「政治資金規正法と違って罰則規定も設けられていません。要は穴だらけのザル法なのです」(政治と金の問題に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授)
その点、宮澤喜一元総理の甥に当たる宮澤洋一議員(66)は、経産相時代には妻の所有する株式まで報告していた。しかし、現在の株価で2000万円を下らないと思われる妻の資産は、今回は公表されていない。
「宮澤さんが妻を扶養しているなら、生計を同じくし、一緒に資産を形成していると捉えるべきです。やはり、全ての議員が大臣と同じく、親族まで含めた範囲で資産を公表する必要があると考えます」(上脇氏)
加えて、その「ザル法」ぶりを示す「好例」となるのが、鶴保庸介沖縄北方担当相(49)の資産公開である。
入籍直後の新妻と幼子を「捨てた」過去が発覚したかと思えば、スピード違反で略式起訴と、本業以外で抜群の存在感を示す鶴保氏。さらに昨年10月、小誌(「週刊新潮」)の記事によって、本人が所有するお膝元・和歌山のマンションが大臣規範に基づく資産公開から外れていたことも明るみに出た。
その際、鶴保事務所は、
「兄に譲渡したものであり、兄に確認したところ所有権移転登記を怠っていた」
と弁明している。
ところが、今回の資産公開後に確認すると、このマンションの名義は現在も鶴保氏のまま。
改めて質すと、
「前回ご回答させて頂きました通り、所有権移転登記に関しては現在手続き中であり、司法書士に確認したところ、近日中に完了するとのことでした」(同)
まるでソバ屋の出前のようなお答えである。
「現在も鶴保大臣の名義なら資産公開の対象となります。あくまでご自分の所有でないと仰るなら、きちんと名義を変更した上で、大臣としての説明責任を果たすべきです」(上脇氏)
だが、現実には、罰則規定もチェック機能も存在しないため、杜撰極まる対応が横行しているのだ。
参院事務局によれば、資産公開は完全なる「自己申告制」。各議員から提出された報告書は、名前と日付しか確認されず、資産に関する証明書類も必要とされない。著しい虚偽があれば政治倫理審査会にかけられるというが、
「資産公開を巡って政倫審が開かれたケースは一度もありません」(参院事務局)
旧態依然とした制度による弊害を、ある議員はこう嘆く。
「メガバンクの定期預金の金利は0・01%程度ですから、ほとんどの議員は資産公開の対象ではない普通預金を選ぶ。しかも、FXで資産運用する際の証券口座も対象になりません。公開対象となる株やゴルフ会員権にしても時価に換算されず、資産の実態を反映しているとは言い難い」
三原じゅん子議員(52)や渡辺喜美議員(64)ら、「資産0円」議員が続出する背景については、「やはり有権者にクリーンなイメージを与えるからですよ。資産公開で数億円の預貯金があると知れたら、手弁当で選挙を手伝うボランティアは白けるし、献金もロクに集まらない。実際、地元駅前の高級マンションを購入したことを資産公開して、支援者から総スカンを喰った議員もいます」(同)
なかには、選挙区外にある自宅がバレないよう、あえて親族名義にする不届き者までいるという。
元国会議員秘書の朝倉秀雄氏が言葉を継ぐには、
「所有する未公開株の時価総額が、上場に伴って十数億円に膨れ上がった元代議士がいます。それが表面化すると世間の風当たりが強くなると考えた彼は、有限会社をいくつも立ち上げ、各々の会社に株を譲渡した。法人名義にしたことで資産公開を免れ、莫大な利益を上げたことを知られずに済んだのです」
だが、結局のところ、
「政治家が“資産0円”と公表したところで、もはや誰も信じないし、むしろ違和感を覚える国民の方が多い。政治家としての評価を落としていることに、なぜ気づかないのか不思議でなりません」(政治アナリストの伊藤惇夫氏)
子供騙しの制度をいいことに資産隠しに腐心する面々。政治家としての「力」もゼロと言う他ない。
特集「『福島瑞穂』と『今井絵理子』は正直者! 『三原じゅん子』が資産0円で通る子供騙しの『国会議員』資産公開」
より
「週刊新潮」2017年1月19日号 掲載