日本経済が正念場です。ここで賃金上昇が起きないと先進国からの脱落です。しかし、何故このような状況陥ってしまったのか検証することも重要です。ズバリ、日銀に権限を委ね過ぎた為でしょう。バブル崩壊当時、大蔵省の不動産融資総量規制なる悪法による瀕死の不動産業界に日銀のトンチンカンな金融政策が追い打ちをかけました。あるいは追い打ちをかけたのか逆かもしれません。いずれにしても、未曾有の大不況をもたらしたのです。その結果、大企業は自己保身に走り、日本企業の利益剰余金は何と400兆円を超えています。そして、知らないうちに日本人は生活レベルが急低下してしまったのです。今後、未曾有の不況が世界を襲えば、この利益余剰金が日本を救うかもしれませんが、大企業は利益余剰金を貯める為、賃金を抑え、結果日本をデフレに陥れ、日本人を痛めつけています。そして今度は大企業自身が業績悪化の憂き目に陥ろうとしているのです。現状維持で、無能な何もしない経営者は退場すべきでしょう。
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日本経済新聞2019年3月19日の「ニッポンの賃金(上)」によると、1997年を100とした場合、2017年の先進諸国の賃金は以下のようになっています。
アメリカ:176
イギリス:187
フランス:166
ドイツ :155
日本 :91
このように先進諸国は軒並み50%以上上昇しています。アメリカ、イギリスなどは倍近い金額になっています。その中で、日本だけが下がっているのです。しかも約1割も減っているのです。イギリスの187%と比較すれば、日本は半分しかないのです。つまりこの20年間で、日本人の生活のゆとりは、イギリス人の半分以下になったといえます。
この20年間、先進国の中で日本の企業だけ業績が悪かったわけではありません。むしろ、日本企業は他の先進国企業に比べて安定していました。企業利益は確実に上昇しており、利益準備金も実質的に世界一となっています。
なぜ日本の賃金だけが下がったのか、というといろいろ理由はありますが、最大の理由は「日本のサラリーマンは国や企業からなめられている」ということだと思われます。というのも、着目していただきたいのは、トヨタなど国際企業の賃金動向です。
トヨタは60年前から北米に進出し、現在は、約13万6,000人を雇用しています。このトヨタのアメリカ従業員たちは、日本のトヨタの従業員と同様に賃金が据え置かれたのかというと決してそうではありません。アメリカのトヨタの従業員たちは、他のアメリカ国内企業の従業員たちと同様かそれ以上に賃金は上昇しているのです。またトヨタはイギリスにも工場をつくっていますが、イギリスでも同様に従業員の賃金は上昇しているはずです。
欧米では政府の定めた最低賃金が年々、段階的に上昇しており、また他の大企業も賃金を上昇させているので、トヨタだけが賃金を上昇させないわけにはいかないのです。欧米の労働者は日本の労働者よりも20~30%賃金が高いですが、トヨタは欧米ではその高い賃金は支払っているのです。
もちろんトヨタだけではありません。欧米に工場やオフィスを構え、現地で従業員を雇っている日本の企業は、欧米の従業員に対しては、ちゃんと賃金を上昇させているのです。賃金が据え置かれ下げられてきたのは、日本のサラリーマンだけなのです。
バブル崩壊後の日本企業は、非常に極端な方向に傾いてきました。株主ばかりを極端に厚遇し、社員の給料はあげずリストラなどを敢行するなどしてきたのです。そして人件費を削って配当に回したり、内部留保を貯めるというような愚かな事を普通にやってきました。それが結局、日本の閉塞感を招いたのです。
デフレに関するニュース解説などでは、「デフレになると経済が収縮するので給料が下がる」というようなことをよく言われます。サラリーマンの給料が下がるのも、そのせいだと言われています。しかし、ちゃんとデータを見れば、それはまったく間違っていることがわかります。
サラリーマンの平均給料は平成9年をピークに下がりはじめています。しかし物価が下がり始めたのは平成10年です。これはちょっと調べれば誰でも確認できます。つまり給料の方が早く下がり始めたのです。これをみると、デフレになったから給料が下がったという解釈は、明らかに無理があります。現在の日本のデフレの最大の要因は、賃金の低下と捉えるのが自然でしょう。給料が下がったので消費が冷え、その結果物価がさがったというのが、ごく当然の解釈になるはずです。バブル崩壊以降、財界は「国際競争力のため」という御旗を掲げ、賃金の切り下げやリストラを続けてきました。また正規雇用を減らし、収入の不安定な非正規雇用を激増させました。その結果、消費の低下を招き、デフレを引き起こしたのです。「企業の業績がよくなれば、デフレが解消され、給料も上がる」。昨今の経済評論家や政治家はみなそういうことを言います。が、近年の経済データをそれは明白に誤りだったことがわかります。
今年1月、好景気の長さが戦後最長の74ヶ月になったと発表されました。また2002年2月から2008年2月までの73カ月間にも、史上最長の景気拡大期間(好景気)を記録しています。しかし、その結果、我々の暮らしはどうなったでしょうか?好景気であるのに、国民の生活はまったくよくならなかったのです。しかも、この好景気の間も、物価は下がり続けました。
これを見た時、「企業の業績が上がり好景気になればデフレは解消される」というのは、まったくの誤りだということがわかります。好景気になったところで国民の収入が上がらなければ、デフレは解消されないのです。我々は「好景気になれば給料が上がるから」と言われ、ひたすら賃金カットやリストラに耐えてきました。しかし、史上最長の好景気を迎えたにも関わらず、デフレは解消されずに、給料も下がりっぱなしだったのです。それは、単に企業が賃上げをしなかったことが、最大の要因なのです。
日本の大企業は近年、非常に儲かっていたにもかかわらず、利益を株主への配当か、内部留保に貯めこんだことはこのメルマガで何度もご紹介してきました。日本企業の利益剰余金(利益から税金を引いた残額)は、2002年には190兆円でしたが、現在は400兆円を超えています。しかもこの利益剰余金は、その多くが投資に回されずに、企業に現金・預金として貯め込まれているのです。企業は儲かったお金を取りこむばかりなので、当然のことながら、社会にお金が回りません。社会にお金が回らなければ、消費は冷え込みます。消費が冷え込めば、モノの値段は下がり、デフレになります。当たり前と言えば、当たり前の話です。つまり、どう考えてもデフレの要因は、「サラリーマンの賃金」だとしかいえないはずです。また企業が、社員の賃金を上げないという事は、自らの首を絞めていることでもあります。企業にとって社員というのは、顧客でもあるわけです。彼らの消費力が減れば、国全体で見れば企業は顧客を失っていくに等しいのです。財界は果実を取るだけ取って、種を植えたり、木に水を与えたりしていないということなのです。だから企業にとって、社員の賃下げというのは、遠回しに自分に打撃を与えているのです。デフレの要因が賃金であることのわかりやすい証拠をもう一つ挙げたいと思います。近年、先進国の中でデフレで苦しんでいるのは、日本だけなのです。そして先進国の中で、賃金が上がっていないのも主要先進国では日本だけなのです。これを見ても、日本のデフレの原因は、賃金であることは、明白であるはずです。
企業が人件費を切り詰めれば、一時的に収益が上がります。だから、それで経済成長したように見えます。
しかし、企業が人件費を切り詰めれば、国民の収入は下がり、購買力も低下します。国民の購買力が低下するということは、企業にとっては、「市場が小さくなる」ということです。市場が小さくなっていけば、企業は存続できなくなります。それは、当たり前といえば当たり前のことです。このまま賃金を抑制し続けたら、日本人の購買力がどんどん落ちるのは自明の理です。そして、日本全体がどんどん貧困化していく。そうなれば、現在、栄華を謳歌している大企業たちも危うくなるのです。そうなる前に、ため込んだ金を吐き出すべきだと思われます。経済界全体で申し合わせ、賃金を上げるべきでしょう。バブル崩壊後の名目GDPの上昇分くらいは、人件費を上げないと、日本経済が本当に復活することはないと言えます。消費税が増税されるとなると、なおさらのことです。賃金というのは、日本経済の活力源なのです。これを増やさなければ、日本経済はどんどん元気がなくなっていきます。