湊かなえの短編集『望郷』より『夢の国』『光の航路』の2編を組み合わせて映画化したもの。
湊かなえと言えば、人間のいや〜〜〜〜なところをほじくり倒すミステリーが得意な人。
読んでて「うわぁ嫌だな〜」と思うのに読みたいし最後まで読めば感動が味わえるってことは、やはり人間をウソなく正直に描いているからでしょう。
今作の『夢の国』は特に湊かなえ節が炸裂している快作。
義母による恐怖政治に怯えながら生きてる嫁(木村多江様)とその娘(貫地谷しほり)。
義母によって苦しめられ閉じ込められてきたはずの木村多江様なのに、義母の死後、貫地谷に義母と全く同じことをしてしまう。。
「お母さんは私が少しでも楽しそうにしてるのが気に入らないだけなんでしょ」by貫地谷
こう言われた多江様は貫地谷をビンタ。
娘を束縛するような親になりたくないと思っていたのに、自由にのびのびしている姿を微笑んで見られる親になりたかったのに、どうしても「私はあんなに苦しんできたのになんであの娘だけ…」と思ってしまう自分に苦しんでいる。
このあたりは木村多江様にやらせたら世界一ですよね。
ボール一杯のモヤシのヒゲを取る多江様のシーンが素晴らしい。このシーンだけでいろんな情報が伝えられる。
これって原作にあったっけと思い、読み返してみるとない。映画独自のシーン、素晴らしい。
読み返してビックリ。ラストが違う!
原作では貫地谷のある行為(行動ではなく行為)がミステリーポイントなんだけど、映画ではさらにもう一つの〝告白〟が用意されていた。
それによってこの母娘の関係が、原作よりも一歩先に進ませることができた。
この湊かなえの『望郷』は他のに比べると大仕掛けのミステリーでもないし、ぐっちょんぐっちょんの愛憎劇って感じでもないとても繊細な人間ドラマなので、これを映画でやるって難しいだろうなと思っていましたが、
さすが、そこは『ハローグッバイ』(僕の2017年邦画暫定1位)で繊細で壊れやすい心情を丁寧に描いた菊地健雄監督。
これ見よがしに瀬戸内の美しさを撮らないのも良かったです。
島を息苦しい場所としてずっと我慢して我慢して撮って、そして最後に主人公たちの心情とともに…。
おっと、劇場でどうぞ。
四コマ(じゃないけど…)映画→http://4koma-eiga.jp/fourcell2/entry_detail.htm?id=1835
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