厚生年金で受け取れる金額は、現役世代で受け取っていた給与や賞与などの報酬によって変わります。なぜ、給与や賞与などによって受け取れる年金額が変わるかというと、毎年一定額を納める国民年金と違って、厚生年金は受け取っている報酬によって納める保険料が変わるからです。
例えば、先述の日本年金機構が公開している標準的な厚生年金の受給額は、「平均標準報酬(賞与含む月額換算43万9000円)で40年間就業した場合」が前提となっており、2人分の老齢基礎年金の満額分を含んでいます。厚生年金の受給額と保険料は現役時代の報酬に比例するので、平均標準報酬が月額換算で43万9000円より低かったり、就業期間が40年未満だったりした場合は月額21万9593円ももらえません。
つまり、厚生年金の受給額は人それぞれ異なります。総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)2021年(令和3年)家計の概要」によると、「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)」の1ヶ月の消費支出は22万4436円となっています。つまり、標準的な厚生年金受給額の世帯では、毎月4843円(22万4436円-21万9593円)の赤字です。
厚生労働省の「令和3年簡易生命表の概況」によると、平均寿命は男性81.47歳、女性87.57歳なので、仮に老後の20年間にわたって毎月4843円の赤字が続くと仮定すると、およそ116万円(4843円×12ヶ月×20年)足りないことがわかります。
ただし、ここで注意しなくてはいけないのは、家計調査年報の消費支出に記載されている内訳です。
内訳を見てみると、住居費の平均がおよそ1万7000円(7.4%)となっており、持ち家で住宅ローンを返し終わった人が平均値を押し下げていることが推測されます。そのため、賃貸住宅に住んでいたり、住宅ローンがまだ残っていたりする人は、毎月の赤字額がその分だけ増えるので老後資金をもっとたくさん貯めておく必要があると言えるでしょう。いずれにしても令和4年度の標準的な厚生年金の受給額(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は月額21万9593円で、年収にするとおよそ260万円になります。