広隆寺の霊宝殿には有名な仏様がいらっしゃる。
国宝第一号として有名な弥勒菩薩半跏思惟像だ。
教科書で見た、あの像に会わずにはいられない。
石畳を歩いて行くと、旧霊宝殿。
隣にそれより一回り大きい新霊宝殿がある。
薄暗い館内には仏像たちがびっしりと並んでいて、作られた時代が異なるのだろう、綺麗なものから損傷の激しいものまである。
弥勒菩薩はその中心におられる。
サイズは思ったより大きく、ぼんやりと輝いている。私は鳥目ゆえにそのお姿をはっきりと見ることはできなかったが、うつむき加減な顔と頬に添えた右手はしっかりと見える。
弥勒菩薩様は未来に如来になることを約束された仏様。
釈迦入滅から五十六億七千万年後、如来となって人々を救ってくださる。
半跏思惟と呼ばれるその姿勢は、どうやって人々を救おうか考えている姿なのだという。
私は良いことを思いついて、思わず「フヒッ」となってしまう時がたまにあるが、弥勒菩薩様のその微笑みもそれに似ているのかもしれない。
なんてことを思ったりもするが、いつの日にか人々を救うため、今日も思案にふけっているのである。