ウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは11日、ロシア軍が占拠しているウクライナ南部ザポリージャ原子力発電所で、唯一稼働していた原子炉の運転を停止したとSNSを通じて発表した。外部とつながる送電線の一部が復旧したことを受け、停止を決めたと説明しており、原子炉の冷却など原発の安定維持には、現時点では支障がないものとみられる。
11日未明に運転を停止したのは6号機で、ロシア通信によると、地元の親露派幹部も運転停止を認めた。
6基の原子炉を擁し欧州最大規模のザポリージャ原発は、元々4基の原発が停止していた。原発や周辺への相次ぐ砲撃で、今月3日に5号機が運転を停止してからは、6号機が原発全体の安全維持に必要な電力を供給してきた。原発と外部を結ぶ送電線が次々と損傷し、緊急時などに原子炉を冷却する外部電源の確保が困難になったためだ。
ただ、今後も砲撃が続き、外部電源を喪失すれば、非常用のディーゼル発電機で原子炉を冷却することになる。エネルゴアトムは11日の声明で、ディーゼル発電機用の燃料には限りがあると強調した。
国際原子力機関(IAEA)のラファエル・グロッシ事務局長は9日の声明で、「外部電源が失われている」との認識を示し、「原子力事故の危険性が増大している」と危機感を示していた。原発事故が起これば影響は計り知れず、停止はやむをえないでしょうが、国民生活は困窮するでしょう。
❷ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、同国軍が東部ハリコフ州の要衝イジュムを奪還したと宣言した。今月に入って猛烈な勢いで領土を奪還している同国にとって戦略上、大きな戦果となった。ロシア軍は統制が取れず敗走しているとみられる。侵攻から200日、プーチン大統領は厳しい状況に追い込まれた。
イジュムはロシア軍の補給路で、支配地域で「最重要」とされる。米シンクタンクの戦争研究所は10日、ロシア軍が統制の取れていない形で敗走していると分析。ウクライナ軍が南北から補給路を断った場合、周辺のロシア軍が崩壊する可能性があると指摘した。