祇園の花見小路から路地を散策して歩いていると、やがて安井金毘羅宮に着いた。
ここは縁結び・縁切りにご利益のある神社として知られている。
祭神の一人、崇徳天皇が讃岐に流された際に欲を断ち切って籠ったことに因み、断ち切り・縁切りの信仰に結び付いたといわれている。
境内には縁結び・縁切りに関連する不思議な形をした石がある。
名前は「縁切り縁結びの碑(いし)」というらしい。
碑といってももはや石の姿は見えず、中心に穴がある大量の形代の塊のようである。
ナウシカに登場するオームのようにもぞもぞ動き出しそうな姿をしている。
縁切り・縁結びを願う人は、願いを形代に書き、まず碑の穴を表から裏へ潜り悪縁を断ち切り、
裏から表へ潜り抜け良縁を結んでから最後に形代を碑に貼って祈願するという。
碑の形代には「あの人と結ばれますように」という微笑ましいものから、
「あいつさえいなければ」というような身震いをするようなものまでがべったりと貼られている。
そう思うと、生きていく中で常に絶えることのない人間関係の中で、縁結びと縁切りは非常に近いものであることを知る。
はたして今、形代に書いた願いと裏腹にもう一つの願いを秘めてはいないか。
期待と苦悩入り乱れた欲が渦まく碑に少しだけ身震いをした。