駅に到着。
電車を降りると、大きく伸びをして、ほっと一息。
この場所に降り立つのは実に6年半ぶりのことだ。
私は中学の修学旅行が広島と京都であった。
その時は新幹線も広島も初めてだったものだから、よく覚えている。
これから向かうのは、あの時と同じ、宮島である。