現在の仕事を辞めて、完全に引退せず、「次の仕事を探す」というケースではいたずらに時間だけが過ぎ、タイムラグが生じることが多い。再就職にしても、給料が下がったうえにかつての部下が上司になり、プライドはズタズタです。要は「仕事を続けるのも辞めるのも、戦略が求められる。」ということでしょう。生活のレベルを維持しようとすれば年金だけでは月平均10万円は不足し、退職金だけ当てにしていては逃げきれないのです。60歳を過ぎ、嫌な仕事をしなければ難民になってしまう生き方そのものに問題がある。私の好きな映画オリエント急行殺人事件の中で、殺されたアメリカの富豪サミュエル・ラチェットが名探偵ポワロに護衛を依頼してくる。しかし、ポワロはラチェットに良い印象を持たず、「自分の欲望を満足させるだけのお金はもう持っている。」と多額の報酬と引き換えの依頼を断る。こういう人生を送りたいものです。
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定年後も働き続けるとしたら、再雇用と再就職どちらがいいのか? これは定年世代を悩ませる命題のひとつだ。
「この年になって今さら職探しに苦労したくない。多少収入が減っても再雇用がいい」(62歳・男性)という割り切り派もいれば、「さほど変わらない仕事をして、給料だけ下げられるのは許せない。まだ別の仕事に変わるほうが納得がいく」(63歳・女性)という意見もあった。
再雇用の場合、現役時代の5~7割程度に給料が下がることも珍しくない。第一線を外れるのはもちろん、役職もなくなった上、かつての部下が上司になるなど、職場の人間関係によるストレスにさらされるケースもある。
一方、再就職も状況は楽観視できない。シニア世代を積極的に採用している分野というと、警備や清掃、介護スタッフなど一定の職種への偏りも見られる。そう考えると、再雇用も再就職も一長一短あり、悩ましい。どのように選択すればいいのか。『ほったらかしでもなぜか貯まる!』(主婦の友社)の著者でファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢氏は次のようにアドバイスする。
「まず、大切なのは収入額を過小評価しないことです。現役時代に稼いでいた人ほど、当時の収入と比べて『定年後の収入なんてたいしたことがない金額だから』と簡単に仕事を手放してしまいがち。でも、仮に現役時代に比べれば大きく年収が下がっていたとしても、定期的な収入があるのと、まったくないのとでは大違いです」
年収200万円の仕事を5年間確保できれば1000万円、10年間続けられれば2000万円もの老後資金の節約につながる。また、共働きも家計の安定度を高める。もともと共働きをしていた場合はもちろん、専業主婦だった妻が「働きに出たい」と言い出したら、もろ手を挙げて歓迎したい。
現在の仕事を辞めて、完全に引退せず、「次の仕事を探す」というケースではタイムラグが生じることも考えておいた方が良い。満足のいくような仕事が見つからず、時間ばかりが過ぎていくリスクは念頭に置く必要があるのだ。
「定年退職から数年以内だと、まだ退職金が残っているなどで気持ちも大きくなります。選り好みして、なかなか次の仕事が決まらないうちに、想像以上のスピードで貯蓄を取り崩してしまう可能性もあります」
仕事を辞めたくなる理由はさまざまだ。しかし「つまらない」「収入と仕事内容が見合わない」と決断を下す前に、余裕資金がいくらぐらいあるのか、試算が必須である。定年後は仕事を続けるのも辞めるのも、戦略が求められるのだ。
■島影真奈美(しまかげ・まなみ)氏