ロシアとウクライナ戦争における西側諸国のウクライナ支援は単に戦車や武器等の提供にとどまらない。筆者はかつて個人や法人の金融制裁の実態を「ロシア連邦のウクライナ軍事進攻にかかる各国の制裁の内容、国際機関やEU機関の取組等から見た有効性を検証する!」ブログ(その1 、その2、その3完 )で論じた。
今回は、さらに金融面の厳しい制裁特に暗号資産交換所やダークネット・マーケットを巡るマネーローンダリング、違法性の高い取引実態にもとづく違法な犯罪者に対するEUROPOL、米国、ドイツの詳しい法執行を内容の解析を試みる。
Ⅰ.2023.1.28 ユーロポール(EUROPOL)等の暗号資産プラットフォームBitzlatoの閉鎖
EUROPOLのリリース「ビッツラート(以下、Bitzlatoという)上級管理職が逮捕された」が手元に届いた。以下でその要旨を仮訳する。
フランスでは犯罪資産の資金洗浄容疑で暗号資産プラットフォーム・インフラが閉鎖され、キプロス、スペイン、ポルトガル、米国で6人が標的になった。
フランスと米国の当局が主導し、EUROPOLが強力に支援している作戦は、暗号交換プラットフォームBitzlatoを標的にしている。この世界的に運営されている香港で登録された暗号通貨取引所は、大量の犯罪収益の洗浄を促進し、それらをルーブルに変換した疑いがある。法執行当局は、フランスに拠点を置くサービスのデジタル・インフラストラクチャを停止し、プラットフォームの管理者の主要メンバーを尋問した。この作戦には、ベルギー、キプロス、ポルトガル、スペイン、オランダの法執行機関と司法当局も関与した。
共同作戦機関のサイト
(1)犯罪活動に関連するすべてのビッツラート取引のほぼ半分にあたる
暗号交換などの重要な犯罪ファシリテーターを標的にすることは、サイバー犯罪との戦いにおける重要な優先事項になりつつある。Bitzlatoは、ビットコイン、イーサリアム、ライトコイン(Litecoin)、ビットコインキャッシュ(bitcoin cash)、ダッシュ(dash)、ドージコイン(dogecoin)、Tether (USDT) などのさまざまな暗号資産をロシア・ルーブルに迅速に変換することを可能にした。暗号交換プラットフォームは、合計2億ユーロ(BTC(ビットコイン) 119000)相当の資産を受け取ったと推定されている。
暗号資産の法定通貨への変換は違法ではないが、サイバー犯罪者のオペレーターの調査では、大量の犯罪資産がプラットフォームを通過していることが示された。分析によると、Bitzlatoを通じて交換された資産の約46%(約1億ユーロ(約140億円)相当)が犯罪活動に関連していることが明らかとなった。
暗号解読により、疑わしい取引の大部分は米国連邦財務省・外国資産管理局(OFAC)によって認可された事業体にリンクされており、他の事業体はサイバー詐欺、マネーローンダリング、ランサムウェア、児童虐待資料に関連していることが明らかになった。たとえば、調査によると、2022年4月に閉鎖削除されたBitzlatoユーザーとHydramarketの間で2022万件のBTCトランザクションが直接行われた。
ロシア語と英語の両方で利用可能なこの暗号資産交換プラットフォームは、フランスのホスティング会社から専用サーバーをレンタルしていた。さまざまな関係国の司法当局と法執行当局の調整された行動は、プラットフォームの削除、現在の金融資産の差し押さえ、およびさらなるテクニカル分析につながった。
(2)法執行の全体的な結果
①これまでに5人が逮捕された(キプロスで1人、スペインで3人、米国で1人)。
②ポルトガルで1人が尋問された。
③主な管理者は米国で逮捕された。
④CEO、財務ディレクター、マーケティングディレクターがスペインで逮捕された。
⑤8件の家宅捜査(スペインで4件、キプロスで1件、ポルトガルで2件、米国で1件)。
⑥サービスのデジタルインフラストラクチャを削除し、さらなる分析と調査を可能にした。
⑦押収物には、執筆時点で約1800万ユーロ(約11億2000万円)相当の暗号通貨、車両、電子機器が含まれる。
⑧他の暗号資産交換にかかる100以上のアカウントが凍結され、合計5000万ユーロがそれに関与した。
(3)犯罪行為とのリンクを明らかにするための暗号分析と国際協力
調査活動の最初の段階では、EUROPOLは情報交換を促進し、利用可能なデータをEU内外のさまざまな刑事事件にリンクする分析サポートを提供し、数百万の暗号通貨取引の分析を通じて調査をサポートした。
作戦行動当日、EUROPOLはその場で13人の専門家(フランスから10人、キプロスから1人、スペインから1人、ポルトガルかに1人)を派遣し、作戦活動に参加する他の国での国家調査官の配備を支援した。EUROPOLは、暗号通貨分析に関連する調整、EUROPOLのデータベースに対する運用情報のクロスチェック、および運用分析に関与する法執行当局を支援した。現時点では、すでに3,500を超えるビットコイン・アドレスと1 ,000を超えるBitzlatoユーザーの詳細が、Europolのシステムで報告されたさまざまな刑事事件とのリンクを示している。このデータやその他の関連事例の分析は、さらなる調査活動のきっかけとなることが期待される。
(4) 関係する法執行機関のリスト
・キプロス:キプロス警察(ΑστυνομίαΚύπρου)
・ベルギー:連邦警察( Belgium: Federal Police (Federale Politie/Police Fédérale)
・フランス:国家憲兵隊( France: National Gendarmerie (Gendarmerie Nationale)
・米国:連邦捜査局(United States: Federal Bureau of Investigation)
・スペイン:市民警備隊(グアルディア市民)( Spain: Civil Guard (Guardia Civil)
・オランダ:国家警察( Netherlands: National Police (Politie) と財政情報調査局 (The Fiscal Information and Investigation Service FIOD)
・ポルトガル:司法警察 ( Portugal: Judicial Police (Policia Judiciaria)
(5) 関係する司法当局
ベルギー:連邦検察庁(Parquet fédéral)(Belgium: Federal prosecutor office (Parquet fédéral)
フランス:パリ検事局( France: Paris Prosecutor / JUNALCO (Parquet de Paris / JUNALCO)
米国: 米国司法省 (US DOJ)( United States: United States Department of Justice (US DOJ)
*オランダのハーグに本部を置くEUROPOLは、テロ、サイバー犯罪、その他の深刻で組織的な犯罪形態との戦いにおいて、27のEU加盟国を支援している。まら またEUROPOLは、多くの非EUパートナー国や国際機関と協力しており、さまざまな脅威評価から情報収集および運用活動まで、EUROPOLはヨーロッパをより安全にするために必要なツールとリソースを有している。
Ⅱ. 米国の連邦司法省やFinCENの法執行行動
1.2023.1.18 FinCENリリース「FinCENは、仮想通貨取引所のBitzlatoをロシアの違法金融に関連する「主要なマネーロ-ンダリングの懸念」対象として特定した」
FINCenのリリース文を仮訳する。
1月18日、米国財務省の金融犯罪執行ネットワーク(FinCEN)は、暗号資産取引所のBitzlato Limited(Bitzlato)(注1)をロシアの違法金融に関連する「主要なマネーロンダリングの懸念」として特定する命令を発布した。
これは、改正されたロシア等のマネーロンダリング対策強化法(H.R.6343 - Illicit Finance Improvements Act)のセクション9714(a)に従って発行された最初の命令であり、ロシアの違法な金融を促進および支援する事業運営が米国の国家安全保障と米国の金融セクターの完全性にもたらす深刻な脅威を強調している。この命令は、対象となる金融機関によるBitzlatoを含む資金の特定の送金を禁止するものである。
命令の中で、FinCEN は、Bitzlato が米国外で活動している金融機関であり、ロシアの違法な金融に関連して主要なマネーロ-ンダリングの懸念があると判断した。 Bitzlato は、ロシア政府とつながりを持つサービスとしてのランサムウェア グループである Conti(注2) を含む、ロシアで活動するランサムウェア アクターの違法取引を促進することにより、Convertible Virtual Currency (CVC) のロ-ンダリングにおいて重要な役割を果たしている。
FinCENのヒママウリ・ダス(Himamauli Das)部長代理は「Bitzlatoは、ロシアのサイバー犯罪者やランサムウェアアクターが盗難の収益を洗浄できるようにすることで、世界的な脅威をもたらす。犯罪者や犯罪支援者が進化するにつれて、これらのネットワークを混乱させる能力も進化する。我々は引き続き、これらの機関が米国の金融システムにアクセスし、ロシアの違法な資金を支援するためにそれを使用することを禁止するために、当局の全範囲を活用していく」と述べている。
命令文に記載されているように、Bitzlatoは交換とピア・ツー・ピア(P2P)サービスを提供する仮想通貨取引所である。Bitzlatoは、ロシア関連のランサムウェアグループまたは関連会社による預金および資金移動の促進、およびロシアに接続されたダークネット市場との取引を通じて、ロシアおよびロシアの違法金融に関連する重要な事業を維持している。FinCENの調査によると、これらの接続には、Contiとロシアの接続されたダークネット市場Hydraが関与する預金、資金移動、および取引の促進が含まれるが、これらに限定されない。後記Ⅲ.で述べるとおり、2022年4月にHydraが閉鎖された後も、BitzlatoはBlackSprut、OMG!OMG!、そしてMega を含むダークネット市場を支援する取引を行っている。
捜査の過程で、FinCENは、Bitzlatoがサービスの違法な使用と乱用を特定して混乱させるための意味のある措置を講じていないことを発見した。Bitzlatoは、マネーロンダリングや違法な金融と戦うために設計されたポリシー約款と手順を効果的に実装しておらず、そのようなポリシー約款、手順、または内部統制の欠如を堂々と宣伝している。その結果、Bitzlatoは、他の仮想通貨取引所と比較して、ロシアの違法金融に関連するマネーロンダリング活動の割合を大幅に拡大しています。Bitzlatoが、ダークネット市場を標的とした公的措置の後でも、ロシアに接続されたダークネット市場を継続的に促進していることは、違法行為者との継続的な関与と適切な管理の欠如をさらに示している。本命令に記載されているように、2023年2月1日施行より、対象となる金融機関は、Bitzlatoとの間で、またはBitzlatoによって、またはBitzlatoに代わって管理される口座またはCVC(Convertible Virtual Currency)アドレスとの間で資金の送金を行うことを禁じられる。
本日の法執行行動は、透明性の向上を通じて米国の国家安全保障と米国の金融システムの完全性を強化し、CVCを含むデジタル資産を含む違法な金融活動の検出を促進することを目的としている。この行動は、財務省が利用可能なツールを使用してロシアの違法な金融活動を標的にし、ランサムウェアの脅威に対抗する例である。
ロシアはサイバー犯罪者の天国であり、政府は独自の悪意のある目的でサイバー犯罪者を参加させることがよくある。2021年後半にFinCENに報告されたランサムウェア・インシデントの大部分は、ロシア関連のランサムウェアの亜種によって実施されており、Bitzlatoがロシアで免責されて活動することが許可されているロシアのサイバー犯罪者のより大きなエコシステムの一部であることを示している。
さらに今回の行動は、違法行為を促進する責任を負う関係者に責任を負わせ、デジタル資産の乱用と戦うための財務省の世界的なリーダーシップを再確認するものである。「2022年から2026年度の財務省戦略計画(President’s Fiscal Year 2023 Budget and Treasury Strategic Plan for Fiscal Years 2022-2026)」(注3)に示されているように、財務省は国内および国際的な金融システムの透明性の向上に取り組んでいる。これには、デジタル資産の違法資金調達リスクに対処するための行動計画で特定されているように、財務省のツールを使用して、違法行為に関与したり促進したりするエコシステム内の説明責任のある関係者を拘束し、国際金融システムから切り離すことが含まれる。
このFinCENの行動に関するよくある質問(FAQs Bitzlato)は、こちらにある。
2.2023.1.18 連邦司法省リリース「7億ドル以上の違法資金の処理で起訴されたCryptocurrency ExchangeたるBitzlatoの創設者および過半数所有者たるロシア国民のアナトリー・レグコディモフ(Anatoly Legkodymov)をマイアミで逮捕」
連邦司法省のリリース文を仮訳する。
暗号通貨取引所のBitzlato Ltd. (以下、Bitzlato)の創設者であり過半数の所有者である中華人民共和国の深圳に住むロシア国籍のアナトリー・レグコディモフ(Anatoly Legkodymov(以下、Legkodymov という(40歳)を1月17日夜マイアミで逮捕した。容疑者は違法な資金を輸送および送金する送金ビジネスを運営していた疑いがあり、アンチ・マネーローンダリングの要件を充足せずに米国の規制上の保護措置を満たしていなかった。
中華人民共和国の深圳に住むロシア国籍のアナトリー・レグコディモフ( Anatoly Legkodymov :40 歳) は、1月18日の午後、フロリダ州南部地区連邦地方裁判所で罪状認否を受ける予定である。フランス当局と米国財務省の金融犯罪取締ネットワーク (FinCEN) は、同時に取り締まりを行っている。
Anatoly Legkodymov被告
DOJ司法次官補長リサ・O・モナコ(Deputy Attorney General Lisa O. Monaco.)は「1月18日、連邦司法省は暗号資産犯罪のエコシステムに重大な打撃を与えた。DOJは一夜にして、国内外の主要パートナーと協力して、暗号通貨等犯罪のハイテク軸を助長した中国を拠点とするマネーローンダリング推進役であるBitzlatoを妨害するとともに、その創設者であるロシア国民のAnatoly Legkodymovを逮捕した」と述べた。
今日の行動は、明確なメッセージを送っている。すなわち、中国やヨーロッパから私たちの法律を破るか、熱帯の島から私たちの金融システムを悪用するかどうかにかかわらず、米国の法廷内で犯罪に応えることが期待できる。
Deputy Attorney General Lisa O. Monaco
司法省司法次官補ケネス A. ポライト(Assistant Attorney General Kenneth A. Polite, Jr.)は「主張されているように、被告は、必要なアンチ・マネーロンダリング保護策を実装せず、犯罪者がランサムウェアや麻薬密売などの不正行為から利益を得ることを可能にした暗号資産取引所の運営を支援した。Bitzlatoの違法業務を妨害し、被告を逮捕するための National Cryptocurrency Enforcement Teamの途方もない努力は、たとえ国境を越えたとしても、暗号資産を利用した犯罪と戦うために、国内外のパートナーと協力し続けることを示している」と述べた。
Kenneth A. Polite, Jr.
裁判所の文書によると、Legkodymovは香港で登録され、グローバルに運営されている暗号資産取引所であるBitzlatoの上級管理職であり、また過半数を有する株主である。Bitzlato は、「自撮り写真もパスポートも必要ない」と明記して、マネーローンダリングにかかるユーザーに最小限の身元確認を要求するものとして自社を売り込んできた。Bitzlato がユーザーに身元を特定する情報を提出するように指示した場合でも、ユーザーが「架空名義(straw man)」の登録者に属する情報を提供することを繰り返し許可してきた。
ニューヨーク東部地区担当のブレオン・ピース(Breon Peace)連邦検事は「暗号資産を取引する機関は法を超越しているわけではなく、その所有者は私たちの手の届かないところにない。主張されているように、Bitzlato は質問を受けない仮想資産取引所として自らを犯罪者に売り込み、結果として数億ドル相当の預金を獲得した。被告は現在、彼の会社が暗号通貨のエコシステム(注4)(注5)で果たした悪意のある役割の代償を払っている」と述べた。
これらの不十分な顧客確認 (know-your-customer (KYC)) 手順の結果として、Bitzlato は、犯罪行為に使用することを目的とした犯罪収益と資金の避難所になったと言われている。暗号資産取引における Bitzlato の最大の取引相手は Hydra Market (以下、Hydraという) であった。これは、麻薬、盗まれた財務情報、不正な身分証明書、マネーローンダリング サービスのための匿名の違法なオンライン市場であり、世界で最大かつ最長のダークネット市場である。Hydra のユーザーは、2022 年 4 月に米国とドイツの法執行機関によって Hydra が閉鎖されるまで、7 億ドル(約910億円)以上の暗号通貨を Bitzlato と直接または仲介者を介して交換した。
FBIのブライアン・ターナー副局長(Associate Deputy Director Brian Turner)は、「FBIは、犯罪行為をキーボードで隠蔽し、暗号資産などの手段を使用して法執行機関から逃れようとする攻撃者を追跡し続ける。FBIは、連邦機関および国際的なパートナーとともに、この種の犯罪組織を混乱させ、解体するために絶え間なく働く。本日の被告の逮捕は、FBIがこれらの活動に従事する人々にリスクと結果を課すことを思い出させるものとなるはずである」と述べた。
Associate Deputy Director Brian Turner
FBIニューヨーク現地事務所のマイケルJ.ドリスコル(Charge Michael J. Driscoll)担当副局長は「本日主張されているように、Legkodymovは、Bitzlatoがさまざまな犯罪活動に使用され、その結果として生じる資金の安全な避難所と見なされることを故意に許可した。FBIと私たちのパートナーは、あらゆる金融市場と同様に、暗号通貨市場を違法行為から守るという確固たるコミットメントを維持している。本日の FBI等の行動は、Legkodymovが我々の刑事司法制度で彼の行動の結果に直面することになるため、このコミットメントの例として役立つはずである」と語った。
訴状で主張されているように、Bitzlato の顧客は、同社の顧客サービス ポータルを日常的に使用して、Hydra との取引のサポートを要求し、Bitzlato の担当者とのチャットで想定された身元で取引していることを認めた。
さらに、Legkodymov と Bitzlato の他の管理者は、Bitzlato のアカウントが違法行為に満ちており、そのユーザーの多くが他人の ID で登録されていることを認識していた。たとえば、2019 年 5 月 29 日、Legkodymov は Bitzlato の内部チャット システムを使用して同僚に、Bitzlato のユーザーは「詐欺師であることが知られている」と書き、他人の ID 文書を使用してアカウントを登録した。Legkodymovは同僚から、Bitzlatoの顧客ベースは「Hydraでドラッグを購入する常習者」と「麻薬密売人」で構成されていると繰り返し警告された。ある上級幹部は、Bitzlato は、会社の利益を損なうことを避けるために、「名目上」のみに麻薬の売人と戦うべきだとさえ強調した。Bitzlato の共有管理フォルダに保存された内部スプレッドシートには、「積極的にKYCを回避し(Positives: No KYC(No Know Your Customer(顧客の本人確認を行わない))・
・・「消極的に汚れたお金(Negatives: Dirty money)」等同社の独自の見解が要約されていた。
訴状で主張されているように、Bitzlato は米国からのユーザーを受け入れないと主張していたが、実際は米国を拠点とする顧客と実質的な取引を行っており、その顧客サービス担当者は、米国の金融機関から資金を送金できることをユーザーに繰り返しアドバイスしていた。さらに、2022 年と 2023 年にマイアミから Bitzlato を管理していた Legkodymov は、2022 年 7 月に 2 億 5000 万ドル(約325億円)を超える訪問を含む、米国ベースのインターネット プロトコル アドレスから Bitzlato の Web サイトへのかなりのトラフィックを反映するレポートを受け取った。
Legkodymov は、無認可の送金事業を行った罪で起訴されており、有罪判決を受けた場合、彼は最高で 5 年の拘禁刑に処せられる。
本ブログの第Ⅰ項で紹介したとおり、18日発表された逮捕と同時に、フランス当局は、EUROPOLおよびスペイン、ポルトガル、キプロス等のパートナーと協力して、Bitzlatoのデジタル インフラストラクチャを解体・閉鎖し、ビツラートの暗号通貨を押収し、その他の法執行措置を講じた。
Ⅲ.2022.4.5ドイツ連邦刑事庁(BKA)リリース「違法なダークネットマーケット:であるハイドラマーケット(Hydra Market)を閉鎖させた」
BKAのリリース文を仮訳する。
世界最大のダークネット・ マーケットプレイスのサーバーが押収され、総額約 2,300 万ユーロ(約9億2000万円)の 543 ビットコインが押収された。
2022年4月5日、フランクフルト中央検察庁(サイバー犯罪対策中央局(ZIT)) (注6)と連邦刑事警察局(BKA)は、ドイツにある世界最大の違法ダーク34ネットマーケットプレイス「ハイドラ・マーケット(Hydra Market)」のサーバー・インフラストラクチャを押収し、閉鎖した。現在約23万ユーロに相当するビットコインが確保されており、これはHydra市場に起因している。
この点に関してZITで継続中の調査は、前述のHydraプラットフォームのこれまで知られていなかったオペレーターと管理者に向けられている。とりわけ、インターネット上の犯罪取引プラットフォームの商業的運用、商業的調達、または麻薬の不正な取得または供給の機会の付与、および商業マネーローンダリングの疑いがある。
本日実施された押収に先立って、2021年8月からBKAとZITによって実施され、いくつかの米国当局が関与した広範な捜査が行われた。
違法なダーク市場は、少なくとも2015年以降、匿名通信であるTor(トーア)(注7)ネットワークを介してアクセス可能なロシア語のダークネット・プラットフォームであった。その焦点は違法麻薬の取引にあり、Hydraプラットフォームは世界的にスパイされたデータ、偽造文書、デジタルサービスも提供していた。
約 1,700 万人の顧客と 19,000 を超える販売アカウントが同マーケットプレイスに登録されていた。
ZITとBKAによると、「Hydra Market」は世界で最も売上高の高い違法市場であった可能性がある。その売上高は、2020年だけで少なくとも12億3000万ユーロ(約172億2000万円)に達した。特に、デジタル取引を難読化するサービスであるプラットフォームが提供する「ビットコイン・バンク・ミキサー(Bitcoin Bank Mixer)」(注8)は、法執行機関にとって暗号調査を非常に困難にする。
ドイツでは次のセキュリティ(市場閉鎖)・バナー解説が18日、ZIT, BKAのWebサイトで公開された。
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(注1) 米国の複数当局は1月18日、香港で登録した暗号資産(仮想通貨)取引所Bitzlatoの創業者でロシア国籍のAnatoly Legkodymovを起訴した。不正資金の移動事業を行い、マネーロンダリング防止要件に準拠していなかった疑いがある。
Legkodymov容疑者は17日にフロリダ州マイアミで逮捕されており、まもなく連邦地裁で罪状認否が行われる予定だ。
捜査には米司法省、ニューヨーク州東部地区連邦検事局、連邦捜査局(FBI)など様々な機関が参加している。また、司法省は、フランスの法執行当局や米財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)とも連携しているところだ。
フランス当局は、欧州警察およびスペイン、ポルトガル、キプロスの当局とも協力して、Bitzlatoのデジタルインフラを解体し、強制措置を講じたとされる。
訴状の内容
訴状によると、Legkodymov容疑者は、香港で登録された国際的な仮想通貨取引所「Bitzlato」の幹部で大株主である。Bitzlatoは、「自撮りもパスポートも必要ない」として、身分証明書をユーザーにほとんど要求しないことを宣伝していた。
このように、顧客身元確認(KYC)の不備のため、Bitzlatoは犯罪資金の温床になっていた。Bitzlatoの最大の取引相手は、大規模ダークネット市場Hydraだった。Hydraは、麻薬、盗難された個人データ、マネーロンダリングサービスなどを扱う、不正なオンライン市場である。
Hydraは2022年4月に米国とドイツの法執行機関によって閉鎖されたが、それまでにBitzlatoを通じて約900億円(7億ドル)以上の仮想通貨を取引していた。
訴状は、同取引所がランサムウェア収益約19億円(1,500万ドル)以上を取り扱っていたとも指摘している。(CoinPost記事「米当局、国際協力で仮想通貨取引所を取り締まり」から抜粋)
(注2) Contiは、2020年5月に初めて確認されたランサムウェアの一種。 ダークサイドなどこれまでのランサムウェアグループは医療機関などは標的にしない事を明言しているグループが多かったが、Contiは多数の医療機関を問答無用で標的にするなどその凶悪さが注目を集めている。Contiを開発しているのは、ロシアのサンクトペテルブルクとウクライナを拠点にしていると推測されるハッカーグループのウィザード・スパイダーで、同グループはランサムウェアRyuk(英語版)も運用している。(Wikipediaから抜粋、引用 )
(注3)2022年3月28日 、 バイデン・ハリス政権は2023 年度の大統領予算を連邦議会に提出し、財務省は 2022 年度~ 2026 年度の戦略計画を発表した。大統領予算は、現在が昨年達成した歴史的な進歩を拡大し、大統領が一般教書演説で示した議題を実現するという大統領のビジョンを素直に反映している。予算は、今後の世代のために成長と成長を共有するためのより強力な基盤を認識するのに役立つ重要な投資をアメリカ人が行い、財務省戦略計画の目標を実施するためのリソースを調整したもので財務省の連邦予算項目は次のようになる。
①納税者の経験を改善し、公正な税制をサポートする。
②大統領の歴史的な気候変動資金に関する誓約を前進させる。
③ 国際開発における米国のリーダーシップを回復する。
④有利でないコミュニティへの融資を拡大し、手頃な価格の住宅供給を増やす。
⑤企業の透明性を高め、金融システムを保護する.財務省は、汚職、マネーローンダリング、テロリストの資金調達、および国内の悪意のあるアクターによる金融システムの使用を監視し、妨害する上で主導的な役割を果たしている。これら技術的能力への投資は、不正なアクターが精査を企業回避し、取引を阻止し、説明の責任を解明することを可能にする財務報告の抜け穴を埋めることを含め、これらの取り組みにとって重要である。
⑥予算は、高価値資産として指定されたものを含み、財務省の機密システムと情報を保護および防御するために2億1,500万ドルを提供する。
⑦重要機関の能力を回復する。
(2022.3.28米国連邦財務省Janet L. Yellen長官の声明から抜粋、仮訳)
(注4) 新しい暗号エコシステムはどのように機能しますか?
暗号エコシステム(cryptocurrency ecosystem)は、参加者のネットワークが目的を達成し、シームレスな運用を確保するための特定のニーズを満たす、十分に油を注がれたシステムである。暗号エコシステムのコア機能は、ブロックチェーン開発者がブロックチェーン技術を使用する暗号通貨を構築するブロックチェーン・ プロトコルから始まる。このレベルでは、開発者は機能を作成し、役割を設計し、暗号通貨が動作するパラメーターを設定する。特定の暗号の開発者は通常、社内にいるが、複数の開発者が協力してサービスを提供したり、ボランティアをしたりすることもある。
暗号通貨が立ち上がると、マイナー(miners:ビットコインの取引が正常に行われたことを承認する作業(マイニング)を行う人)またはステーカー(stakers:仮想通貨を保有して報酬を得る仕組みつくり人)は、ブロックチェーンへのトランザクションを更新および検証するという重要な役割を果たす。設計された合意メカニズム (プルーフ オブ ワークまたはプルーフ オブ ステーク)(注11) に応じて、マイナーまたはステーカーはトランザクションを迅速かつ安価に処理できるようにする。
暗号エコシステムのもう 1 つの重要な側面は、投資家が暗号交換を使用してコインを購入、販売、または交換することである。すべての参加者に情報プラットフォームを提供する暗号メディアにより、エコシステムはすべての利害関係者に利益をもたらすように機能する。
(注5) 合意メカニズムという用語は、ノードのネットワークがブロックチェーンの状態に合意することを可能にするプロトコル、インセンティブ、考え方のすべてを指す。
「プループオブワーク」と「プルーフオブステーク」は、二大合意形成メカニズムです。暗号資産はこれらのメカニズムを使って、新たなトランザクションを認証し、それらのトランザクションをブロックチェーンに追加し、トークンを作ります。ビットコイン(Bitcoin)が最初に開発をしたプルーフオブワークは、マイニングを使ってこれらの目標を達成します。カルダノ(Cardano)やETH2ブロックチェーンなどが採用しているプルーフオブステークは、ステーキングを使って同じことを実現します。(coinbaseの用語解説から抜粋,引用)
(注6) サイバー犯罪対策中央局(ZIT)は、ギーセンに拠点を置くフランクフルト・マイン.検事総長事務局の支部として、2010年1月1日に設立された。2019年11月以降、セントラルオフィスはフランクフルト・マインに拠点を置いている。現在、長としての上級検察官、上級検察官、および11人の検察官から構成されている。
ZITは、ドイツの領土管轄権がまだ不明確な場合、または全国の多数の容疑者に対する大量訴訟におけるインターネット犯罪に関する連邦刑事庁の最初の連絡先である。ZITは、運用中央オフィスとして、以下のような犯罪の分野で特に複雑で広範な調査を処理する。
①インターネットに関連する児童ポルノおよび児童の性的虐待
②ダー.ネット犯罪(犯罪ダークネットプラットフォームとの戦い、ダークネット上の武器、麻薬、偽造品の密売)
③狭義のサイバー犯罪(ハッカー攻撃、データ盗難、コンピューター詐欺)
④インターネット上のヘイトスピーチ
また、裁判官、検察官、警察官の訓練も担当している。なお、ZITは、サイバー犯罪と戦うための司法当局のヨーロッパのネットワークである欧州司法サイバー犯罪ネットワーク(European Judicial Cybercrime Network (EJCN)の創設メンバーでもある。(ZITサイトから抜粋、仮訳)
(注7) 通常、ウェブサイトにアクセスしたりメールを送信したりするとサーバーにアクセス元のIPアドレスが残ります。これを元に「誰がウェブサイトにアクセスしたのか?」や「誰がメールを送信したのか?」を特定することが可能なわけですが、そういった情報を一切残さずに完全に匿名で通信を行えるというシステムが「Tor(トーア)」。Torの仕組みは、コンピューターから目的地(例えばgoogle.comなどのウェブページ)までの通信経路に、他のコンピューターなどの中継地点(リレーエージェント)を追加するというもの。通信時に多くのリレーを経由させ、リレーにはログを残さず、さらにはアクセス経路の出口以外は全て暗号化されているため、発信源が不明になり匿名性が保たれるというものである。(GIGAZINEの解説から抜粋)
(注8) ビットコイン のブロックチェーンは完全に公開されている。ブロックチェーン エクスプローラーにアクセスすると、2009 年初頭の仮想通貨のローンチ以降に処理されたすべてのビットコイン トランザクションの完全な記録を見つけることができる。
一部の人にとっては、これはコア機能であり、問題ではない。 しかし、もう少し匿名性が必要な人にとっては、Bitcoin ブロックチェーンの公開性はプライバシー上の重大な欠陥である。
ビットコイン取引を完全に非公開にする方法がある。 誰が誰に何を送ったかを曖昧にする. 最も一般的な方法の 1 つは、タンブラーとも呼ばれるビットコイン ミキサーを使用することである。これらは、意図した受信者にビットコインを吐き出す前に、プライベート プールで大量のビットコインをごちゃまぜにするツールである。
ブラックボックスを介してビットコインをシャッフルすることによって、A が 10 ビットコインを B に送信したことを突き止めることは困難であるという考えである。一般の探検家が示すのは、A がビットコインをミキサーに送信したことだけである。その人物 B はミキサーからビットコインを受け取り、他の十数人も同様であった。(CoinDesk解説を抜粋、仮訳)
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