江ノ電の愛称で知られる江ノ島電鉄は、鎌倉-藤沢駅間の約10kmを34分かけて結びます。
現在でも江の島鎌倉観光には欠かす事ができない江ノ電は、1902年に藤沢-片瀬間で開業。
その後順に延伸し、1910年には全線が開業しました。
停車駅は鎌倉から和田塚-由比ヶ浜-長谷-極楽寺-稲村ケ崎-七里ヶ浜-鎌倉高校前-腰越-江ノ島-湘南海岸公園-鵠沼-柳小路-石上-藤沢の15駅です。
運行するのはわずかな距離ですが、江ノ電は交通機関の域を超えて鎌倉観光のひとつともなっています。
江ノ電の人気の一つは、まず沿線の景観です。
短い距離の中、車窓からの景色が目まぐるしく変わります。
鎌倉から長谷駅までは住宅地の間をすり抜け、
御霊神社の目の前を通り過ぎると江ノ電唯一のトンネル・極楽洞を通過します。
稲村ケ崎駅を出てから腰越駅までの一部の区間は湘南海岸に沿って走るため、車窓には相模湾が広がります。
再び住宅地に入ったかと思うと、腰越駅から江の島駅までの区間は首都圏では珍しい併用軌道を走行します。
鵠沼駅付近では境川を渡り、石上駅を出ると高架区間に変わって駅ビル2階に位置する終点・藤沢駅に到着します。
遮断機のない踏切、無人駅など情緒あふれる沿線ならではの景色と、
目の前が湘南海岸という絶好のロケーションの鎌倉高校前駅や、車両一両分ドアが開かない腰越駅など個性あふれる停車駅が魅力的です。
全線にわたり単線のため、列車交換を行うことのできる駅は長谷・稲村ケ崎・江ノ島・鵠沼の4駅と七里ヶ浜-鎌倉高校前間にある峰ヶ原信号場に限られています。
もうひとつの魅力は沿線観光。
言わずと知れた、鎌倉の鶴岡八幡宮と小町通り。
遠足といえば長谷寺の長谷観音、高徳院大仏。
腰越状で有名な万福寺、江の島駅は江ノ島水族館や江の島の最寄駅です。
アジサイの時期には成就院や御霊神社、紅葉の時期には源氏山や鎌倉宮に足を延ばしてみるのもいいかもしれません。
車両もバリエーション豊富で床が板張りの旧式車両から、観光ガイドのモニター付きの新型車両まで揃っています。
最古参の車両でレトロ気分を味わうもよし、クロスシートを備えた車両は友達との旅行時に最適です。
シンボルカラーの深緑色の車両は鎌倉の街並みとも相性が抜群。
渋いけどおしゃれで、江ノ電サブレもお土産に売っていたりします。
季節や車両によっても乗る度に異なる楽しさを見つけることができる路線が江ノ電なのです。
■沿線風景
(撮影時期が異なるため、作風に一貫性がありませんがご了承ください。
また、初期の写真の一部にはOLYMPUSアートフィルターを利用しています。)
江ノ電ビルの二階に組み込まれている藤沢駅。
2面1線の構内は休日ともなると観光客で混雑します。
休日の日中は4両編成が基本ですが、平日は2両編成の場合もあります。
停車しているのは江ノ電最古参の300形。
車内の床が木目になっているレトロな車両です。
藤沢駅を出ると、しばらくは高架区間を走ります。
この区間は比較的新しく、昔は地上を走っていたようです。
運転室後ろの座席は特等席。
目まぐるしく変化する車窓をじっくり堪能できます。
特に2000形(写真で右手に見える車両)は進行方向に向いた座席配置になっており、窓も大きく、当たったらラッキー。
江ノ電の主要駅である江ノ島は列車交換のできる大きな駅です。
夜間はライトアップも行われています。
江の島駅を出ると、併用軌道区間に入ります。
いきなり道路に踊りだしたかと思うと、480mもの間、道路の真ん中を堂々と走行します。
ホームの短い腰越駅を過ぎると、路地裏のような狭隘な道をくねくねと進みます。
今にも民家の塀や樹木にぶつかりそうです。
民家を抜けると、次は海岸線を走ります。
ここから稲村ケ崎駅手前までの間、断続的に海が見える区間です。
鎌倉高校前駅は、ホームが海に面したロケーションが人気の無人駅。
休日には観光客も訪れますが、平日は朝夕は登下校する学生たちで賑わう駅です。
背後には断崖迫る海岸線の平地を江ノ電と県道が並走します。
鎌倉高校前、七里ヶ浜、稲村ケ崎の3駅は海岸にも近く、途中下車もおすすめです。
七里ヶ浜駅は少し路地を入った場所のため、一旦海岸から離れます。
道路と線路が道を半分ずつ使用した江ノ電らしい風景。
柵がないのが地元に密着した江ノ電ならではの景観だと思います。
稲村ケ崎駅も列車交換ができる駅です。
駅周辺には昔懐かしの商店や八百屋さんなどが立ち並び、生活感があります。
徒歩3分ほどで稲村ケ崎公園へ行くことができます。
稲村ケ崎から極楽寺駅までの間はひたすら内陸へと進んで、山間部に入ります。
谷戸と呼ばれる地形で、左右を切り立った崖に挟まれた場所に、極楽寺駅があります。
小さな駅ですが、関東の駅百選に認定された昔ながらの木造駅舎が魅力です。
付近には江ノ電の極楽寺検車場もあります。
極楽寺駅から先は鎌倉七口のひとつ、極楽寺坂の切通しのある区間です。
江ノ電は唯一のトンネル、極楽洞を通過して鎌倉入りします。
このトンネル工事が敷設当時最も困難であった事業といわれています。
極楽洞を出ると御霊神社の参道を通り抜けます。
御霊神社はアジサイと江ノ電が撮影できる場所ということもあり、梅雨の季節には多くのカメラマンが陣取っています。
御霊神社の参道を横切る江ノ電。
絵になる風景のひとつです。
長谷駅までは配り勾配、和田塚駅までは上り勾配を進みます。
民家には狭れた狭い場所を走行するので、あまり人目には付きません。
自動車の走行する道路には踏切がありますが、路地や玄関先には踏切がないため、線路を横断する地元の方も多いです。
江ノ電もゆっくりと走行します。
江ノ電は4両編成の場合、連結部分の車窓を眺めるのもおすすめです。
流れていく景色と、窓に幾度も反射する景色が不思議です。
和田塚駅は線路を渡って入店する甘味処の最寄駅として知られています。
付近には和田一族を埋葬したとされる和田塚があります。
駅から路線はカーブを描いて、鎌倉駅へと到着します。
終点・鎌倉駅は2面2線を有するターミナル駅。
車輪止めには陶器の蛙が鎮座しており、可愛らしいです。
駅中にはコンビニや土産店が併設されていて、電車待ちの時間に利用できます。
JR鎌倉駅へは直通改札があるので乗換えに便利です。